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中国人はなぜお金持ちになったのか…都市部世帯の持ち家は平均1.5軒

中島恵

2021年01月18日 公開 2022年10月24日 更新

住宅は「単位」から払い下げられた

そもそも「一つ目の不動産」はどのようにして手に入れたのだろうか。

中国の不動産市場の歴史は浅い。

1978年の改革開放より以前、住宅を建設、または管轄していたのは地方政府や国有企業などで、不動産は民間に開放されていなかった。

中国では住宅分配制度が施行されており、都市部に住む中国人のほとんどは「単位(ダンウェイ)」(当時の国営企業や工場、学校、団体などの組織)に所属していたが、住宅はその「単位」から非常に低い家賃で支給されるというものだった。

1960年代の文献を読むと、家計に占める家賃の割合は2%程度しかなく、住宅は「社宅」と言い換えてもいいものだった。

住宅は職場の敷地内や近隣に位置しており、1人当たり約3平方メートルの居住面積しかなく、トイレや台所などは、他の居住者と共用であることがほとんどだった、と書かれている。

1980年代に入り、住宅制度改革が始まると、徐々に分譲住宅の販売が解禁されるようになった。

中国では、土地は国家のものであり、企業や個人が土地を売買することは禁止されているが、土地の使用権は、地方政府(または国家)の許可を得れば取得することができる。住宅の場合、その使用権は最長で70年までとなっている。

1990年代後半になってようやく分譲住宅の開発や販売が進むとともに、それまで「単位」に支給された住宅に住んでいた人々は、その住宅をかなり低価格で払い下げられるようになった。

そのようにして得たのが「一つ目の不動産」だ。

その不動産は、一定期間は転売が禁止されていたが、上海市などを皮切りに、次第に転売が解禁された。

 

立ち退きは「おいしい話」

不動産によって莫大な収入が手に入るもう一つの手段が、不動産開発によって起こる「立ち退き」だ。

日本では、立ち退きの際に支払われる金額は、家賃相場の約6ヵ月分といわれており、現在では、立ち退きによって裕福になる、というイメージは薄れてきているが、高速道路や高速鉄道などのインフラ整備がまだ続いている中国では、認識が異なる。

ニッセイ基礎研究所の研究員で、中国の不動産事情などに詳しい胡笳氏によると「中国の土地管理法では、公共の利益のため、国は法律に基づき、土地を収容することができ、その代わり(建物およびその他の定着物に対して)補償する必要がある、と明記されています。

補償は立ち退き料が支払われる場合と、新築住宅が支払われる場合があり、ときにはその両方とも支払われる場合もあります」という。

立ち退きについて、地方政府による基準はあることはあるが、明確な基準は公表されていない。中国でもし自分の家が立ち退き物件に当たれば、「一夜にして億万長者になるケースも珍しくありません」と胡氏はいう。

日本のメディアでもときどき中国の「立ち退きを拒否した民家」が紹介されることがある。

日本ではそれを、強制的に立ち退かせようとする地方政府(または開発業者)VS.かわいそうな市民、といった構図で語られることもあるが、中国で立ち退きといえば、実は「おいしい話」である。

立ち退き=自分にもついにチャンスが巡ってきた、とほくそ笑む中国人が多いのだ。そのため、以前は膨大な金額を要求し、その条件を受け入れなければ絶対に立ち退かない、と強気に出る住民がいたが、近年では、そこまでして立ち退きを拒否するケースは減ってきている。

地方政府(または開発業者)が、その家だけを取り残して、そのまま建設を始めてしまう、という強硬手段に出るようになったからだ。

2020年8月、広東省広州市に海珠涌大橋という全長400メートルの大橋が完成したが、その橋の途中に1軒だけポツンと取り残された民家があり、異様な光景となっている。中国のニュースでも大きな話題となった。

中国では、このような物件は「釘子戸」(抜けない釘のようになった家)と呼ばれている。

最終的に金銭的な条件が合わなかったため、その1軒だけ取り残され、まるで観光名所のようになってしまったのだが、ネット上では、民家が要求した金額について「400万元(約6000万円)、いや800万元(約1億2000万円)も吹っ掛けたらしい」などという噂が飛び交った。

中国人の中には「ここまでごねたら逆に損をすることになるのではないか……」「もう少し妥協していれば、新築の家と多額の現金が手に入ったのに……欲の皮が突っ張りすぎたのだろう」と冷めた目で見ている人もいた。

このようにして中国人が得た資産、貯金の平均額のデータについては、拙著『中国人のお金の使い道』で掲載したので、興味のある方はご覧いただきたい。

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