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生き方

「すぐに張り合ってくる人」が“人生を焦っている”のはなぜか

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2021年01月30日 公開 2024年12月16日 更新

今の日本、あまりにもやさしさがない。そして、あまりにも優しさが尊ばれない。

作家で早稲田大学名誉教授の加藤諦三氏は、このようにいう。

加藤氏は著書『やさしい人』(PHP研究所)にて、「イヌの好きな人に悪い人はいない」という例を出し、やさしくなれない、いつも他人と張り合ってしまう人の特徴を述べる。

好かれたいのに、他人を見下げる行動を取ってしまうのは何故なのか。詳しく解説していく。

※本稿は、加藤諦三 著『やさしい人』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集してお届けする。

 

自分の好きなものを持つ人は“焦らない”

やさしくなれるか、なれないかで大切なのは、「これさえあれば、あとは何もいらない」というようなものを、その人が持っているか持っていないかである。

よく、「イヌの好きな人に悪い人はいない」とか、「花の好きな人に悪い人はいない」と言われる。それは当たっているところがあると私は思っている。

なにもそれは、花やイヌである必要はない。ある人にとっては料理であるかもしれないし、ある人にとっては水泳かもしれない。

つまり、自分の飼っているイヌと一緒にいれば、もうかわいくてあとは何もいらないと思う。そうすればその人は、名誉とかお金とか権力を強迫的に求めることはないであろう。

早くもう一つ上のポストを得なければ、と焦ることもないだろう。

日常生活の中で、「こんなことをしてはいられない」と焦ることがない。焦ることがなければイライラすることもない。心理的に落ち着いていられる。

そうなれば、「あれも欲しい、これも欲しい」がない。おそらく、「あれも欲しい、これも欲しい」と言う人は、今持っているものに満足していない。

 

すねる人、ひねくれる人、妬む人

すねている子に、「飴、いくつ欲しい?」と聞く。

「いっぱい」と答える。
「数を言って」と言う。
「だったら、全部」と答える。
無理とわかっていながら、あえて相手の困る言葉を言う。

ひねくれている子に、「飴、いくつ欲しい?」と聞く。

ひねくれている子は心の中で、「この人は他の子にもあげるつもりだ。だから自分は、ほんとうは五個全部欲しいけど、そのまま言ったら嫌われる」と思う。

そこで、「いらない」と言う。

自分が「いらない」と言ったら、相手は「この子は私を嫌っている」と思うだろう。相手に「自分は嫌われている」と思わせたい。だから「いらない」と言う。

相手は拒否されたと感じて驚くだろう。だから、「いらない」と言う。

妬む子に、「飴、いくつ欲しい?」と聞く。

ほんとうは五個全部欲しいけど、よく思ってもらおうとして、「二個でいいです」と答える。でも内心は、自分に気を遣って五個くれると思っている。

しかし、「はい、二個」と渡される。
そこで、「えー……?」と不満になる。
自分の好意は踏みにじられたと思い、悪意を抱く。

すねる人も、ひねくれる人も、妬む人も、「自分はこれが欲しい」というものがない。自分自身の欲求がない。いつも人にどう思われるか、人にどう思わせるかだけ。

すねる人も、ひねくれる人も、妬む人も、飴を舐めながら不満な顔をしている。好きなだけ食べている人は、満足した顔をしている。

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あなたを見下げる人は、劣等感に苦しんでいる

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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