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SDGsは本当に正義なのか?…「満月のGHEE」開発者に聞く、エシカル消費の今

翠川裕美(KATALOKooo代表)

2021年08月23日 公開

 

エシカル消費は本当にできるのか?

【翠川】その取り組みはSDGsの一環として、やろうという気持ちはあったんですか?

【中原】いいえ全く(笑)。面白そうだと自分でも思ったし、それで喜ぶ人がいるならやろうと思ったのが始まりです。

昨今はSDGsを目標として掲げる企業も増えて来て、その達成のために新規事業に取り組む企業もあるようですが、僕たちの場合はあるべき姿をやってみたいという気持ちの方が大きかったですね。後になって真庭市がSDGs先進都市であることを知りました(笑)

【翠川】私はKATALOKoooというWebサービスを通じて、小売のネット販売の支援を事業としているのですが、例えばジュエリー業界ではエシカル消費への参入は課題が多い現状があります。

使用する石の出自や仕入れ先を明確にし、低賃金の違法労働で働かせていたことのある企業と取引していないことをアピールしようとするために、現実的には出自を辿れないことも多いのです。

石の仕入れは数年前かもしれませんし、小さいジュエリー会社なら直輸入ではなく石の問屋から仕入れているケースがほとんどなので、問屋が仕入れ先の詳細を把握できてないことが多いです。

ごく一部の資金力のある高級ブランドなどは自社で使用する石を、指定した鉱山からの採掘に限るなどの取り組みが始まり業界では話題になりましたが、中小規模の会社ではとても現実的ではありません。エシカルジュエリーと打ち出せば話題になるかもしれませんが、実現できるのかという課題がある。

ファッション業界でも同様に、使用している糸やボタン、生地など全てのパーツの出自は辿りきれませんから、似たような問題を抱えています。完全受注生産で作るにも商品を選ぶので、全ての商品をその生産体制に切り替えることも難しい。SDGsで言われていることを真に受けて、全て完璧にやろうとしても限界があるのではないでしょうか。

【中原】物を作るとどうしても不要な物も出てしまいますよね。一つの食品を作るだけでこんなに空き瓶が、シールがいるんだと日々痛感します。いらない物を作っているのでは?という感覚もある。何が環境や社会のために良いことで、何か不要なことなのか線引きも簡単でない。

 

「SDGs的」なことだけが正義なのか?

【翠川】それに、日本では下手にSDGsに取り組んでいることを公に発表すると、できていない一部分を指摘される風潮もあります。

例えば、せっかく地産地消に挑戦する会社があっても消費者から「でも、プラ容器使ってる」とSNSで一言で否定されてしまったり。会社としては色々なコストバランスを考えて今の仕様になっているのですが、少しでも落ち度があると批判されてしまう。

もう少し取り組んでいること自体を評価してもらえたら、日本にももっとSDGsの輪が広がり、消費者にとっても社会にとっても良いサイクルになるのではないでしょうか。

【中原】SDGsで掲げられていることも、全てではないと思うんです。あれもかなり内容を精査はされていますが、文化や芸術に関する所は落とされている項目もある。その中にも重要なものはあったのではないでしょうか。

何より、SDGsに協力しようとするとき、ただ「掲げられているから」というだけではモチベーションが湧きませんよね。現状では「世の中がこう言っているからやりましょう」となっている。でも本当は「自分の地元の川を綺麗にしたい」とかそういう所から「じゃあ自分も何かしてみよう」という気持ちが出てくる。

物理学者リチャード・ファインマンの「なぜ、デカルトは虹を研究したと思う?虹を美しいと思ったからだよ。」というのは、こういうところにも当てはまるのかなと。

モチベーションがない所に達成目標を置くから、偽善のようにも感じてしまう。SDGsには掲げられてないけれど、ただ自分が社会のためになるからやってみる。そういう始め方もあるのではないでしょうか。変に身構えずに目の前の課題に取り組んでみることも、十分SDGsです。

【翠川】SDGsが今の資本主義と合っていない問題もありますよね。株主はSDGsの達成よりも目先の利益をどう立てていくかを求めますから。補助金などの支援策がない限り、下手に手を出すとやっている側が不利益になりやすい。SDGsを世に推進させるならば、もう少しそうした取り組みが評価される仕組みも必要なのではないでしょうか。

 

SDGsは最大のブルーオーシャン?

【翠川】実際のところ、SDGsに繋がる事業で採算は合っているのでしょうか。

【中原】実はなかなか難しいところがあります。元々、僕たちの場合は他に事業を持っていますから、この事業で採算を取る必要はないというのはありますけどね。これはブルーオーシャンだと飛びついてやってみたのはいいけれど、そう簡単に儲からないから誰もやらないのではという気持ちのせめぎあいもあります。

【翠川】「採算が合いにくいので誰も手を出さない領域」をブルーオーシャンと言っていいのかという問題ですね。ただ、レッドオーシャンでもないことは確かです。遊泳区域ではないですけれど、でも新しい浮き輪があるなら大丈夫かもしれない。

【中原】そう簡単に儲からないとは知りつつも、それでも採算が合う所は探しています。

【翠川】自分がやりたいビジネス構造ではなく、倫理的にそして精神性として正しいことから逆算して事業の仕方を構築する必要がありますね。やりたくないことだけは避けるとしても。そこは経営者の腕の見せ所で、これからの経営者の力量が見える部分ではないでしょうか。

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それでもSDGsに向けた流れはいずれ主流になる

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