何もしていないのと同じ状態? 日本企業の「SDGs」が世界的に遅れている理由
2021年02月24日 公開 2022年12月19日 更新
現在の“資本主義経済”におけるビジネスでは、儲けることが絶対的に求められる。そのため、企業は自らの存続のためにコストの削減などを行い、より多くの利益を得ようと取り組んできた。
しかし、利益第一主義、金融資本主義への偏りは、格差問題や現在進行形で進む気候変動問題など、社会に様々な影を落とす。
近年その“いき過ぎた経済”の是正として、持続可能を意味する「サステナブル」というワードに注目が集まる。
「Sustainability First」を掲げる株式会社ユーグレナ社長の出雲充氏は、日本企業のSDGs(持続可能な開発目標)に見られる問題を指摘し、“ソーシャルビジネス”を推進すべきだと語る。
ソーシャルビジネスは今までのビジネスと何が違うのか。そして、それがもたらすものとは。
※本稿は、出雲充 著『サステナブルビジネス――「持続可能性」で判断し、行動する会社へ』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
誰かが不幸な状態にあるのは「サステナビリティ」ではない
サステナビリティとは何でしょうか。一般的には「持続可能性」のことです。
私たちが新たにユーグレナ・フィロソフィーとして掲げた「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」とは、持続可能性を何よりも第一に考え、判断、行動することを意味します。
サステナブルな環境、サステナブルな健康、サステナブルな社会、サステナブルな生活、サステナブルな働き方、サステナブルな組織など、自分の幸せが誰かの幸せと共存し続けることをサステナビリティととらえ、何よりも大事にしていきたい。
言い換えれば、いくら自分が幸せだと感じていたとしても、どこかで誰かが幸せでない状態であるなら、それはサステナビリティではないのです。
そして、目の前にある短期的な課題の解決ではなく、「未来がずっと続いていくためにできること」が、サステナビリティです。
日本の“SDGs”の取組みは世界に伝わっていない
「サステナブル」や「サステナビリティ」といった言葉は、近年、日本でも広まりつつあり、国際連合(以下、国連)が掲げる「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」への個人や企業の関心も日に日に高まっています。
しかし、真の意味でサステナビリティを重視する価値観へと、日本人や日本企業の多くが変わったか、本気でSDGsに取り組んでいるかと言えば、まだまだではないでしょうか。
「日本に来るとSDGsのバッジをつけている人がたくさんいる。東京では本当に多くの人の胸に輝くのを目にする」と、海外から来た人によく言われます。
そして、こう聞かれます。
「SDGsの達成に向けて、どんなことをやっていますか」「どんな企業がどんな取り組みを行っていますか」「どんな取り組み事例がありますか」
これらの質問は、日本の企業や地方自治体などの組織が、SDGsに対してどのような取り組みを行っているのか、世界の人たちにほとんど知られていないことを物語っています。
世界に知られていないということは、日本がどんなにSDGsにおいて様々な取り組みを行っていたとしても、何もやっていないのと同じことです。
今後は、こうした世界への発信を積極的に行っていく必要があるでしょう。