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SDGsは本当に正義なのか?…「満月のGHEE」開発者に聞く、エシカル消費の今

翠川裕美(KATALOKooo代表)

2021年08月23日 公開

 

それでもSDGsに向けた流れはいずれ主流になる

【翠川】SDGsで採算を合わせるには経営力が問われますが、それでも今から取り組むべき理由はいくつかあります。

私が関わっているブランドを例に取っても、今後、ただ商品の売り手になるのではなく、ブランドとして文化を担う存在になるには、間違いなくそうしたSDGsへの深い理解やコミットが求められます。SNS全盛で個人がメディアにもなれる今では、ただ商品を売っているだけでメディアにはなれませんから。

そのブランドがこれからプロダクトを作ってオンラインブティックで売っていくだけのメーカーになるのか、文化発信や社会へのメッセージを伝えるメディアになるのかで発信の仕方が変わります。前者は今日明日の利益にはなりますが、先細りです。

メーカーでも前世代に文化を作って、今その文化に乗っかって商品を売っているだけというブランドは、今後はますます衰退していくと思います。先を見越すなら、文化を作ってメディアになる覚悟を決めて取り組むしかない。どっちつかずのまま発信や販売をするのは一番ダメですね。

【中原】僕の場合も、そうしたカウンターカルチャーを作りたい気持ちもあります。酪農界に縁がなかったからこそできることもあるのではと考えています。

先の取り組むべき理由の一つには、日本の長く続いたデフレ問題もあります。SDGsに限らず、何らかの高く売る仕組みがないと安い価格で買い叩かれてしまって、まず作り手が困窮します。そこからいずれ消費者も困窮するという、今のスパイラルから逃れられません。

【翠川】それは経済全体に言えることですね。現状では「良いものだから高くても買う」という層はまだまだ少ない。でもこのまま「安かろう良かろう」を続けてしまうと、みんな駄目になってしまう。

【中原】唯一の希望では、Z世代(1990年代以降に生まれた人のこと)の感覚が着実に変わって来ていることでしょうか。かつてはエコロジー・環境を意識するなんて学校の優等生なり委員長なり、かなり特殊で真面目な人に限られていました。

または思想があるとかね。でも、今のZ世代をみていると特殊な人たちだけがSDGsに興味を持っているのではなく、総じて社会のことを考えている人が明らかに多いですね。「SDGs云々の前に、人として当たり前だから、楽しいからやっている」という人が多いのも特徴かなと思います。

【翠川】その感覚はわかります。インターネット世代だからなのか、地域差もなく、みんな同じような意識を持っていますよね。選挙にも下手したら30・40代よりも興味が高いのではないでしょうか。

【中原】あの世代をみてると、今は少子高齢化の中で人数としては少ないけれど、彼らはいずれ日本の少なくない割合を占めるようになる。日本の雰囲気ももっとガラッと変わるでしょうね。

【翠川】今はロールモデルがないから、取り組む際に参考にできる人が少ない。でも今から始めることで、後から続く人たちの希望にもなれますよね。

 

◆翠川裕美◆
2004年8月慶応義塾大学環境情報学部卒。在籍中は環境デザイン・メディアデザインを専攻し、デザインプロセスを研究。卒業後、スマイルズに入社。08年イデーへ入社し、宣伝販促室でブランド全体の販促企画を担当。16年7月にモンキーブレッドを設立し、作家やブランドに対し、ECに特化したマネージメントエージェント「KATALOKooo」を新規事業として立ち上げる。継続的な経済とクリエーションの両立を目指し活動している。

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