怒りや不安といったネガティブな感情は誰もが持ってしまうものです。心に負担がかかるそういった感情も、その正体がわかれば心が軽くなるかもしれません。怒りと上手に付き合う方法を専門家が教えます。
※本書は月刊『PHP』(2021年5月号)より抜粋・編集したものです
怒りと上手につきあう方法
日々の生活で、ご機嫌な毎日を過ごしたい、心おだやかに過ごしたい、と思うけれど、イライラしたり、不安になったりと、ネガティブな感情が湧いてくることがあると思います。
そのような時に、悶々とし、やらなければならないことに集中できなくなったり、そんな自分が嫌になって落ち込んでしまったり、心乱されることは避けたいですよね。
ネガティブな感情を持つことは、悪いことではありません。どの感情も自分にとっては大切なもの。嬉しい、楽しい、というポジティブな感情もあれば、悲しい、苦しい、といったネガティブな感情もあるのです。無くすとか、抑えるという考え方ではなく、うまく付き合おうと捉えてみませんか。
アンガーマネジメントをご存じでしょうか。
これは、怒りと上手に付き合うための心理トレーニングで、決して怒らない人間を目指すものではありません。怒りとの付き合い方を、ここでご紹介しましょう。
怒りを客観視しよう
そもそも怒りは、自分の思い通りにならない時に生じる感情です。「べき」という言葉に象徴されるような、自分の願望、理想、または譲れない価値観が守られない、その通りにならない時に怒りが生じるということです。
怒りのもとになる「べき」を把握するためにも、まずは自分がイライラしていること、腹が立ったことなどを書きとめることから始めましょう。感情は、つかみどころがないからふりまわされやすいのです。書くことで見える化し、客観的に捉えられるようにするのです。
「友人からのLINEの返信が遅くてイラつく」
「後輩が同じミスを繰り返してムッとした」
「一緒に仕事をしている他部署の人が納期を守らない」
「電車の遅延で約束の時間に遅くれそうで、イラッとした」
という感じです。そこから、自分の「べき」が紐解けます。「LINEは、その日中に返信すべき」「一度注意されたミスは繰り返すべきではない」というように。
思い通りにならないから怒りが湧いたのだとわかり、怒りの正体がつかめると、対処法も思いつくようになります。
まず、「自分がイライラしていることは、自分が何か行動することで変えられるのか、変えられないのか」と自身に問いかけ、割り振ってみるのです。
行動計画を立てよう
何か行動することで「変えられる」と判断したならば、どう行動したらいいかを考え、その計画を立てることに意識を向けましょう。
いつ(から)する? 何から取り組む? どの程度の期間をかけて取り組む? どの程度変わったらOKとする? というように。
相手がいるならば、どのような言葉で、どのタイミングで伝えようかも検討しましょう。
「友人と返信に対しての時間軸が違うかもしれないから、明日にでも"既読で返信がないと心配になるので、その日中に、一言でもスタンプでもいいから返信してね"と伝えてみようかな」
「後輩が同じミスをしないように、仕事のやり方をすり合わせる時間をとる必要があるから、そのスケジュールを考えてみよう」
というように。行動すれば変えられる状況なのに、いつかは……と思っていて、具体的な対策を考えられずに悶々としている人もいますので、行動計画を立ててみましょう。