できることに目を向けよう
ただし、世の中には自分の思い通りにならないことも多々あります。また、価値観も多様化していますから、大切にしている価値観が通用しない相手もいるでしょう。
自分がコントロールできないことに対して「なんで電車が遅れるの?」「なぜこの人は、こんなことをするの?」と思えば思うほど怒りがつのり、ストレスも溜まっていくばかり。
そうならないための見極めも大切です。
これは私の力ではどうにもならないと見極めたことに対して、そこまで重要ではないことであれば、
「イラッとするけど、ま、いいか」
と受け流していいと判断します。
重要なことである場合、自分の力ではどうにもならないその現実を受け入れましょう。
重要なので受け入れるのは悩ましいとは思いますが、「どうにかならないかな、なんでこうなるの?」と思えば思うほど、ただ自分の怒りやストレスが溜まるばかり……。
不毛な怒りやストレスを生まないために、自分にできることは何かを考え、できることに目を向けるのです。納期を守れない相手は何度言っても変わらない。
この人と仕事をする際は、納期を前倒しで伝えるか、納期に遅れても最低限のリスクで済むよう、こちらができる対策を考えておくのです。
変えられることなら、そのための行動をする。変えられないことなら、必要以上の怒り、イライラにならないように、何ができるかを考えて行動するということです。
前に対策を考えておこう
不安についても同じ対処がおすすめです。
何が不安かを書き出してみるのです。もし新型コロナウイルスに感染したら、景気が悪くなって給料が下がったら、親の介護が必要になったら仕事は、というように。
不安は、これから起こりうる出来事について心配してしまう時に生まれる感情で、未来に対しての恐怖から起こるものです。
視点を変えれば、不安があるからこそ、未来に起こりうるリスクへの対策を考えられるのです。事前に対策を考えておくことで、いざそのことが起きたらダメージを最小限にできます。
不安は生きる知恵にもなるのです。怒りも不安も、具体的に書き出して対策を考え、自分で適切な行動を選択できる癖をつけてみませんか。
【戸田久実(アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役・一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事)】
立教大学文学部卒業後、大手企業勤務を経て、2008年にアドット・コミュニケーション株式会社を設立。民間企業、官公庁の研修・講演の講師を歴任。登壇数は4,000回を超え、指導人数は22万人に及ぶ。著書に、『アンガーマネジメント』(日経文庫)、『コミュニケーション大百科』(かんき出版)など。