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生き方

いい学校を出るのだけが「高学歴」じゃない...子どもの自信をつちかう親の方針

出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)

2022年04月18日 公開 2022年12月08日 更新

 

未来なんて分かるはずがない。だから「今」を大事に

顔が違うように、人は全部違うと分かれば世界の人とは簡単につきあえます。人と人との基本的なコミュニケーションに必要なものは「共通テキスト」です。auが「三太郎シリーズ」というCMで金太郎、桃太郎、浦島太郎をキャラクターに起用していますが、あれは「日本の昔話」というみんなが読んでいる共通テキストがあるから多くの人に通じるんです。

世界の人だれにも通じる共通テキストは何かと言えば「数字」なんですよ。数字は事実ですから、「日本の人口は1億2600万人」ということは、どんな文化風土を持っている人でも分かる。そうしたら世界の人とつきあうには、数字、ロジック(論理)、ファクト(事実)以外にはないということがすぐに分かる。

グローバルに活躍しようと思ったら答えは簡単で、数字、ロジック、ファクトをベースに共通テキストを増やせばいい。ある国の人と仲良くなりたければ、その国の地理や歴史をきちんと勉強する。そうしたら共通テキストが増えるというわけです。日本人、外国人を問わず、人とのコミュニケーションの鍵は共通テキストの多さだということが分かります。そのことからも「人・本・旅」で学ぶことが大事ですよね。

今、未来のことだとか、仕事のことを考えるのははっきり言って無駄だと思います。未来なんて分かるはずがありません。だから10代のみなさんには、とことん「今」を大事にしてほしいんです。みなさんが今好きなことを、最後までやりぬく力をつけていくことがたいせつなんです。

「明るい未来」というのは、ホモサピエンスとしては答えが出ている。自分の好きなことをして、それで食べていける世界が理想。いろんな理不尽な制約から解き放たれて、人間が自由に生きていける社会がいちばんすばらしいのです。

人間のいちばんの力は、考える力です。人間はパスカルが言うように「考える葦」なんです。現在の日本では「探求力」などと言っていますが、要するに問いを立てる力、ゼロから常識を疑う力が基本です。

それを身につけなければ、特に時代のスピードがこのままどんどん速くなったら、世界の動きについていけなくなります。世界共通で必要になっている力です。だから、今は好きなことをとことんやり、問いを立てる力、常識をすべて疑う力、つまり探求力を高めていってほしいと思います。

「未来はどうなるか?」という質問に答えはないけれど、この質問自体はみんなで考えなくてはなりません。未来というのは、みなさんがどう行動するかで変わるんです。みなさんが、昨日と同じで何も学ばず、惰性で今までどおり生きていたら、未来は今の延長線上でしかないんですよ。

「未来は、ひとりひとりの意識の持ち方や行動の仕方でいくらでも変わる」ということを分かってほしい。それがいちばん大事なんです。未来を予想することに意味はなくて、今の課題が分かったら自分はどうしたいのか、どういう社会を作りたいのかということをみんなで「自分ごと」として考えることこそがたいせつなんです。

未来の仕事はみなさんが作りだすもので、予想するものじゃない。未来は、若者、そして若者に限らず、我々市民が作っていくものだという観点がなきゃいけない。

未来は君たち、今の子どもたちが作るんです。だれか偉い人が予測したものに合わせるんじゃない。学者がこう言っているからそれに合わせなきゃいけないんだ、という思考の枠組みが諸悪の根源です。

君たちが好きなことができる社会を作るために大人もがんばらなくてはいけない。子どもたちが自由に選べる未来の環境を残すことがぼくたち大人の義務、社会の義務、教育の義務だと思っています。

 

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