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哲学者になれず悩み苦しんだ? 古代ローマ皇帝の『自省録』に学ぶ“己を律する方法”

大賀康史(フライヤーCEO)

2022年06月09日 公開

ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『自省録』(マルクス・アウレーリウス 著、神谷 美恵子 訳、岩波書店)。

この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。

 

皇帝の孤独と人生観

今年ドラマにもなった「ミステリと言う勿れ」で登場したことでも話題になった『自省録』。ドラマを見ていなくても、一度は聞いたことがある本かもしれません。

それが、世界帝国として歴史に刻まれた古代ローマ帝国の全盛期を支えた、皇帝の一人であるマルクス・アウレーリウスの書であることにも、興味がひかれます。

著者はローマ皇帝としての務めを立派に果たした人物ですが、ストア派と呼ばれる学派の哲学者としても後世に知られています。絶大な権力をほこったきらびやかな人という皇帝像の当てはまりにくい人でもあります。

著者の在位期間では、すでにローマ帝国の順風の時は終えようとしていて、洪水などの自然災害、疫病、他民族からの侵略に悩まされた時期でもありました。重い責任を背負い、この世の不条理に立ち向かった生身の人、という表現が近いように思います。

『自省録』は日記のように自分自身に向けた内省を、人のためではなく自分のために残した戒めの文章の集まりです。人に見せるために美化していないので、等身大の人が、皇帝という立場で何に悩んでいたかを覗き見ることもできます。

本を読むとマルクス・アウレーリウスはなんと孤独で孤高の人だったのだろうか、とも感じます。そして、人は本来孤独な存在だからこそ、現代でも人とのつながりを求めてリアルの会話やSNSでその穴を埋めているのかもしれません。

 

本当は哲学者として人生を過ごしたかったマルクス・アウレーリウス

ここからは、訳文を参照しながらその人物像を探っていきます。

「つぎのこともまた虚栄心を棄てるのに役立つ。君の生涯全体、あるいは少なくとも君の若いとき以来の生涯を、哲学者として生きたとするわけにはもういかない、という事実だ。多くの他人や君自身にも明らかなことだが、君は哲学から遠く離れている。だから君は面目を失い、もはや容易なことでは哲学者としての名声をかちうることはできない。」

この文章から、著者が本当は何になりたかったのかを、うかがい知ることができます。君、という言葉は、本書では著者自身のことを指します。

哲学者になりたかったのに、本を読む時間がまったく取れず、もう哲学者にはなれそうもないというあきらめと今の職務に対する覚悟が見えるようです。

そんな人物が、現代で哲学者としても名声を得ているのは面白いですね。後世の人が著者にご褒美を与えてくれたのかもしれません。

ローマ皇帝という職務をしていく中で失われていく理想や面目にあきらめをつけている様子がうかがえます。役割上、山ほどの問題に対処しなければならなかったことでしょう。

その痛みに触れている様子から、著者は繊細過ぎるくらい人の心が感じ取れてしまう人だったのではないでしょうか。

目指していた人物像は、次のようなものです。「単純な、善良な、純粋な、品位のある、飾り気のない人間。神を敬い、好意にみち、愛情に富み、自己の義務を雄々しくおこなう人間」。

その理想の高さと、自分の内面から湧き上がる感情のギャップを埋めていたのが、『自省録』として出版された文章の集まりとも言えます。

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流されやすい欲に打ちかつ

著者紹介

フライヤー(flier)

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