感染症の流行で、世界が大きく変わったいま、将来を見通せず不安の中にいる人も多いのではないでしょうか。そんな現状は実はチャンスだと話すのは、曹洞宗徳雄山建功寺住職の枡野俊明さん。
自宅で過ごす時間も増え、自分と向き合う時間が増えた今だからこそ、「写経」を通して負の思考を追い払い、自身が本当に望む未来を見据えていく絶好の機会だといいます。
桝野俊明さんに、1,000年以上も人々から愛され続ける禅語の魅力や、心がすーっと軽くなる言葉を聞きました。
※本稿は、枡野俊明監修『おうち写経と仏の言葉なぞり書き』(小学館)より一部抜粋・編集したものです。
1,000年以上愛され続ける「禅語」の魅力
禅宗の経典には、中国や日本のいにしえの禅僧たちが厳しい修行を行った末にたどり着いた真理の言葉が多く残されています。
その中には、短い語句や単語で、禅の深い教えを端的に表したものがあります。それが、「禅語」です。
禅語はとてもシンプルですが、多くの示唆に富んでいます。禅の自由な悟りの世界をわかりやすく表現し、ものの見方やとらえ方、ひいては、人生観までも変える力をもっています。
凝り固まった考え方を手放し、心に新しい風を送り込んで、それまで気づけなかったような発想をもたらしてくれるのです。
だからこそ、禅語は1,000年以上の間、禅僧のみならず、茶の湯の世界、武士や文人たち、そして、一般庶民の間で長く受け継がれ、伝わってきたのでしょう。
このように、先人たちの心のよりどころとなってきた禅語は、変化の時代を生きる私たちにも、多くの気づきをもたらしてくれます。
しかも、短い言葉のひとつひとつが、禅の智慧の集大成ですから、私たちは瞬時にして真理にふれることができるのです。
仏の道をこころざし、人生をかけた禅僧たちがつかみ取った真理は、日々よりよく生きていくための大切なヒントとなるでしょう。
禅の智慧に満ちたそれらの言葉は、ともすると、閉塞感に襲われてしまう現代において、毎日を心豊かに過ごすための助けとなるはずです。
日々の暮らしこそが、禅の修行となります。あわただしい毎日の中で、たとえひとときであったとしても、ひとり静かに禅語をなぞる時間は、必ず毎日によい変化を起こしていくでしょう。