調査からわかった「日常で使うウソ12種類」
一口にウソと言っても、その内容はさまざま。たとえば、年齢をごまかすウソと金銭詐欺のウソ、同じウソと考えるのは無理があります。私たちは、どんなウソをつくのでしょうか。
実は、私自身が行った調査「対人関係におけるdeception(嘘)」〔『山梨医科大学紀要』(第10巻)、1993年〕では、全部で12種類のウソがあることがわかっています。
その調査は、都内の大学生と社会人の男女を対象としたもの。どんなウソをいつ頃、誰につき、どんな結果になったのか、自由回答してもらったのです。
その結果得られたのが、次の12種類です。
(1)「予防線」のウソ……これから予測されるトラブルを避けるためにつくウソ。たとえば、相手からの誘いを断るために、「その日は予定が入っている」とウソをつくようなケースです。
(2)「合理化」のウソ……いわゆる「言い訳」のためのウソです。約束を守れなかったときなどに、批判を避けるためにもっともらしい理由をつけるケースなどがこれにあたります。
(3)「その場逃れ」のウソ……何かをしたかどうか問われたときなどにつく、一時しのぎのウソがこれにあたります。
(4)「利害」のウソ……おもに金銭が絡む状況で、自分に有利なかたちに持っていこうとしてつくウソです。
(5)「甘え」のウソ……自分を理解してほしい、また擁護してほしい、という目的をもってつくウソです。
(6)「罪隠し」のウソ……自分が犯した罪を隠そうとするときにつくウソです。
(7)「能力・経歴」を偽るためのウソ……自分の立場を相手よりも優位に置こうとするときにつくウソです。
(8)「見栄」のウソ……自分をよく見せたいと思ったときにつくウソです。
(9)「思いやり」のウソ……相手を傷つけまいとしてつくウソです。
(10)「ひっかけ」のウソ……冗談やからかいなどがこれにあたります。それがウソだとわかっても笑って済ませられるようなウソです。
(11)「勘違い」のウソ……これは、本人にウソの意図がないケースです。いい間違いや勘違いのせいで、結果的にウソになってしまった、というものです。
(12)「約束破り」のウソ……一度した約束を、意図的でないにしろ守れなかったときに生じるウソ。友だちと映画にいく予定だったのに、急な仕事が入ってしまいキャンセルした、などがこれにあたります。
ウソは人の性格を理解する上で参考になる
私たちが日常的に経験するウソは、この12種類によってほぼ網羅されていると思います。あらためて整理してみると、実にさまざまな理由でウソをついていることがわかります。
(1)から(10)のウソに関しては、それがウソだと自覚し、明確な目的もあるわけですから、目的に合わせて10種類のウソを「使いこなしている」とさえ言えるのではないでしょうか。
もし、あなたが誰かにウソをつかれたら、そのウソがどんな理由によるものなのか、考えてみてはいかがでしょう。同時に、あなたがこれまでどんな種類のウソをついてきたか、振り返ってみてください。人の性格を理解するうえで、とても参考になるはずです。
たとえば、同じウソつきであっても、(4)「利害」のウソをつく人よりも、(9)「思いやり」のウソをつく人のほうが、好意が持てます。(8)「見栄」のウソばっかりついて嫌われている人もいるような気がしますし、何か失敗すると(2)「合理化」のウソをつく言い訳がましい人にも心当たりが……などと考えるのは、かなり楽しい作業です。