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オナラの“ゆで卵みたい”なにおいの原因は? 腸内ガスのくわしい成分

左巻健男(東京大学非常勤講師)

2022年09月15日 公開 2024年12月16日 更新

ウンチやオナラはなぜ臭いのか? その原因は、体内に存在する成分によるものだそう。東京大学非常勤講師の左巻健男氏が詳しく解説します。

※本稿は、左巻健男著『面白くて眠れなくなるウンチ学』(PHP研究所)より、内容を一部を抜粋・編集したものです。

 

ウンチのにおいのもとインドール、スカトールはどんなガス?

タンパク質が大腸内の細菌によって分解されると悪臭を放ちます。それが、インドールやスカトール、硫化水素、アミンなどです。これらは、オナラのにおいとも関係しています。

インドールとスカトールは、タンパク質を構成する必須アミノ酸の一つ、トリプトファンが細菌によって分解されることでつくられます。トリプトファンは、乳製品や大豆製品、卵黄、ナッツ類、バナナなどに多く含まれています。

インドールは室温では大便臭のする固体の物質です。ところがうすめて低濃度にした場合は芳香があり、オレンジやジャスミンなど多くの花の香りの成分でもあります。

実際、香水に使われる天然ジャスミン油は約2.5パーセントのインドールを含みます。香水や香料には合成インドールが使われています。

スカトールは、ギリシア語でウンチを意味する「スカトskato」から命名されました。化学式を見るとインドールと似ていて、違いはメチル基(-CH3)が付いていることです。

スカトールも、ウンチ臭のもとですが、うすめるとジャスミンの香りになります。インドール同様、香水や香料に使われています。

硫化水素は、硫黄原子に水素原子が2つ結びついてできています。有毒な気体で、卵が腐ったにおいといわれます。卵が腐るのを経験するのはあまりないことから、「固ゆで卵の殻を割ったときに感じるにおい」のほうがわかりやすいと思います。

 

オナラの成分

腸に入りこんでくるガス+腸内で発生するガスと、腸壁から体内に吸収されて血液循環に乗っていくガス+オナラとして排出されるガスの量はバランスがとれています。

このバランスが正常なら、約200ミリリットル(コップ1杯分)程度の腸内ガスがたまります。オナラは、腸内ガスの一部が肛門から外に排出されたものです。ところでオナラには、なんと約400種の成分が含まれています。

オナラの成分で最も多いのは、飲み込まれた空気中の窒素で、60~70パーセントを占めます。次いで、水素が10~20パーセント、二酸化炭素が約10パーセントです。その他、酸素、メタン、アンモニア、硫化水素、スカトール、インドール、脂肪酸、揮発性のアミンなどが含まれます。

またも出てきた硫化水素、スカトール、インドールですが、これらはウンチ臭の原因でもあり、オナラ臭の原因でもあります。他に、においがある物質は、アンモニア、脂肪酸、揮発性のアミンです。これらも実はうんち臭の原因でもあります。

ただし、アンモニア、硫化水素、スカトール、インドール、脂肪酸、揮発性のアミンは、オナラ全体の約1パーセントを占めるにすぎません。含まれる量は少ないのに、強いにおいを持っているのです。

オナラの量は食べ物や体調によっても異なりますが、1回で数ミリリットルから150ミリリットルほど、1日で約400ミリリットル~2リットル出るといわれています。

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腸内ガスができる道筋

著者紹介

左巻健男(さまき・たけお)

法政大学生命科学部環境応用化学科教授

1949年生まれ。栃木県出身。千葉大学教育学部卒業。東京学芸大学大学院修士課程修了(物理化学・科学教育)。中学二高校の教諭を26年間務めた後、京都工芸繊維大学アドミッションセンター教授を経て2004年から同志社女子大学教授。2008年より現職。
『面白くて眠れなくなる物理』『面白くて眠れなくなる化学』『面白くて眠れなくなる地学』『よくわかる元素図鑑』(以上、PHPエディターズ・グループ)、『頭がよくなる1分実験[物理の基本]』(PHPサイエンスワールド新書)、『大人のやりなおし中学化学』(ソフトバンククリエイティブ)、『新しい高校化学の教科書』『新しい高校物理の教科書』(以上、講談社ブルーバックス)、『水はなんにも知らないよ』(ディスカヴアー携書)など編著書多数。

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