オナラの“ゆで卵みたい”なにおいの原因は? 腸内ガスのくわしい成分
2022年09月15日 公開 2023年10月13日 更新
腸内ガスができる道筋
まず食べ物と一緒に空気が口から飲み込まれます。乾燥空気の主成分は、体積比で、窒素78パーセント、酸素21パーセント、その他1パーセントです。唾液を1回飲みこむと、同時に2~4ミリリットルの空気が飲みこまれることになります。
飲みこんだ空気のうち、酸素は小腸までで反応・吸収されて、大腸ではわずかになります。また、腸壁の毛細血管中の血液に溶けこんでいた気体(酸素や二酸化炭素など)が、腸内に拡散することもあります。
もう1つ腸内ガスの重要な供給源が腸内細菌の代謝(体内で起こる化学反応)です。細菌たちは、生きるためのエネルギーを取り出したり、体をつくったりするときに、栄養分を取り入れて不要物を外に出しています。そのときに出されるガスも、腸内のガスの成分になります。
とくに大腸には、莫大な数の細菌がいて、その種類ごとに集団を形成しながらすみついています。この集団のことを腸内細菌叢(叢=草むら)あるいは腸内フローラ(フローラ=お花畑)と呼びます。
こうして、飲みこんだ空気や腸壁の毛細血管からの拡散ガス、腸内フローラによってつくられた様々な気体によって、腸内ガスがつくられています。
腸内ガスの大部分は、腸壁から体内に吸収されて血液循環に乗って、体内の細胞に運ばれます。そこで消費されなかったものは、肺から呼吸によって排出されます。
ゲップやオナラとして排出されるのは、腸内ガスのわずか10パーセントに満たない量です。
「オナラのにおいを改善する薬の開発」を提案したベンジャミン・フランクリン
昔から、オナラを出すことは、日常的なことであるにもかかわらず、上品な社会では歓迎されることがほとんどありませんでした。
2世紀前、「アメリカ建国の父」の1人と称されたベンジャミン・フランクリンは、1781年のエッセイでオナラについて述べています。フランクリンは、科学者であり、政治家でもありました。私たちが知っている彼の最も偉大な成果は、たこ揚げの実験から雷の正体が電気現象だということを見いだしたことでしょう。
このエッセイは、フランクリンによる「オナラについての王立アカデミーへの手紙」と呼ばれています。ブリュッセル王立アカデミーは、当時、最も尊敬される科学団体の1つでした。
「私たちがいつもどおりの食事をして消化されると、人間のおなかの中で大量の腸内ガスが発生することは広く知られている。このガスをまき散らし、その悪臭を漂わせることは、周囲の人に失礼な行為である。だから、育ちの良い人たちはこのような無礼をしないようにと、このガスを出すという自然現象を無理矢理抑えている。
自然現象に逆らって抑えるので、とても苦痛を伴うことが多いが、それだけでなく、慢性腸炎、脱腸、鼓腸症の遠因となり、しばしば体調を崩すことになるし、時には命も危うくなる」
「どうして王立アカデミーは私たちのオナラのにおいをどうすれば良くなるかを理解することに全く努力を払わないのですか?」
そして、「懸賞問題」を出して競わせるべきだとブリュッセル王立アカデミーにすすめています。
この懸賞問題の究極のねらいは、「安全かつ不快感を与えず、ふつうの食品や、ソースに混ぜることができ、体から自然に発生するガスを不快なものでなくするのみならず、香水のような心地良いものにする薬の開発」でした。
このエッセイは、フランクリンが、「王立アカデミーが通常研究した哲学的問題は、オナラをするほどの価値がない」ことを指摘するための大いなる皮肉でした。