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宗教の意義とは? 現存する、不幸を“妖術”と解釈する社会

奥野克巳(文化人類学者)

2022年08月26日 公開

 

邪術と妖術

このフレイザーによる呪術の2類型とは別に、イギリスのエヴァンズ=プリチャードという社会人類学者は、呪術行為に意図があるかどうかで、分類しました。

ある者が意図を持ってある人に呪術をかけたとします。それは「邪術」です。また意図的に呪術を行う者をエヴァンズ=プリチャードは、邪術師と呼びました。邪術師は道具や技術を使って、人を呪う者のことを言います。

これに対して、意図しないままに行われる呪術のことをエヴァンズ=プリチャードは「妖術」と呼びました。本人の知らないうちに誰か別の人に危害を加えてしまうような呪術のことです。このような呪術は持って生まれた、生得的な性質に由来することが多く、そうした呪術を行うのが妖術師なのです。

 

妖術は人間の「不幸」を説明する

フレイザーは、こうした呪術というのはいずれもただの連想に過ぎず、実際に起こった因果関係を取り違えてしまった、「未開社会」における非合理で非科学的な信仰なのだ、と語っています。つまり、呪術とは迷信であり、誤まりだというわけです。

これに対して、社会人類学者エヴァンズ=プリチャードは、呪術、特に妖術というものは、身の回りに起きた不幸な出来事を説明するために用いられていると考えました。

つまり、呪術とは起こった出来事の因果関係を説明する方法であり、私たちの文化・社会とは異なる論理で、原因と結果をつなぐものだと言うのです。

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「How(どうして)」と「Why(なぜ)」という論理の違い

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