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データより“感覚重視の日本人”の説得法

和田秀樹(精神科医)

2022年10月07日 公開 2024年12月16日 更新

 

「一次情報+神の一言」が最強タッグ

日本人は、客観的なデータよりも感覚を重視するという一面を持つ。かといって、自分の偏った意見ばかりを伝えたところで、何の説得力もない。だから私は、「自分の目と足で稼いだ一次情報」を活用すべきだと考えている。

たとえば、厚底サンダルが流行っているとテレビで特集されていても、実際原宿でカウントしてみたら100人中10人しかいなかった、という情報は説得力がある。

そのうえで「厚底サンダルは歩きづらい、という意見があったので、やわらかサンダルを提案します」と言えば、少なくとも上司は話を聞いてくれるだろう。一次情報こそが真実の情報なのだから、それをどんどん増やしていくといい。

医者は臨床などのデータを重視するように思われているが、実は「診察した患者個人の意見」を重視することもある。

だから、もし営業マンが新商品を企画する部門に提言する場合は、下手なデータよりむしろ「A社のスーパーに来るお客さんは、緑茶よりもほうじ茶を好むようです」「B社のスーパーでは、うちの緑茶より値段が高いC社の緑茶の方が売れているようです」といった感覚値も価値を発揮するのだ。

肌感覚はその人独自の感覚だから、ある意味「すべてが正解」だとも言える。統計数字はみなが使えるようになった時代だからこそ、逆に肌感覚の方が「オンリーワン」の意見を作ることができるかもしれない。

さらに一次情報は、私達のなかに無意識にできてしまった「常識」を崩すきっかけにもなる。

ピンヒールのブーツが流行っていると何度かテレビで聞くと「渋谷はピンヒールのブーツをはいた女性で溢れているのでは」とイメージしてしまう。でも「渋谷のスクランブル交差点でカウントしたら、100人中3人しかいませんでした」と言われたら、一気にその常識が覆されてしまう。

さらに「ピンヒールのブーツは3人でしたが、もこもこしたブーツは15人もいました。このブーツに合うタイツをもっと売ってはどうでしょう」と言えば、途端にあなたの意見の価値が上がるのだ。

これらの一次情報をさらに強固なものにするために使えるのが「神の一言」だ。

たとえば、先日亡くなった京セラの創業者の稲盛和夫氏はいまや経営の神のように扱われているが、彼の証言を一次情報としてとるのは難しい。

だから一見「主観的」と思われる一次情報に、権威者の意見を二次情報として付加すると、その意見はまさに「神化」するのだ。

流通業界に意見を提案することがあれば、「セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文氏は5年後の業界のトレンドをこう見ています」と付加するだけで一気に説得力が増すだろう。

鈴木氏が飛躍しすぎなら、競合他社の社長、もしくは社内の意思決定者でもいい。「どうあがいても逆らえない人」の名前は、前面に出すと反感を買うが、一次情報とセットで使うと非常に効果的である。

 

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