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官僚にも多い? 結局「褒め上手」が職場で上手くいく理由

清水克彦(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師)

2023年01月10日 公開 2024年12月16日 更新

自分の能力を発揮するためにも、職場では上司や部下をはじめ身の回りにいる人たちと良好な人間関係を築く必要がある。清水克彦氏に、「社内交渉力」をアップし、周囲から信頼され、力を貸したいと思われる人になるためのコツを聞いた。

※本稿は、清水克彦著『1秒速く動く人になる習慣』より、一部を抜粋・編集したものです。

 

上司を勝たせる、部下に花を持たせる

私が「なるほど」と思う学説に、「ピーターの法則」というものがある。アメリカの教育学者、ローレンス・J・ピーターが、1969年に、レイモンド・ハルとの共著『The Peter Principle』の中で発表したもので、端的に言えば、

「人は能力の限界まで出世し、無能なレベルに達すると出世が止まるので、大多数の上司は無能な上司で占められるようになる」

というものである。

なかには、「自分はそこまで昇進させてもらっていない」という方もいるだろうが、「大多数の上司は無能」という部分は、「わが社にもあてはまる」と感じる方が多いのではないだろうか。

しかし、あなたの要望を聞き、チャンスを与えてくれるのは上司である。あなたから見て無能に思う上司でも、敵に回しては、仕事を円滑に進めることができなくなるから要注意だ。

私は、たとえ、あなたの上司が、「こんな人の下で働くのは勘弁してほしい」と思えるような人物であっても、反抗したり陰口を叩いたりするのではなく、むしろ、その上司を勝たせる気持ちを持つべきだと考えている。

あなたが上司を否定すれば、あなたも上司から否定される。あなたが上司を肯定し支えようとすれば、上司だって、あなたに一定の配慮をしてくれるからだ。

「うちの課長は、いつも部下の手柄を横取りする」

このような話は、私の職場でも、私が取材で出入りしている企業や官公庁などでもよく聞く話だが、二度や三度ぐらいなら、有能だった人である。少なくとも経験と人脈は持っているものだ。

あなたからのお願い事を、他の部下よりさきに実現してくれたり、過去の経験からアドバイスをくれたり、あるいは、「そのことだったらAさんに聞いてみろ。話はしておいてやるから」などと人脈を紹介してくれたりするので、すぐに動くことが可能になるというメリットもあるだろう。

同様に、部下に花を持たせることも大切だ。あなたの代わりに動いてくれたり、あなたにふられた仕事の一部を担当してくれるのは、部下や派遣社員である。

先輩風を吹かせたり、横柄な態度で接したりしていると、計算どおりに仕事を進められなくなるので、さきにも述べたが、謙虚に、そして、ねぎらいの言葉や、彼(彼女)らのモチベーションを高めるような声がけを忘れないようにしたい。

それは、ビジネス用語で言うエンパワーメントである。エンパワーメントは、しばしば、「権限を与える」などと誤用されるが、文字どおり「パワーを与える」ことにほかならない。

あなたの態度や言葉が、部下にとっては一番のインセンティブ(=意欲につながる刺激)になるので、日頃、「私がお願いした仕事を、彼はなかなか仕上げてこない」「私が頼んだコピーに限って遅い」といった自覚がある方は、少し、普段の態度や言葉を改めてみてはどうだろう。

 

「ほめ言葉」は積極的に流布する

「人にほめられる人よりも、人をほめられる人が賢者」

これは、故・斎藤茂太さんのベストセラー『いい言葉はいい人生をつくる』の中の一節である。

政治の世界では、「怒る」(=怒鳴る)や「威張る」(=偉そうにする)といった態度をよくとる政治家は、どんなに実力者であっても毛嫌いされ、総理大臣になれない。もしくは、なれても短命に終わっているものだ。

同様に、私たちも職場でこのような態度をとっていると、どんなに才能があったとしても、周囲が動いてくれなくなるので、思ったような実績を上げることができないし、仕事を円滑に進めることが難しくなるので注意が必要だ。

逆にほめ上手な人は、それほど才能がなくてもうまくいく。政治家の中にも、

「あの人が総理? そんなに実力者だとは思えないけど……」
「えー、この大臣、よく知らない。こんな人がどうして入閣できたの?」

と思ってしまう人がいるが、そういう人は、党内に敵を作らず、霞ヶ関の官僚たちの評判も悪くないというタイプが多い。端的に言えば、気配り上手、ほめ上手が多いのだ。

ここで、あなた自身の過去を振り返ってみていただきたい。

過去に誰かに怒られたことを今でも覚えているように、ほめられたことをはっきりと覚えている方も多いのではないだろうか。

ほめ言葉は、受けた側にとって、「評価してくれたこの人のために役立ちたい」というインセンティブになる。「もっと早く、いいものを仕上げてあげよう」というモチベーションにもなる。

したがって、部下を怒鳴り散らす、厳しく叱責するといった行為、あるいは、相手が上司などの場合、陰口を言ったりする行為は避け、いい点を見つけてほめ、評価するスタンスに転じるべきだ。

○上司に対するほめ方
・具体的にほめる=「○○課長のこういう部分がすごいと思います」など。
・間接的にほめる=第三者を介して、あなたが上司をほめていたことが伝わるようにする。

○部下に対するほめ方
・小さなことでもほめる=「よく気がついたね」「頑張ってるね」など。
・具体的にほめる=「君の企画はここがいい」「あなたはこの部分が優れている」など。
・間接的にほめる=上司に対してと同様、「○○さんがあなたのことをほめていたよ」と、第三者を介して伝わるようにする。
・叱責をほめ言葉に置き換える=「失敗するのは行動力がある証拠」「君なら今度はできるはずだ」など。

なかでも効果的なのは、「間接的にほめる」ことだ。これは、面と向かって言われるよりも嬉しいもので、あなたをほめていたという人物への好感度が増すものである。そのことが、相手を、あなたからの高評価に応えようという気持ちにさせるので、上司や部下に対するほめ言葉は、どんどん流布するようにしたいものだ。

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3つの根拠を示せば周りは動く

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