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離婚しても家族? 日本とドイツの家族観の違い...元配偶者の親戚とのクリスマス

サンドラ・ヘフェリン

2025年06月02日 公開

離婚しても家族? 日本とドイツの家族観の違い...元配偶者の親戚とのクリスマス

日本とドイツの家族観には、どのような違いがあるのでしょうか。ミュンヘン出身で、現在は日本で暮らすサンドラ・ヘフェリンさんは、日本人の方がドイツ人に比べて家族との関係はドライだと話します。

著書『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』では、いろいろなドイツ人へのインタビューをもとに「ドイツ式・老い支度」が綴られています。その中から、ドイツ人の親子関係、配偶者の親戚との付き合い方について書かれた一節をご紹介します。

※本稿は、サンドラ・ヘフェリン著『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』(講談社)より、内容を一部抜粋・編集したものです

 

日本の親子関係は世界のなかでもドライ?

日本とドイツを比較して私が感じるのは「親子関係」は日本のほうがドライだということです。

たとえば成人した息子や娘が東京で働き、親が地方都市に住んでいる場合、子どもが帰省して親に会うのはお正月ぐらいだったりします。電話も週に何度もするという日本人はむしろ少なく、「たまにする程度」という人がほとんどのようです。

もっとも、都会で働いている人は忙しいことが多いのでそう頻繁に電話はできないし、親から連絡を受けても、折り返しをうっかり放置してしまったとしても責められることではないでしょう。

いっぽう、ベルギー、フランス、ドイツなどの私の知り合いや友達を見ていると、「親子関係が濃い」と感じます。毎日のように親と連絡を取ると語るベルギー人女性は、「週に一度だけしか親と話さないなんて、本当に信じられない!」と言います。

個人的には「連絡しないのは愛情がない」とは思いません。もしかしたら、家族であっても愛情や気持ちを「言葉」で表すことを重視している「欧米流のコミュニケーション」vs.「家族間の阿吽(あ・うん)の呼吸」を信じる日本人、という違いなのかもしれません。

 

「ヨーロッパ的な嫁・姑関係」とは?

ヨーロッパ人のほうが、親との付き合いが濃い――これは実の親に限らず、義両親に対しても同じです。日本はかつて「結婚すると女性は『嫁』となり、姑や舅にいいように使われて酷い目に遭う」なんて話がザラでしたが、現在も改善したとは言い難いようです。匿名で悩みごとについて相談したり、意見を書き込んだりできる読売新聞の掲示板サイト「発言小町」でも、「義両親とはあまりかかわりたくない」という意識が感じられます。

その点、ヨーロッパの女性は、だいぶ様子が違います。

関東在住のノルウェー人女性は夫(日本人)がいなくても、地方都市に住む義両親(日本人)にマメに会いに行って、交流を深めています。また都内在住のあるドイツ人女性は「クリスマスの雰囲気を味わってもらいたい」と家をクリスマス風に飾り付け、手の込んだ料理を用意し、義母を東京駅まで迎えに行って、いろいろともてなしていました。

そこには「嫁としてやらなくては」という義務感よりも、「家族になった人なのだから交流をしたい」という意欲が強いように感じます。もっとも、日本人の義両親も、嫁が外国人だと良い意味であきらめがつくのか、「日本の嫁になら求めそうなことを求めない」ために、良い距離感が保てている点は否定できません。

私自身も、亡くなったロシア人の義母の服を譲り受けて着ていたりします。この感覚は、もしかしたらヨーロッパ的なのかもしれません。

日本では男性が母親と仲良くすると、即「マザコン」だと決めつける傾向がありますが、ヨーロッパではそれはむしろ普通のことです。「母親の誕生日に妻と入籍したよ」というドイツ人男性の話を聞いて、私は素敵だなと思いました。

 

「元家族」も「今の家族」も一緒に過ごす

クリスマスに集まるメンバーを見ていると、日本とドイツでは「家族観」がだいぶ違うことがわかります。日本では夫婦が離婚をすると、元配偶者はもちろん、元配偶者の親きょうだい、親戚とも縁を切る、または交流をしないという考え方が一般的かと思います。

配偶者と死別の場合も、その後再婚をしたら、再婚相手やその家族の手前もあり「元配偶者の親戚とともにお正月を過ごす」というのはあまりないでしょう。ところがドイツでは、こうした関係性の人たちとクリスマスを一緒に過ごすのは「アリ」です。

たとえば、日本旅行にやってきたドイツ人女性アンナさんは、死別を経て再婚しています。元夫ハインツ(Heinz)さんは58歳の時に、多発性硬化症で亡くなりました。

ハインツさんの死後、アンナさんは大学の同級生で、同じく小児科医のシュテファンさんと再婚。その後も、元夫ハインツさんの親戚と交流をしています。

2023年のクリスマスにアンナさんとシュテファンさん夫妻の家に集まったのは、アンナさんと亡きハインツさんの間に生まれた成人した子どもたちと、彼らのパートナー。そして、シュテファンさんと元配偶者との間の成人した3人の子どもたちとそのパートナー。さらに......亡きハインツさんの高齢の父親、叔母とその娘とその配偶者でした。離婚・死別・再婚などで、家族は拡大していくのです!

アンナさんは楽しそうに話します。

「ハインツの父親秘伝のヴァイナハツプンシュ(Weihnachtspunsch)〔註:クリスマスに飲むベリー系の温かい飲み物。オレンジジュース、フルーツやラム酒を入れる〕を作ってみんなで飲んで、楽しかったわ。おじいちゃんの秘伝はね、『ラム酒をとにかくたくさん入れること!』よ」

ヨーロッパでも家族や親戚付き合いには様々なかたちがあります。でも「配偶者と別れたら、それに関連する親戚付き合いを一切断ち切る」という日本人のような感覚をもつ人は少数派です。

縁あって一度家族になった人、縁あって親戚になった人とは、よほどのことがない限り「交流を続ける」ドイツ人。アンナさんのようにそういった「つながり」を大事にしていくのも、人との縁が豊かな老後につながる気がします。

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