
就職してから時間がたってくると、さまざまな悩みを抱える人が多くなります。
入社前に抱いていた理想や希望がなかなか実現できなかったり、仕事の忙しさや人間関係に悩むあまり転職を考え始めたり...。そうすると「今とは違う場所でもうまくやっていけるだろうか」と気になってくるものです。
そのような時は、会社のようなビジネスの場ではどのような人材が求められているかをよく考えてみましょう。会社が社員に期待していることは、「成果を出すこと」です。
本稿では、書籍『どこでも通用する人は入社1年目に何をしているのか』より、どんな場所でも成果が出せる人材になるための思考について解説します。
※本稿は、原マサヒコ著『どこでも通用する人は入社1年目に何をしているのか』(総合法令出版)の一部を再編集したものです
プロとしてどう行動するべきか
これから社会に出て仕事をするといっても、「アルバイトはしたことあるし、そんなに変わらないだろう」と思う人も多いのではないでしょうか。
かくいう私も、学生時代は車が好きだったので、ガソリンスタンドでアルバイトをしていました。アルバイトをする目的は、自分の車のガソリンを少し安く入れられることが一番でした。
ほかにもガソリンスタンドを選んだ理由を挙げるとするならば、「時給が良い」とか「家から近い」とかでしょうか。ほかのバイト仲間に聞いても同じようなことを言っていたので、学生がアルバイトをする目的はそういった点に集約されるのではないでしょうか。
しかし、社会人になって仕事をするというのは、アルバイトとして働くのとは大きく違います。
単に契約形態が正社員かアルバイトかという違いでもありません。会社に所属して仕事をするというのは、考え方としてまったく違うものなのだということを、まずは理解しなければいけません。
まず、何がまったく違うのかを真っ先に書くとするならば、プロとして働くということです。
たとえば、今まで部活でサッカーをやってきたとします。部活なので、たまに休みたいと思うことがあれば休めたと思います。もちろん、試合に出る時もあるでしょうが、体調が悪い時は代わってもらえたでしょう。
しかし、これがプロのサッカー選手だったらどうでしょうか。「二日酔いで調子が悪いので休みます」などと言っていては、当然ながら試合に出られません。試合に出られないどころか、年俸は下がってしまうはずです。挙句の果てには、契約解消にもなってしまうでしょう。
試合に出たい人はほかにもいますし、プロになりたい人も山ほどいます。だから、試合に出て良い結果を出すためにも、自らのコンディションを整えるのは当たり前のことなのです。
社会人も同じです。試合開始のホイッスルが鳴ったら全力で走っていくように、始業時間から終業時間まで、つねにパフォーマンスを発揮していかなければいけません。
そのために、試合に向けてベストなコンディションを維持する。風邪をひかないように予防するのはもちろんのこと、飲みすぎて二日酔いだとか、夜更かしをして眠いだとか、そんなことを言うのは"プロ"ではありませんよね。
そうは言っても、「いやいや、できていない人は多いじゃないか」と思うでしょう。電車に乗れば、うなだれてイビキをかいているビジネスパーソンがあちらこちらにいます。
二日酔いで頭が痛いと言っている課長もいるでしょう。できて当然のことをしない人のほうが多いのです。だからこそ、この基本を徹底できる人は強いのです。それだけで大きな違いを見せつけることができるはずです。
インターンは勤務経験にはならない
そしてもう1つ。インターンシップ制度に参加した人もいるかもしれません。
インターンシップ制度とは、企業側が学生に就業体験の場と機会を提供して、そこに学生が参加する制度です。5日間から長くて数年くらいの期間がありますが、インターンを経験したからといって、会社で働いたことがあるような感覚になってはいけません。
会社としても、学生に機密情報を見せるわけにいかないので、重要な仕事などは任せられません。ですから、仕事の内容についてざっくりと伝えたり、社員がどんな気持ちで働いているかをフワッと理解してもらうようなプログラムを用意していたりします。つまり、ほとんどが実際の"仕事"ではないのです。
インターンの目的はマッチングです。会社の雰囲気を少しでも知ってもらい、入社してから「思っていたのと違う!」とギャップが生じないようにしなければいけません。
入社してすぐに辞められてしまうと、会社側としては採用活動に時間とお金をかけていますから、大きな損失になってしまうのです。
会社で社員がやるべきことは、成果を出すことです。
会社は継続的に事業をして、存在していかなければいけません。そのためにも、利益を出し続けなければ潰れてしまいます。しかし、インターン生にそこまでの成果は求めません。目的はマッチングだからです。
インターンに参加することと、実際に働くのでは目的が違うわけですから、そこで働いた気にならないようにしなければいけないのです。
もうおわかりかと思いますが、会社で働く社員は、利益を出すことを何よりも求められています。利益を出す社員を育成するために、会社は研修やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング。実際の業務のなかで上司や先輩社員から教育を受けること)をしています。
ですから、会社に利益をもたらさない社員は、言ってしまえば"余剰コスト"なのです。
利益を出して自分の仕事を全うしなければいけません。
会社が新入社員に期待することは何か
会社に入ってすぐは年齢も一番下で、仕事の内容も何もわからず、「まだ何も力を発揮できない」と思うかもしれません。
しかし、新入社員だからこその武器があります。それは単純に元気であるということです。
皮肉な話ですが、社会に出ると多くの人が忙殺されて疲れてしまいます。新入社員は、スポーツの試合でいえば、途中から投入された交代選手のようにフレッシュです。ですから、まずは元気よく挨拶をしたり、礼儀正しくお辞儀をしたりするだけで良いのです。
「それだけ?」「いくらなんでも単純すぎる」と思うかもしれませんが、挨拶は非常に重要です。元気な挨拶が、社内を活気づけることにつながります。会社組織にフレッシュな空気が入ってくること、それ自体に意味があるのです。
会社としても、新入社員にいきなり「案件を獲得してほしい」などと無茶な期待はしておらず、とりあえずは職場が明るくなることを期待している人が多いものです。
しかし、最近は"挨拶をしない新入社員が多い"と嘆く上司が増えていると聞きます。なぜ挨拶ができないのでしょうか。
知人の若手社員などに話を聞くと「挨拶をしたところで、仕事ができるようになるわけじゃないですよね」という冷めた意見をいくつか耳にしました。今の若者っぽい意見だとも思いますが、これは大きな間違いです。
挨拶は、今すぐに結果を出すことができない新人だからこそ、せめてやるべきことなのです。必ずしも仕事に直結するわけではありませんが、同僚と信頼関係を築こうと考えたら、当然のように必要なことなのです。
誰にでも挨拶をしよう
ためしに、挨拶がどう仕事に影響するか見てみましょう。
実際に聞いたことがある話ですが、ある企業でエース部署と呼ばれる部署がありました。
そこにはベテランの優秀な営業マンたちが所属しており、成果を挙げ続けて、会社を引っ張っていくような存在の部署でした。ある時、その部署に引き抜かれた新人がいました。
その新人はまだ何も成果を挙げていません。そこで引き抜きをした部署のリーダーに「なぜあの新人を引き抜いたのですか?」と聞くと、「会社のロビーでいつも元気よく挨拶をしてくれるから」と答えが返ってきたのです。
ここも1つのポイントですが、挨拶は同僚や直属の上司だけではなく、誰にでも挨拶をするということが重要です。自分が所属している部署の部長や課長だけでなく、ほかの上長にも、同僚にも、清掃員や警備員にも挨拶をしましょう。
たまに、自分の上司にはヘコヘコするけれど、利害関係のない人にはまったく見向きもしないという人がいますが、見る人は見ているものです。
前に、社長が覆面清掃員になって自分の会社に潜入するというドキュメント番組を見たことがあります。その番組でも、優秀な社員は清掃員にもしっかり挨拶をし、誰に対しても同じように接していることがわかりました。
子どもの頃は、誰に対しても元気よく挨拶をしていたはずです。そういった姿勢を忘れることなく、オフィス内の誰にでも同じように元気よく挨拶をしていきましょう。
なかには「挨拶をしたけど無視された。怖くてもうしたくない」という人もいました。しかし、たとえ無視されたとしても挨拶をし続けるのが道理なのです。
また、現代では「WEB上で自分のことを発信することが大切だ」とよくいわれます。SNSが発達していますので、SNS上で面白いことをやろうとしたり、フォロワーを稼ごうと尖ったことをやる人もいるでしょう。
もちろん、個の時代なのでSNSを活用することは大切です。しかし、社会人として一番大切な"発信"は、まず目の前の人にしっかりと挨拶ができることです。
どんなにフォロワーがいるインフルエンサーであろうが、どんなに実力がある芸能人であろうが、この点を必ず押さえていなければ成功できません。
まずは挨拶やお辞儀など、当たり前のことをできるようになりましょう。つまり、ここで重要なのは、当たり前のことを当然のようにするということです。
こういったやって当たり前のことすらできなくなっている人が多い組織では、当たり前のことができるだけでほかの社員よりも高い評価を受けられるともいえるでしょう。