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成果主義のフリーランスは「休むことへの罪悪感」をどう取り除けるのか?

曽田照子(ライター)

2025年07月15日 公開

成果主義のフリーランスは「休むことへの罪悪感」をどう取り除けるのか?

自由なイメージの強いフリーランスという働き方。自分の裁量で仕事を増やしたり減らしたりできる一方、休み方も自分次第。先々への不安から、つい仕事を詰め込みすぎて休み方に悩む人も多いかもしれません。

フリーランスでライターをする曽田照子さんもその一人だったそう。そんな曽田さんは著書『フリーランスの休みかた 仕事が減る不安から解放される41のヒント』にて、フリーランスが「どう休むか」を軸に、より健康的で充実した働きかたを模索するヒントを紹介しています。同書より、フリーランスが休めない原因について紹介します。

※本稿は、曽田照子著『フリーランスの休みかた 仕事が減る不安から解放される41のヒント』(インプレス)より内容を一部抜粋・編集したものです

 

成果主義になると休めない

私は以前、仕事の進行具合を元に自分の働きぶりを評価していました。たとえば「今日はコラムを2本書いた」「○ページ進んだ」「1000字しか書けなかった......」など、成果で評価する考えかたです。

それもひとつのやりかただと思います。でも、実はこの成果で評価する考えかたはちょっと危険なんです。というのも「成果」と「疲労」は相関していません。それどころか、ぶっちゃけ、疲れる・大変な仕事ほど時間単位の収入は低い(コスパが悪い)と私は感じています。

同じ人でも、その日のコンディションによって、あるいは仕事の内容によって、どのくらいの成果を出せるかは変わってきます。たとえば多くのライターは得意分野の原稿はスイスイ進みますが、あまり詳しくない分野だと時間がかかるでしょう。得意分野でも法令が変わるなどの変化があれば、正確を期するために調べながら書くため効率がダウンします。

ひとつひとつの仕事が違うのに、同じ物差しで測ろうとするのは無理があります。にもかかわらずフリーランス、特に締め切りに合わせて成果物を納品するタイプのライターやデザイナーなどは、仕事が成果物で評価されるため、自分自身に対しても成果主義になりがちです。

成果主義に偏ってしまうと、「どんなに疲れていても、どんなに努力していても、成果がなければサボっているのと同じ」と思いこんでしまいます。

普段以上の成果を出すために、少し背伸びをして、自分を奮い立たせることが必要なこともあります。締め切りもあり、責任を持って仕事をするのがプロですから。そしてそれがうまくいったときはすごく充実感があります。

でも、いつもいつもその価値観で進んでいると疲れます。自分で自分を叱咤してセルフブラック一直線です。

成果はあまり上がらなかったけれども、一定の時間しっかり働いた自分や、成果が期待できなさそうだからと思い切って休みに切り換えた自分、そんな自分ももっと認めてあげていいんじゃないでしょうか。

がむしゃらな日も、マイペースな日も、両方あっていいのです。

 

休みは「停止」ではなく「投資」

30分昼寝をしたら作業効率がアップしたり、気晴らしに外に出て散歩をしたらいいアイデアが湧いてきたりと、休んだことで仕事のパフォーマンスが上がる経験を、誰もが一度はしているでしょう。

きちんと休みをとれば、仕事はもちろん、日々の生活全体に良い影響を与えます。フリーランスは自分自身が資本です。同じ自分でも「ちゃんと休んでコンディション万全な自分」と「慢性的な疲れを引きずっている自分」とどっちがいいのか、という話です。

ここで、改めて休むことのメリットを見てみましょう。ほとんどの方にとって「そんなの知ってるよ」という常識レベルのことばかりですが、あえて復習することで「休むこと」へのモチベーションをアップさせよう、というのがこの項目のねらいです。

●休むことのメリット

・リフレッシュできる
休みをとることで心も体もリフレッシュされ、集中力や判断力が回復します。同じ作業でも休みをとった後は短時間で高い質を保てるようになるため、効率よくすすめられます。

気分が変わると、物事を柔軟に考えられるようになり、問題解決力も向上します。

・ストレスが軽くなる
仕事で溜まったストレスが軽減され、余裕を持って仕事に向き合えるようになります。

・モチベーションが回復する
休んで疲れがとれると「やってみよう」という意欲が自然に高まります。仕事に対するモチベーションが再び湧き上がるのもメリットです。

・創造力がアップする
散歩や軽い運動などをしているときに、仕事の新しいアイデアがひらめいたという経験はありませんか?休むことで脳がリセットされ、創造力や発想力が活性化します。

・健康維持にも役立つ
適度に休むことで体力や免疫力が回復します。しっかり休んで体調を整えることで、長期的に安定して仕事を続けられる土台ができ、毎日の仕事にも張りが出てきます。

「休み」というと物事がストップしている期間、というイメージがあるかもしれません。しかしフリーランスにとって、休みはただの「休息」ではありません。自分自身が仕事の資本であるからこそ、心と体のメンテナンスが不可欠で、休みはそのための大切な時間です。

休むことで心身をリフレッシュし、次の挑戦に向けた準備を整えるのです。そういった意味では、フリーランスにとっての休みは、単なる「停止」ではなく、現状を維持しさらに次のステップに進むための「投資」といえるのです。

 

休むことへの罪悪感とどう付き合うか

ここでちょっと「心」の話をしましょう。

会社員でもそうですが、特にフリーランスには休むことに対して後ろめたい気持ち、「罪悪感」を覚える人が少なくありません。

頭では「休んだほうが効率が良い」「体を壊さないために休むべきだ」と分かっていても、限界までがんばり続けてしまうことがあります。ワーカーホリック、仕事中毒とも呼ばれる状態で、たとえ、ちょっと休んだところで、お金や仕事を失う恐怖がなくても「休む」という選択ができなくなるのです。

休むことは決して悪いことではありません。それどころか、良いことのはずです。それなのに、いざ休んでいると「何か悪いことをしているのではないか」と後ろめたさを感じてしまう......。もしかすると、その罪悪感の原因は「休むこと=悪いこと」というビリーフ(思い込み)かもしれません。

それは、子どもの頃、「サボってはいけない」と厳しくしつけられたり、学生時代に「がんばらないと落ちこぼれてしまう」と恐怖に駆られたのかもしれません。若い頃にサボっている同僚や上司を見て「自分は絶対ああはなるまい」と決意したことが影響しているのかもしれません。もしかしたら日本人の「勤勉は美徳」という空気を知らず知らずに読んでいるのかもしれません。

いずれにしても、休むことへの罪悪感は、心が柔軟で吸収力が高い時期に、無意識のうちにできた価値観ではないかと思います。どうすれば「休むことへの罪悪感」を覚えずにいられるのかは分かりませんが、ひとつ試してみてほしいことがあります。

それは、「休むのも仕事のうち」と考えることです。休むことで効率が上がり、結果的に良い仕事ができます。つまり休んでいる時間も「仕事の時間」ととらえれば、罪悪感が少しは軽くなるかもしれません。

罪悪感に限らず、感情は無理に消そうとしてもなかなか消えるものではありません。むしろ、意識すればするほど強まることもあります。だから、私はその罪悪感を無理に消し去ろうとしなくてもいいと思います。

罪悪感もあなたという存在の大切な一部ですから、無視して「なかったこと」にしようとすると、後で反動がきてしまうでしょう。

それよりまるごと認めて肯定してあげるほうが、建設的です。たとえば、「休むことに罪悪感を抱くほど勤勉で働き者の私って偉い」「ここまでがんばってきた自分は素晴らしい」と、自分をほめてみてください。

罪悪感を覚える自分を責めるのではなく、「そう感じてしまうところも含めて自分は素敵だ」と肯定してあげるのです。「こんなにがんばれる自分、すごいな」と思えてきて、心が少し楽になるかもしれません。

最初は照れくさかったり「白々しいな」と思ってしまったりもしますが、ぜひ続けてみてください。自分に優しい言葉をかけ続けるうちに、少しずつ良いほうに変わってきます。

自分をいたわることが、心の底からリラックスして休むための第一歩です。

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