休めない職場の空気はどうすれば? 精神科医が答える「デキる人の正しい休息」
2021年12月10日 公開 2024年12月16日 更新
「休むことも大事」という価値観が浸透してきたように思える昨今だが、まだまだ休息や休暇がとりづらい職場もあるという。休みをとると「ずるい」と批判されて、うしろめたさを感じるという人も…。
精神科医のTomy先生に「休み」に関するお悩みについてアドバイスをいただいた。(取材・構成:辻由美子)
※本稿は、『THE21』2021年1月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。
“週末の休息”はどうして必要?
Q.仕事が生きがい。ずっと仕事をしていても平気です。休みはそんなに大事ですか?
A.休まないと、仕事のパフォーマンスが下がるわよ!
ワーカホリックの人は死ぬまで働いちゃう。それって本末転倒じゃない? 休まないと脳が限界を超えてしまって、機能低下を起こすの。メンタルはもちろん、肉体的にも様々な病態が現れるわよ。
パフォーマンスも低下するわ。人間は1つのことにせいぜい数十分しか集中していられないの。それ以上続けても、パフォーマンスは落ちるし、モチベーションも下がるわ。
人間は一度休んでリフレッシュして、また課題に向けてモチベーションを高めるという心理サイクルを持っているの。だらだら長く続けても、パフォーマンスもモチベーションも下がるから、いいことは1つもないわね。
それにアテクシ思うんだけど、休まないで目いっぱい仕事を詰め込むと、かえって失敗するリスクが高まるんじゃない? だってトラブルが起きたとき対処する余力がないもの。本当に仕事がデキる人はちゃんと余白を残しておくものよ。
というわけで、休みはぜったい必要。ずっとエンジンをかけ続ける人にブレーキをかけるために休みが存在するわけ。
じゃあ、どうやって休みをとるかだけど、まず仕事中の休憩と週末の休息を分けて考えたほうがいいわね。仕事中の休憩はいったん作業を中断して、身体を休めるためのもの。集中できるのが数十分だとしたら、1時間に1回くらいは目を閉じたり、コーヒーを飲んだり、トイレに行ったり、席で背伸びをするだけでも身体は休まるわ。
スマホを見るのもいいけど、身体、特に脳を休めるという意味で言うと、視覚から入る情報をできるだけ遮断するほうが脳にはいいの。入ってくる情報が多いと、頭を使うので、交感神経が高まって身体が覚醒してしまう。夜寝る前にスマホを見ないほうがいいと言われているのは、そのためね。
一方、土日など週末の休息は気晴らしのためにあるの。仕事のことはきれいさっぱり忘れて、気持ちを切り換える。そうすることで月曜日からまた仕事に向かう促進力をつけるのね。
もう1つ、週末の休息が大切なのは、脳の報酬系を刺激するからなの。休みの日に遊びに行けるから平日は頑張れる。要するに目の前にぶら下げたニンジンの役目ね。週末の休息は身体を休めるというよりは、気分転換の意味合いが大きいので、仕事中の休憩と週末の休息、意識してうまく使い分けるといいわね。
職場の“休憩を取りづらい空気感”への対処法
Q.職場でたばこ休憩をとる人を「ずるい」と言う人がいます。5分程度の休憩に目くじらを立てるギスギスした雰囲気を変えたいです。
A.平等に使える自由な休憩時間を設けたらどう?
休憩がとりづらいのは、いわゆる"同調圧力"というやつかしら。同調圧力をかけるほうは、自分が損をしたくないという心理が働いて、割をくうのが嫌だから、たった5分の休憩に目くじらを立ててしまうのだけれど、よく考えればそれくらい休んだからといって仕事に大差ないのよねえ。
もし自分だけ休憩をとるのに周りの目が気になるのなら、対処法は2つあるわ。1つは"浮いたキャラ"になること。"同調圧力"に屈しないで、周りから浮くことを恐れないってことね。そもそも職場は仕事をしに来る場所であって、みんなで仲良く同調する必要はないの。"仲良しクラブ"じゃないんだから、仕事さえちゃんとやっていれば、職場の人と友達にならなくったっていいの!
万一、自分が同調しないことで孤立させられて、業務に支障をきたすようなら、「これこれの理由で業務が遂行できません」と上に直訴すればいいわね。会社は社員に給与分働いてもらいたいんだから、何らかの対処をするはずだと思う。
もう1つの対処法は、自分の負担にならない程度に"同調圧力"に従うこと。ただし、従うのがストレスになるならやらなくていい。その場合、周りから孤立するのが気になることもあるので、職場以外のプライベートの人間関係を充実させておくといいわよ。人間関係が職場にしかないと追い詰められる。リスクヘッジの人間関係があるといいわね。
職場で浮いた人間になるほうが楽か、"同調圧力"に従って自分を多少抑制するほうが楽か、どちらが自分にとってストレスがより少ないかで決めたらいいわね。
ただ、根本的な問題として、たばこ休憩でギスギスする職場なら、吸う人だけが自由に休憩するのではなくて、1時間ごとに5分とか全員平等に休憩時間を設けて、その時間はコーヒーを飲むのも自由、ちょっと身体を動かすのも自由、ということにしておけばいいんじゃない? そうすれば「ずるい」と言う人たちの不満もなくなるんじゃないかしら。