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公認心理師に教わる、避けられないストレスから「自分を上手に助ける」3ステップ
2025年07月28日 公開
自分に厳しくするのをやめて、もっといたわってみませんか?公認心理師の伊藤絵美さんが、自分で自分を上手に助ける"セルフケア"の方法を教えてくれました。
※本稿は、月刊誌『PHP』2024年8月号より内容を抜粋・編集したものです
「ストレス反応」が起きるのは当然のこと
「心」がある限り、人はストレスと無縁ではいられません。ストレスが心や体にさまざまに波及する「ストレス反応」が起きて、くよくよしてしまうのは、あって当然のことなのです。むしろストレスを感じない状態のほうが心配です。
私たちには心に受けたダメージから回復する力も備わっていて、対処法もいろいろあります。ですから、感情を無理に遮断し、ストレスを感じないようにするのはやめましょう。
とはいえ、ストレスで心が折れるほどのダメージを受けるのは避けたいもの。私は「人間にストレスはつきもの」という前提に立ったうえで、日ごろからこまめに心のセルフケアをすることをおすすめしています。
セルフケアとは「自分で自分を上手に助ける」こと。今は心の調子がよいという人も、その状態を維持
するためにセルフケアを習慣づけておきましょう。
セルフケアのための3ステップ
セルフケアは次の3つのステップで行なうのがおすすめです。
①自分の受けているストレスに気づく
自分が今、どれくらいストレスを感じているかを把握することから始めましょう。
その方法が、「心のモニタリング」です。「まったく元気じゃない」が0点、「元気」を100点として、「今日の元気度」が何点だったか点数をつけることを続けてみてください。
あわせて「その点数をつけた理由は何か」「日によって点数が違う理由は何か」を自分に問いかけてみましょう。
日々の点数の違いは、お天気が影響しているのか、体調なのか、あるいは具体的なストレスの原因があるのかもしれません。そういった日々の違いに気を配ることで、ストレス要因に気づけるようになります。
②ストレスを外在化する
自分がストレスを感じていることに気づけたら、次のステップとして、「ストレスの外在化」を行ないましょう。
心の内側のモヤモヤを外に出すことで自分を客観視する方法です。誰かに話すのもいいですが、おすすめは書き出してみること。書き出すことでモヤモヤから距離を置くことができ、気持ちが落ち着きます。
専用のノートを作って書き出し、あとで読み返すと、「こんなことでクヨクヨしていたのか」と元気になった自分を確認することもできるようになります。
③体に働きかける
3つ目のステップとして、体を使うセルフケアもシンプルながら有効です。ストレスを感じたとき、両腕をそっと抱えるようにしてやさしく二の腕をタッピングしてみましょう。ほかにも、自分で自分を抱きしめるセルフハグ、深呼吸などもおすすめ。ストールや毛布に包まれてみるのもいいでしょう。
いろいろ試してみて、自分が安らげるケアを見つけてください。
「思い直す」とうまくいく
セルフケアにおいて意識していただきたい4つの具体的な考え方やポイントもあわせてご紹介します。
①抱いた感情をジャッジしない
感情に善し悪しはありません。けれど私たちは「いつまでも怒っていて情けない」と怒りを否定するなど、抱いた感情をジャッジしてしまいがち。
そんなときは、ジャッジしてしまった自分を受け入れ、「ああ、私は怒っているなあ」と思うだけにしてみましょう。ジャッジを手放せるようになれば感情に振り回されなくなります。
②自分にやさしい言葉をかける
最近、「セルフ・コンパッション」という手法に注目が集まっています。大切な人を思いやり、いたわる言葉を自分自身にも向けるというもの。
たとえば、大切な友人が「あの人にきらわれているのかも」と悲しんでいたら、みなさんは「決めつけるのは早いんじゃない? そうだったとしても、私はあなたが大好きだよ。大丈夫 、自信をもって」と心を込めて元気づけますよね。
でも、人にはやさしいのに自分にだけはとても厳しくしてしまうという方は非常に多いもの。「自分にやさしくするってどうすればいいの?」ととまどう人は、大切な友人や家族を思い浮かべ、その家族や友人を元気づけるようなつもりで、自分にもやさしい言葉をかけてあげてください。
③認知と行動を変える
私が行なっているカウンセリングは認知行動療法にもとづいています。認知とは考えやイメージ、行動は実際になんらかの動きを起こすこと。怒りや悲しみなどの感情は勝手に表れては消えていくものですから、対処のしようがありません。けれど、認知すなわち考えやイメージは「思い直す」ことができ、行動も変えられます。認知と行動を工夫することでストレス反応を和らげるのが、認知行動療法の考え方です。
たとえば「知人にばったり会い、手を振ったけれど無視された」ということがあったとします。自分としては「無視された」と認知したわけですが、それが事実かどうかはわかりません。「無視された」という認知のままでは心がつらく、相手との関係にも悪影響を及ぼします。
でも、「考えごとをしていて気づかなかったのかな」と思い直し、次に会うときも笑顔で手を振れば、相手も笑顔で応じてくれるかもしれません。そう考えると、「ああ、無視されたというのは思い過ごしだった」と考えられ、もやもやは解消されます。反射的に浮かぶネガティブな認知を「思い直す」ことをぜひ習慣づけてください。
④他人とつながる
冒頭でセルフケアを「自分で自分を上手に助ける」こと、とお伝えしました。しかしこれはなにも「全部自分でなんとかする」という意味ではありません。むしろ逆で、人に頼ることは究極のセルフケアです。つらいときこそ、ひとりぼっちにならないようにしたいもの。身近な家族や友人でもいいし、ご無沙汰している人に連絡を取ってみるのもいいですね。
気軽に連絡できる人がいない場合は、亡くなった人に話を聞いてもらうイメージもおすすめ。かわいがってくれた祖父母や大好きだった先生を思い浮かべ、語りかけてみてください。
ちなみに私はお猿さんのぬいぐるみによく話しかけています。実はこのぬいぐるみを使ったセルフケアは、クライアントさんたちの間でも大人気です。
私は心理カウンセラーとして多くのクライアントさんに出会ってきました。50代から60代にかけては特に、自分の体の変化に加えて親の介護や子供の自立、職場での立場の変化など激動の時期。私も精神的につらい時期を数年間過ごしました。つらかったけれど、だからこそ考えられたこともあります。
今回ご紹介したセルフケアはどれも地味に感じるかもしれません。けれど繰り返したり練習したりするうちに、上手に自分を助けられるようになります。ゆるやかに人とつながりながら、自分をやさしく愛する人生を送ってくださいね。
【伊藤絵美(いとう・えみ)】
洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長。慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。同大学大学院社会学研究科社会学専攻博士課程修了、博士(社会学)。専門は臨床心理学、ストレス心理学、認知行動療法、スキーマ療法。著書に『セルフケアの道具箱』(晶文社)などがある。



