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生き方

ネガティブな感情を長引かせない 「脳に安心感を与える」今日からのセルフケア5選

鈴木祐(サイエンスジャーナリスト)

2026年09月15日 公開

ネガティブな感情を長引かせない 「脳に安心感を与える」今日からのセルフケア5選

仕事のプレッシャーや人間関係のトラブル、環境の変化――日常生活の中で感じるストレスは人それぞれですが、少しでも苦しみを軽減させる方法を知っていると気持ちが楽になるでしょう。本稿では、鈴木祐さんの著書『最高の状態 無』より、心理療法や認知行動療法などで使われている「簡単に実践可能なセルフケア」を紹介します。

※本稿は、鈴木祐著『最高の状態 無』(クロスメディア・パブリッシング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

セッティングを整える

セッティング(物理的、社会的、文化的な環境の状態=周囲の環境)を整える具体的な手法は、「避難所を作る」「グラウンディング」の2つです。まずは「避難所を作る」から見ていきましょう。

【避難所を作る】

セッティングの調整に取り組むに当たっては、自分の部屋の改善が第一歩です。室内の整頓、観葉植物の導入、好きな家具の導入など、あなたが快適に思えるような部屋作りは、いずれも脳に安心感を与える働きを持ちます。

ただし、どんなに自分の部屋を整えても、自分のコントロールが及ばない職場や学校などはどうにもなりません。そんなケースに備えて、ここでは脳内に自分だけの「避難所」を作る手法を紹介します。

あなたが心から安心感を抱ける環境を頭の中に用意し、必要に応じて逃げ込めるようにしておくのです。

・セーフプレイスワーク

セーフプレイスワークは心理療法で使われる技法で、不安や神経症に悩む人によく使われます。具体的なやり方を見てみましょう。

①落ち着ける環境でゆったりと座って目を閉じる。

②「私にとって心から安心できる場所や状況はどのようなものだろう?」と考え、何らかのイメージが頭に浮かぶのを待つ。そのイメージは、あなたが以前に行ったことのある場所かもしれない。いつか訪れたいと夢見る場所かもしれない。映画で見かけた場所かもしれない。

③思い浮かべた場所を観察し、さらに細かい部分を意識する。もし建物があるなら、どのような形でどのような素材が使われているのか?もし花畑のようなイメージを浮かべたなら、どのような色彩が広がっているのか?他に何か気づくことはあるか?できるだけ細かく想像するほど、安心感は上がりやすくなる。

④あなたのイメージの中に発生している音、または静寂に意識を向ける。遠くでどんな音が聞こえるか?近くの音は?耳をすますと聞こえてくる音は?こちらもできるだけ細かくイメージする。

⑤肌の感覚に焦点を当てる。足裏に感じる地面の硬さ。周囲の温度・湿度。空気の動き。あなたが触れることができるすべてをクリアに思い描いていく。

⑥最後に、思い描いたイメージに点数をつける。「全く安心感がない」なら0点で、「心からの安心感がある」なら100点。最終的に80点以上のイメージが生まれるまで、何度か同じワークを続ける。

この技法で重要なのは、イメージを積極的に思い描いてはいけない点です。「これは南国のイメージだから、こんな植物が生えているだろう」などと理屈で想像を広げるのではなく、「自分にとって安全な場所とは?」という疑問に対して、「セーフプレイス」の情景が自然と内側にわき上がるのを待ちましょう。

もしここで良いイメージが出てこなくても問題ありません。何度も繰り返すたびに、少しずつ適切な「セーフプレイス」が浮かぶようになります。完成した「セーフプレイス」は、ぜひ日常のストレスに対して使ってください。職場や学校で嫌な感情が昂ったとき、寝る前に急な不安に襲われたときなどは、静かに目を閉じて脳内に「セーフプレイス」を立ち上げ、しばらくイメージの中に留まりましょう。

私たちが体験する世界は、そもそも大半が脳内イメージで作られています。そのため、私たちの脳は現実のデータと想像のデータをうまく区別できず、頭の中で組み立てた映像もリアルなものとして取り扱います。

 

脳を安心させる「ソーシャルサポートワーク」

鈴木祐著『最高の状態 無』

こちらも認知行動療法でおなじみのテクニックです。他者とのつながりの感覚を増やして、脳に安心感を与えるために使います。人類は常にグループの中で生きてきたため、社会からの孤立には慢性的なストレスを感じます。逆に、信頼できる他者さえいれば、大きな安心感を覚えるように進化しました。

ブリガム・ヤング大学など148の先行研究をまとめた調査では、孤独感はタバコや運動不足よりも身体に悪いと報告されています。そこで「ソーシャルサポートワーク」では、改めて社会との関係性を確かめるエクササイズを行います。

①ネットワークリストの作成

まずは自分の社会的ネットワークに存在する人を、思いつくだけリストアップします。次の例を参考にしてください。

・親しい人:親しい友人、家族、同僚など

・顔見知りの人:たまに挨拶する隣人、いつものコンビニの店員、よくすれ違う人など

・あこがれの人:自分が理想とする人、尊敬する過去の偉人、好きな映画や本の架空のキャラなど

・助けになりそうな人:主治医、かつての恩師、法律相談所、ネットのコミュニティなど

リストができたら、各人物について「私はこの人にどれぐらい親密さを感じるだろうか?」と考え、親しみを感じる人やキャラクターを最低でも15人ほど図のようにサークルに書き込みます。親しみが大きい人ほど円の内側にドットを打ちましょう。

②ソーシャルサポート分析

記入を終えたサークルを見ながら、次の質問について考えてみてください。

・この中でどの人物ともっと時間を過ごしたいだろうか?

・親密な人と接触する時間を増やすために、何ができるか?

・いまの悩みや困りごとを相談できる人はいるだろうか?もしいない場合は、専門の組織や機関、自助グループに相談はできないだろうか?

「ソーシャルサポートワーク」は以上です。書いた紙は常に持ち歩き、ネガティブな感情がわいたときに見返してください。

この作業を行うと、たいていの人は「私は社会の中で生きている」「いざというときに頼れる存在がいる」という事実に改めて気づき、直後からストレス反応が低下します。これからの人生で新たなソーシャルサポートが現れたら、随時リストに加えていくと良いでしょう。

 

苦しみの減少を試みる「グラウンディング」

鈴木祐著『最高の状態 無』

「グラウンディング」は心理療法の世界で使われるテクニックで、"現在"に心を引き戻すノウハウの総称です。

私たちが苦しみをこじらせるのは、脳が「自己」を起点に未来または過去へとイメージを広げるせいで、ネガティブな感情が増すのが大きな原因。人類の悩みが尽きないのは、あなたの意識が"現在"からそれてしまうからです。

そこで「グラウンディング」では、未来と過去に向かった意識を"現在"に引き戻すことで、苦しみの減少を試みます。"現在"は未来の不安と過去の失敗が存在しない安全地帯であり、目の前の世界から振り落とされなければ、それ以上の災いは起きようがありません。いわば、"現在"を結界に使うのです。

それでは、代表的な「グラウンディング」の手法を紹介しましょう。自分の中にネガティブな感覚がわいてきたら、次のテクニックをいくつか試してください。

・自己解説法

自分の名前、年齢、いまいる場所、いましていること、次に何をするつもりかを口に出して説明する手法です。「私の名前は◯◯、40歳。いまはオフィスにいて、プレゼンの資料を作っている。このあとは、いつものカフェでランチを食べて......」といった具合に、いまの状況を淡々と実況しましょう。すぐに意識が現在に向き、数分もすれば気持ちが楽になるはずです。

・54321法

五感を駆使して行うグラウンディングです。急な不安に襲われたり気持ちがふさいだりしてしまったら、次のステップで"現在"に復帰しましょう。

①いま目に見えるものを5つピックアップする。「カーペットのシミの色」や「壁の傷」など、まわりを見渡して、普段は気づかないものを選ぶ。

②触覚で感じられるものを4つピックアップする。服の肌触り、テーブルの表面の滑らかさなどに意識を向ける。

③耳で聞くことができるものを3つピックアップする。外を走る車のエンジン音、鳥のさえずりなど、普段は気づかないものを選ぶ。

④鼻で嗅ぐことができるものを2つピックアップする。室内の香り、調理中の食べ物の匂いなどを意識的に味わう。

⑤最後に、いま味わうことができるものを1つピックアップする。飲み物を口にしたり、ガムを噛んでみたりと、舌の上に起きる感覚を味わってみる。

途中で意識がそれても、慌てず五感に戻る作業を繰り返しましょう。意識を戻す度に脳は安心感を覚え、ストレス反応が下がります。

・暗算法

頭の中だけで100から7ずつ引き算を行い、0になるまで繰り返します。できるだけスピーディに計算を続けてください。暗算は脳の負荷が高い行為なので、何度も続けるうちに頭の中が計算に占有され、自然と未来や過去から意識をそらしやすくなります。

以上のテクニックは、何か嫌なことがあったときの応急処置としても使えますし、感情コントロールの手法としても効果的です。1日10〜15分を目安に行ってください。

プロフィール

鈴木祐(すずき・ゆう)

サイエンスジャーナリスト

1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門家へのインタビューを重ねながら、へルスケア、生産性向上をテーマに書籍や雑誌で執筆。自身のブログ「パレオな男」で心理、健康、化学に関する最新の知見を紹介し続け、月間250万PVを達成。著書に『ヤバい集中力』他多数。

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