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結婚が心身に悪影響を及ぼすことも? 専門家が教える「ストレスの正しい知識」

舟木彩乃(心理学者)

2025年10月30日 公開

結婚が心身に悪影響を及ぼすことも? 専門家が教える「ストレスの正しい知識」

誰でも日々、少なからずストレスを抱えて生きています。しかし、その正体を正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。メンタルヘルスの専門家・舟木彩乃さんは、結婚のようなポジティブな出来事でさえストレスの要因になると指摘します。本稿では、書籍『あなたの職場を憂鬱にする人たち』から、ストレスを正しく理解するための知識を紹介します。

※本稿は、舟木彩乃著『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(集英社インターナショナル)より内容を一部抜粋・編集したものです

 

ストレスを正しく理解する

どのような職場環境であっても大なり小なり「ストレス」はあるはずです。ストレスという言葉を聞いたことがないという方は皆無だと思いますが、「では、ストレスの定義は何ですか」と聞かれた場合、説明できる人はかなり少ないと思います。心理学の知識を使うには、ストレスについて正しく理解することが重要になります。まずは、職場で皆さんの役に立つように、心理学に基づいてストレスをわかりやすく定義したいと思います。

ストレスとは何かというのはなかなか難解な面がありますが、ひと言でいえば"刺激"(日常の中で起きるさまざまな変化)です。産業心理学では、人がストレスを感じる原因を"ストレッサー"と呼んでいますが、このストレッサーには実にさまざまなものがあります。

皆さんの職場を思い出してみてください。職場内の人間関係、自分の役割の曖昧さ、仕事の量や質などの他に、部屋が暗いとか暑い、寒い、狭いなど、皆さんの働きやすさを阻害するものが"ストレッサー"です。

ストレッサーによって、"ストレス反応"が出ます。ストレス反応とは、精神面(例:イライラする、うつ状態など)や身体面(例:胃痛などの身体的愁訴)、行動面(例:欠勤が多くなるなど)などに出る反応のことです。

自分を取り巻く環境(例:家族や上司などから応援をもらえる)や個人的要因(例:考え方やストレス対処力の向上)を変えていくことで、ストレス反応を緩衝することが可能となります。

逆に、環境や個人的要因などを変えることができない場合は、ストレス反応が固着してしまったり、やがてはうつ病などを発症したりする危険があります。

職業性ストレスモデル

ストレッサーからストレスを受けたとき、ストレス反応や疾病に至る流れを示しているのが、職業性ストレスモデルです。職業性ストレスモデルは、ストレスに影響を与える主要な要素を網羅したモデルといわれ、米国立労働安全衛生研究所が作成したもの(表1は、東京都労働相談情報センターが作成したものを一部改変)です。

職業性ストレスモデルは、どのような職場のストレッサー(職場環境、人間関係、仕事のコントロールなど)が、どのような急性のストレス反応(心理的・生理的反応や行動化など)を引き起こし、疾病に進行してしまうかという流れを横軸で表しています。

縦軸は、上から、ストレス反応に影響を与える要因として、個人的要因(年齢や雇用形態、気質・性格など)、
下から、仕事以外の要因(家族からの要求)と緩衝要因(上司、同僚、家族などからの社会的支援)を表したものです。

うつ病や適応障害などの心の病は、ストレスと深く関連していることは言うまでもありません。ストレスとは、日常の中で起こるさまざまな変化、つまり刺激であることは先述した通りです。人は、大きな苦悩と向き合ったり、つらい状態が続いたりしたとき、自分だけでそれに対処できないと脳が判断すると、過剰な不安や緊張、疲労感に襲われ、心の病になるリスクが高くなるのです。

 

ポジティブな変化もストレスになる

ライフイベントストレス表

なお、「ストレス」と聞くと、ネガティブな変化から受ける刺激ばかりをイメージしてしまいがちだと思います。しかし、実はポジティブな変化から受けるものも"刺激"であり、ストレスであるといえます。

これまでストレスの数値化が試みられた例はいくつかありますが、そのひとつに、アメリカの精神科医トーマス・ホームズらが作成した「ライフイベント・ストレス表」(表2)というものがあります。この表は、(一般的に)ストレッサーとなる人生のさまざまな出来事をリスト化して点数をつけています。

ライフイベント・ストレス表を見ると、結婚や妊娠といった一見喜ばしい出来事であってもストレスになりうることがわかります。なぜかといえば、結婚や出産、就職などのイベントは、喜ばしい一方で、環境が大きく変化してしまうからです。

ポジティブな変化でも、その変化(出来事)に適応しようとすることで、人は相当量のエネルギーを消費します。それが心身に何らかの影響を及ぼし、イライラや不定愁訴、ときにはアルコール依存などのストレス反応につながることがあるのです。

特に、ミドル世代では、昇進や転職などの変化に加え、プライベートでも親の介護や自身の健康問題、近親者との死別など、ネガティブな変化も増える傾向にあります。ストレッサーが増加してメンタルヘルスが悪化しやすい年代でもあり、適切に対処する必要があるといえるでしょう。

 

プロフィール

舟木彩乃(ふなき・あやの)

心理学者

心理学者。博士(ヒューマン・ケア科学/筑波大学大学院博士課程修了)。博士論文の研究テーマは「国会議員秘書のストレスに関する研究」。公認心理師・精神保健福祉士。メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー)副社長。官公庁カウンセラー。文理シナジー学会理事。企業広報ネットワーク理事。AIカウンセリング「ストレスマネジメント支援システム」発明(特許取得済み)。カウンセラーとして約1万人の相談に対応し、中央官庁や地方自治体のメンタルヘルス対策に携わる。Yahoo!ニュースエキスパートオーサーとして「職場の心理学」をテーマにした記事、コメントを発信中。著書に『なんとかなると思えるレッスン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『発達障害グレーゾーンの部下たち』(SBクリエイティブ新書)、最新刊『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(集英社インターナショナル)等がある。
https://x.com/funakiayano
@funakiayano

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