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“動かない鳥”が飼育員に見せる甘え顔 掛川花鳥園のハシビロコウ「ふたば」が人に寄り添う理由

辰巳出版まるごとBOOK編集部

2026年08月11日 公開

“動かない鳥”が飼育員に見せる甘え顔 掛川花鳥園のハシビロコウ「ふたば」が人に寄り添う理由


写真:大きな翼を広げて飛ぶふたば(写真・南幅俊輔)

クチバシが大きく発達し、微動だにせず獲物を待ち続けることから「動かない鳥」として知られるハシビロコウ。アフリカ中央部の湿地帯に生息するこの珍鳥の中でも、ひときわ人気を集めているのが、静岡県の掛川花鳥園で暮らす「ふたば」だ。

2016年にタンザニアからやってきて以来、飼育スタッフに親愛の証である「お辞儀」をしたり、クチバシを鳴らす「クラッタリング」で喜びを表現したりする姿がSNSで拡散され、一躍人気者となった。今年、来園から節目の10周年を迎えたふたばの歩みをまるごと収録した書籍『ハシビロコウのふたばまるごとFANBOOK』(辰巳出版)が発売され、反響を呼んでいる。 

 

「NEXTパンダはハシビロコウ?!」

ハシビロコウ
日によってヘアスタイルが変わる(写真・南幅俊輔)

昨年、日本各地の動物園でジャイアントパンダの返還が相次ぎ、約半世紀ぶりに国内から姿を消した。「パンダロス」が広がるなか、SNSや動画サイトで存在感を増しているのがハシビロコウだ。今年4月には東京都が新たにハシビロコウのキャラクターを発表するなど注目度は高まる一方で、その愛され具合から一部では「NEXTパンダ」と呼ぶ声も上がっている。

ハシビロコウの写真集を多数手がけてきた南幅俊輔氏は、ハシビロコウについて、全国7園・14羽それぞれに熱心なファンが付いていると話す 。中でも来園10周年を迎えたふたばは、「ハシビロコウ界のアイドル」としてYouTubeでも高い再生数を誇る一番の人気者だという。ふたばの愛嬌たっぷりの姿を見に、遠方から会いに訪れるファンも少なくない。

 

ハシビロコウ界のアイドルふたば

ハシビロコウ
飼育スタッフにまるでお礼を伝えるかのように「お辞儀」をする(写真・南幅俊輔)

ふたばがタンザニアから掛川花鳥園にやってきたのは2016年3月。同年7月のお披露目当初は警戒心が強く、スタッフが近づくとクチバシを鳴らして威嚇する毎日だったという。頭頂部に生える長い羽根・冠羽(かんう)が双葉のように見えることから、その年の9月に「ふたば」と名付けられた。

そんなふたばが「アイドル」として人気に火が付いたのは2018年ごろから。給餌の時間に見せる気まぐれな姿が掛川花鳥園公式YouTubeなどで話題になり、じわじわとファンが増えていった。

その裏には、飼育スタッフの地道な努力もあった。エサのニジマスをなかなか食べないときは頭やうろこを丁寧に取ってから渡し、「髪型を変えると別人だと思ってふたばが警戒してしまうから」と何年も同じヘアスタイルにしているスタッフもいる。

まさに「ふたばファースト」な対応の甲斐あって、気を許した相手には「お辞儀」で応えてくれたり、野生では求愛行動にあたる「クラッタリング」(クチバシを鳴らす行動)で親愛の気持ちを伝えてくれる。飼育スタッフにとっては、これが何よりのごほうびなのだそう。

警戒心の強かったふたばが、「ハシビロコウ界のアイドル」と呼ばれるまでになった背景には、そんな飼育スタッフとの関係性の積み重ねがあった。

 

ハシビロコウシンポジウム潜入

ハシビロコウシンポジウム
熱気に包まれた会場(写真・南幅俊輔)

7月11日に「第3回ハシビロコウシンポジウム」が静岡県掛川市美感ホールで開催された。今回は掛川花鳥園が主催となり、国内でハシビロコウに携わる7つの動物園・施設の担当者が一堂に会した。定員270人の会場はハシビロコウファンで満席となり、熱気に包まれた。

「ハシビロコウシンポジウム」とは、ハシビロコウに携わる施設が、日々の飼育や研究の知見を共有するイベントだ。各園の担当者が日々の飼育で直面する苦労や工夫を発表するなか、特に注目されたテーマが「ハシビロコウの繁殖」だった。

国内での飼育羽数が少なく、飼育の歴史も浅いため、国内での繁殖例はない。給餌の工夫や環境整備など、繁殖に向けた取り組みについて、各施設による発表や意見交換がなされた。

ふたばの担当飼育者も登壇し、来園10年となるふたばの個体紹介や飼育部屋の説明、10年間でのふたばの瞳やクチバシの色の変化、食事の好みや、チャームポイントの冠羽の変遷などについて発表した。

中でも注目を集めたのが、ふたばの部屋に新設予定の「降雨装置」だ。飼育空間に植栽を増やすとともに雨を再現することで、ハシビロコウの生息地であるアフリカの湿地帯によりいっそう近い環境を目指すという。

 

10年の歩みを一冊に

ハシビロコウ
好物のニジマスをもらう(写真・南幅俊輔)

ふたばの10年間を写真でたどれる一冊が『ハシビロコウのふたば まるごとFANBOOK』(辰巳出版)だ。飼育スタッフへの取材や、ファンから届いた10周年メッセージも収録されている。

掛川花鳥園の飼育スタッフ・副島さんに、ふたば来園10年の想いを聞いた。

「朝は『おはよう』夜は『おやすみ』そんな毎日を過ごして来た中で『もう10年』とも『まだ10年』とも感じています。ふたばの存在がたくさんの人にハシビロコウの魅力を伝えてくれています。もちろん私たちもその魅力を感じている一人です。まだまだ試行錯誤の毎日です。一筋縄では行かない日もありますが、いつまでも元気で、いつまでもふたばらしくいられるよう、これからも全力でサポートをさせてください。11年目もよろしくね」。

ハシビロコウ
(写真・南幅俊輔)

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