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生き方

松井秀喜「窓際に追い込まれても、やるべきことは必ずある」

松井秀喜(メジャーリーガー)

2012年01月19日 公開 2022年06月07日 更新

 

人生には、失敗からしか学べないものがある

日本でもメジャーでも、「選手として、やれる」という絶対の自信を持ったことは一度もありません。若いときはそういう感覚になったこともありましたが、そういうものがずっと自分のものにはならないと分かってきました。

何かをつかんだとしても、それが次も有効である保証はありません。それを意識して再びやってみて、たとえ好結果が出たとしても、うまくいかなくなる時期が必ず来ます。

メジャーに来てからも、そういう感覚をつかんで臨んだ打席での安打や凡打があります。大切なのは、うまくいったという記憶を数多く積み重ねることです。

どこかで、こういうことがあったと経験則として活かせるようになります。それでも、つかんだものが、自分の手元にずっと残ってくれるとは限りません。

そういうくりかえしの連続が、今の自分自身になっているということです。野球選手としてあらゆる経験を経て、自分の引き出しが少しずつ増えていきます。例えば、長いシーズンで月間MVPを獲るような調子のいい時期もありますが、その感覚がずっと続くことは絶対にありません。

自分では、そのように理解しています。だからこそ、いいときでも、いつか悪くなるときのために、しっかりとした準備をしておかなくてはいけません。常に先のことを考えなくてはいけません。

調子がいいときに、これからどのように悪くなるかを考えるのは難しいことではありません。この先、自分がどう崩れていくのかは、ちょっとした感覚で分かります。すぐに、「やばいな」と感じます。悪くなったら、悪くなった時点で、「じゃあ、この後どうしようか」と考えます。常に先のことを意識しながら、長いシーズンに臨んでいます。

でも、僕は基本的に「大丈夫」と、楽観的に考えるようにしています。悲観的になるよりも、「俺はできるんだ」と楽観的に考えています。悲観的になるときもありますが、最終的には、「まあ、なんとかなるだろう」というぐらいの感覚で構えています。

「松井秀喜は成功と失敗のどちらから学ぶのか」

こんな質問をされたら、「失敗から学ぶ」と答えます。野球は失敗だらけのスポーツです。こうやって失敗したから、次は違う形でやってみようと考えます。たとえうまくいっても、それが続く時期は短いからです。

うまくいかないときに、どうやってよくしていこうか、そればかり考えています。だから、基本的に失敗から学ぶことのほうが断然多いわけです。

すべて相手の問題ではなく、自分の問題だと捉えています。誰かに言われて、何かをすることはありません。もちろん長いシーズン、監督やコーチからいろいろなアドバイスをもらうことはありますが、基本的には、自分で「これは必要、これは必要ではない」という判断をしています。

例えば、バッティングに関して、打撃コーチのアドバイスには耳を傾けます。巨人時代であれば、長嶋監督から指導を受けることもありました。しかし、最終的な選択は自分の意思でやってきました。

もし自分の中に固い信念があるならば、絶対に曲げません。ただ、人生を歩む上で、そうではなかったと悟ったら、固執せずに変えることも必要です。しかし「根幹」は変えないと思います。

問題に対処する引き出しをたくさん持っていることは大事なことです。引き出しが多ければ、あらゆることを変えられます。そして、変えることを怖がらないことが大事です。その一方で、本当に基本的なことは変えません。

日本とメジャーで18年間プレーをしてきて、野球に関することはほとんど記憶しています。人間は好きなことならば何でも覚えていると思います。

野球をするには記憶力は大切だし、必要な要素です。対戦投手のデータに関する整理・分析はこれまでの経験でできてきました。相手が変わっている可能性もありますが、メジャーにはいろんなタイプの投手がいるので、こちらの引き出しは増えました。

でも、自分の対処法は少なければ少ないほどいいと考えています。1つの対処法ですべての投手に対応できる打撃が一番の理想ですが、なかなかそうはいきません。そこが野球というスポーツの難しさです。

だからこそ、ヒットやホームランを打ったときの楽しさは格別です。でも喜びは一瞬です。その結果に一喜一憂せず、次に備えることが肝心です。

 

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