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海外勤務のない私が超巨大グローバル企業の幹部になれた理由

高岡浩三(ネスレ日本代表取締役社長兼CEO)

2017年05月15日 公開 2023年01月16日 更新

不利な条件のもとで勝ち続けた「ジャパン・ミラクル」

こうして私は、常に右肩上がりの成長を実現してきた。

ネスレ日本の社長に就任してからも、会社の業績はずっとプラス成長を続けている。

ご存知の通り、日本は世界で最も早く少子高齢化が進み、バブル崩壊以降は景気の停滞が続いている。

よって、スイス本社からも、日本は今後の成長が難しいマーケットと見なされていた。

ところが、ネスレ日本は6年連続で右肩上がりの成長を続け、他の先進国を大幅に上回る成長率を達成した。

2016年のネスレ日本のオーガニックグロースは4.1%。先進国の平均は1.7%だから、2倍以上の数字である。

新興国を含めたネスレのグルーバル全体の数字と比べても、日本の成長率はそれを上回っている。

ここ数年の日本の業績は、スイスの役員たちにも非常に大きな驚きを与え、「ジャパン・ミラクル」との称賛の言葉をいただいている。

どんなに不利な条件や環境に思えても、そこで圧倒的な成果を出す。

それでこそ「世界に通用する」と言えるのではないだろうか。

しかも、私のように本格的な海外勤務経験のない人間が率いる組織でも、世界で勝ち続けることはできる。

どんな場所や組織で働くかは関係ない。私自身がそれを体験してきたからだ。

「人と違うことをする」という意識があれば、どんな状況でも勝ち方は見つかる。

この34年間を通じて、私はそのことを確信している。

ここでもう一度念押ししておくが、重要なのはただ勝つことではない。

「勝ち続けること」である。

毎年、経済誌などが「今年のヒット商品番付」なるものを発表する。

だが、そこにランクインした商品で、3年後や5年後も売れ続けているものがどれだけあるだろうか。

たった1年後でさえ、「そういえば、そんな商品もあったね」と消費者に忘れかけられているものが大多数のはずだ。

メディアでも、業績をV字回復した企業がよく取り上げられる。だが、いったんは持ち直したものの、数年後にはまた業績が落ち込んでしまうことが少なくない。

マイナスをプラスにするのは、実はさほど難しくない。

だが、そこから常にプラスを積み重ねていくのは、その何十倍も大変なのである。

だからこそ、それができるようになれば、周囲から高く評価される。

世界中のどこで働いていても、必要とされる人材になれるはずだ。

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20代や30代で自分の市場価値を考えるのは、うぬぼれである

著者紹介

高岡浩三(たかおか・こうぞう)

ネスレ日本〔株〕代表取締役社長兼CEO

1960年、大阪府生まれ。83年、神戸大学経営学部卒業後、ネスレ日本〔株〕に入社。各種ブランドマネージャーを経て、「キットカット受験生応援キャンペーン」を成功させる。後に『ネスカフェ アンバサダー』など新しいビジネスモデルの構築を通じて、高利益率を実現している。著書に『ネスレの稼ぐ仕組み』(KADOKAWA)など。

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