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なぜ「家計簿」をつけただけでやせられたのか?

川下和彦(習慣マスター)

2017年08月23日 公開 2023年09月08日 更新

きっかけは“スマホで家計簿”

藁をもつかむ思いで私がつかんだのは、スマホでした。とにかく、情けない金銭感覚を是正しなければいけないと思ったのです。

まず、ネットでお小遣いを管理できる家計簿アプリを検索し、「これだ!」と思うものをスマホにインストールしたのが、すべてのはじまりでした。

買い物するごとにスマホを取り出してデータを入力していると、瞬時に最新のお財布状況が更新されるので、自分がどれだけ節約できているかが一目瞭然になります。

すると、もっといい成績を出そうと思うようになり、欲しい物が出てきても、「この買い物は辛抱しよう」「ここで無駄遣いしてはいけない」という具合に脳が働き、まるでゲームにハマったように無駄遣いを減らすことができるようになっていきました。

 

家計簿習慣が引き起こした、思いがけない変化

家計簿をつけ始めてから3週間が経ったころ、私は歯を食いしばって必死にダイエットプログラムに取り組むこともなく、5kgの減量に成功していました。

今までは何度ヤセようとしても全然うまくいかなかったのに、なぜ一見ダイエットとは何の関係もない“家計簿をつける”という行為によって、私は贅肉を落とすことができたのでしょうか?

それは、“お金を使わないこと”が“ヤセること”に直結していたからです。私たちの体は、「いつ食べられるかわからない」という太古の飢餓時代のことを覚えていて、食べたものを脂肪にして蓄えようとし、動きを抑えて、せっせと蓄えた脂肪が無駄に使われないようにしようとする特徴があります。つまり、“食べること”と“運動しないこと”に対してお金を使いたいと思うのです。

ところが、節約ゲームに夢中になると、なるべく無駄にお金を使いたくないという気持ちが大きくなっていくので、飲食費や交通費(=楽して移動するためのお金)をなるべく減らしたいと思うようになります。その結果、安易に飲んだり食べたりする量を抑え、電車やタクシーを使わずに、積極的に歩くようになるというわけです。

こうして、私は3週間で5kg、3ヶ月後に18kg、体重を落とすことができたのです。

成果が目に見え始めると、「もっと結果を出したい!」と思うようになるものです。調子に乗ってきた私は、筋トレを始めることにしました。

と言っても、張り切ってジムに通おうとするとすぐに続かなくなることが目に見えていたので、すべて自宅でできる、通称「宅トレ」メニューを組むことにし、無理せず、1日数回の腕立て伏せ、腹筋、スクワットなど、確実にできるメニューをくり返しました。

それから2年以上経っていますが、今や歯磨きと同じレベルで、ほぼ無意識に貯金、ダイエット、筋トレを継続しています。

 

習慣化のカギは、意志の力を使わないこと

ではなぜ、意志の弱い私が次々に習慣化に成功することができたのでしょうか? それは紛れもなく、意志の力を使おうとしなかったからです。

フロリダ州立大学の心理学者、ロイ・バウマイスターは、いくつかの実験を通じて、意志の力は使えば減っていく「ガソリン」のようなものであると立証しました。そう考えると、人間は車のようなもので、最初はガソリン満タンの状態なので意気揚々と走ることができます。しかし、やがてガソリンは減り、最後はガス欠になってしまいます。

それなら、習慣を定着させるためには、ガソリンを使わずに進み続ける方法を考えればよいのです。

そのヒントは、皆さんが学校で習った「慣性の法則」にあります。空気抵抗や摩擦がなければ、物体は一定速度で一直線に進むということを教わった記憶がありませんか? その法則に大きなヒントが隠されています。

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