1. PHPオンライン
  2. 仕事
  3. 「人は変われる。」を独自のメソッドで証明する~瀬戸健・RIZAPグループ創業者

仕事

「人は変われる。」を独自のメソッドで証明する~瀬戸健・RIZAPグループ創業者

マネジメント誌「衆知」

2019年08月02日 公開 2019年08月02日 更新

出張型プログラムで日本をまるごと健康に

実際、ライザップでダイエットに成功したゲストの中には、やせるだけでなく、やせて健康になったというケースがたくさんある。体力や身体機能の維持・向上、メタボ体質の改善――そうした効果は、事業開始以来蓄積してきた累計12万人以上の健康データを、医療機関などと連携しながら分析した結果、立証された科学的事実にほかならない。

「ライザップと提携している医療機関は現在、一六〇を超えています。医学的な見地からボディメイクを追求し、『やせる』という結果にコミットする戦略から、『心身の健康』という結果にコミットする戦略へ、舵を大きく切っていきたい。日本の健康をサポートする企業ナンバーワンを目指したいのです」と、瀬戸社長は力を込める。ライザップの成長戦略は、着実に新たなフェーズへ進化しつつあるようだ。

2017年8月には「RIZAP1000万人健康宣言」を発表。「2020年度までに、1000万人以上の方に『RIZAPメソッド』を体験いただき、健康で輝く人生をサポートします」と宣言した。その具体的な取り組みの一つが、法人企業および自治体を対象とする出張型プログラムの拡大だ。パーソナルジムという「1:1」の事業で培った「結果にコミット」する仕組みを、より多数の利用者に向けた「1:N」の事業にも展開していくという。

法人向けには、従業員の健康増進のための「生活習慣改善プログラム」として、トップトレーナーが食事・運動のコツを伝授する実践型健康セミナーやグループトレーニングを実施するほか、他社との連携によるデリバリーランチを提供する。「健康経営」に意欲的な先進企業を中心に、採用実績を拡大。セミナーの受講者数はすでに560社5万人を突破している。

また、自治体向けの事業としては、静岡県牧之原市に続き、2018年1月から長野県伊那市との連携でスタートした地域のシニア層を対象とする「健康増進プログラム」が大きな注目を集めている。最大の特徴は、日本初の自治体向け成果報酬型プログラムであること。自治体がライザップへ支払う報酬額を、プログラム参加者の3カ月間での体力年齢改善の結果、およびプログラム実施翌年の医療費削減額の結果に応じて決定するわけだ。次の1)2)で算出する。

1)プログラムで体力年齢が10歳以上若返った人数×5万円
2)プログラム参加者全体の医療費削減額の50パーセントが1)を上回る場合は、その差額を加算

元々「1:1」のパーソナルトレーニング事業では、「結果にコミット」の考えにもとづき、結果が見込めなければ無条件で全額返金する「無条件全額返金制度」を導入していたが、この自治体向けの成果報酬型プログラムは同じサービスコンセプトを「1:N」のグループトレーニングでも具現化するための仕組みといっていい。

3カ月間の健康増進プログラムでは、各参加者の体力年齢が10歳以上若返ることを目標に設定し、週1回90分の運動トレーニングと栄養バランスのよい食事についての指導、定期的な進捗管理を実施。運動はストレッチや足踏み運動などの、器具を使わずにできる軽いメニューを中心に行なう。

伊那市での取り組みの経過を見ると、プログラム開始時の参加者の体力年齢は平均で78.7歳と、実年齢(平均65歳)より10歳以上老けていたが、終了時には41.8歳と、実に平均37歳の若返りに成功している。「体力年齢の10歳以上若返り」という目標を達成した参加者は全体の89パーセントに達し、瀬戸社長もおおいに自信を深めたという。

「参加者の方々にアンケートを実施したところ、満足度は92パーセントで『またやってほしい』『食事についてもっと知りたい』など、大変なご好評をいただきました。私も正直驚いたんですよ、こんなに若返るのかと。体力や健康数値だけでなく、皆さん、本当に明るくなりましたからね。ビフォー・アフターの変化を記録した動画も公開しているので、ぜひご覧ください(長野県伊那市「RIZAP健康増進プログラム」実施報告をユーチューブで公開)。いくつになっても『人は変われる。』ことを実感していただけるはずです」

伊那市の成功事例を受けて、今後は全国の自治体への展開を加速する方針だ。すでに長野県、福島県、北海道の六自治体で健康増進プログラムの提供が決まっている。
 

本稿は、衆知【2019年1・2月号】特集「『人生100年時代』の経営戦略」より、一部を抜粋、編集したものです。

関連記事

×