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もしコロナ禍で厚生労働大臣が徳川綱吉だったら…国民に何を呼びかけるのか?

眞邊明人(株式会社先駆者代表)

2021年04月02日 公開 2024年12月16日 更新

徳川綱吉

リモートワークを継続できるように

「すべては救えない……はっきり言ったな」 小野が隣にいた理沙に耳打ちした。理沙は、この最強内閣の番記者のような位置付けで、プロデューサーの小野と共に抜擢されていた。

「でもその通りですね……」 理沙は小野の言葉に返答するでもなく呟いた。たしかに綱吉の言う通りだ。仮にPCR検査 を国民全員に受けさせたからといって、ウイルスが消えるわけではない。

検査にかかる費用も人数も莫大だ。あくまでも、「その時点で検査を受けた人が感染しているかどうか」がわかる だけである。検査を受けた直後に感染する可能性もある。しかも、検査には偽陽性、偽陰性が あり、100%正確であるわけではない。

それでもPCR検査拡充の声が大きくなるのは、大衆というものが不安に弱いからでもあった。本能的に検査で"安心"を得ようとする気持ちは 理沙にも理解できた。

理沙は思い切って手をあげた。

「検査を受けられないことで不安を感じる国民も多いのではないかと思うのですが、そのあた りは大臣はどうお考えでしょうか?」 

理沙の質問には洪庵が答えようとしたが、それを綱吉は押し止めた。

「不安は、検査ではなく、日頃の行いで取り除くべきである。今は、病と戦をしておる。戦に 安心はない。おのれの行いに気をつけ、病にうつらぬように心がけよ。そのために、洪庵殿が 毎日情報を発信しておる。我らは、できる限り病にかからぬようなしくみをつくる。検査は単 なる気休めに過ぎぬ。気休めに貴重な戦力を割くことはできぬ」

綱吉の回答は明快であった。

「我ら政府は、経済産業省、文部科学省とも連動し、まずは通勤通学の人混み解消を行うこと にしております。この緊急事態宣言で行ってきたりもーとわーくなる働き方を維持できる者は 極力、継続すること。また、集会や飲食などの会合などの規制も続けまする」 洪庵が補足をした。

「良いか。いろいろな考え方があるであろう。しかし、めいめいが勝手な考えや判断で動いて は勝てる戦も勝てぬ。今は、大権現さまを始め我らに従ってもらう。すべての責は我らが負う。 それが政というものじゃ」 綱吉はぴしりと言った。

有無を言わせぬ態度は、やはり民主主義のリーダーとは違う封建時代の"絶対的"なリーダーの姿であった。この絶対的な態度は中途半端さがないぶん、不思議な安心感を与えてくれる。

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