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なぜ、日本人は英語を聞き取れないのか?

2019年02月19日 公開
2023年03月10日 更新

藤澤慶已(言語学博士)

発音のギャップと表現の違いが、ネイティブの英語を聞き取る鍵になる!

英語の読み書きはできても、相手の言っていることが理解できずコミュニケーションがとれないと悩んでいる人も多い。なぜ日本人は英語の聞き取りが苦手なのか、その理由とともに、聞き取れるようになるコツを言語学博士で音楽博士でもある藤澤慶已氏にうかがった。

 

「レモネード」よりも「ラムネ」が英語らしい!?

 多くの日本人が苦手とする「聞き取り」。この壁を克服するには何が必要でしょうか。よくある解決策は「浴びるほど英語を聴いて慣れること」でしょう。

 それは決して間違ってはいません。しかし「何に」慣れればよいのでしょう。そのポイントがわからないままひたすら聴くだけでは苦痛です。そこでまずは日本語と英語のギャップ──聞き取りづらさの原因を知りましょう。

 その原因は二つあります。一つは、音声の問題です。

 英語と日本語の音声を比べたときの最も顕著な違いは、母音と子音の比率です。日本語は母音と子音が6:4の比率で発されます。対してイギリス英語は2:8、アメリカ英語は3:7。日本語は母音、英語は子音の比率が高いのです。

 試しに「Ma」と長く発音してみてください。「マァー」と母音(ア)を伸ばしたくなるでしょう。対して英語圏の人は、「ンームァ」と子音のMの部分を強調します。

 また、私たちは「lemonade」を「レモネード」と読みますが、明治期の日本人はこの音を「ラムネ」と認識し、それをモデルに清涼飲料水のラムネを作りました。その後、文字表記を日本語風に読んだ「レモネード」が別途定着しましたが、実は「ラムネ」のほうが本来の音に近いのです。母音を強調的に読む日本語のクセが、こうしたギャップを生むのです。

 このギャップを埋めるには、発音を改善するのが近道。ネイティブの発音を真似て、子音強調型の音に耳を慣らせば、聞き取る力も格段に上がります。

 

知っている単語なのに聞き取れない理由とは?

 もう一つの「聞き取れない」原因は、表現の問題です。

 知っている単語が並んでいるのに内容がわからない、という経験はありませんか?

 欧米では、日本人が中学時代に習うような簡単な単語を組み合わせたフレーズを日常で多用します。例えば、「連絡するよ」は「I’ll get in touch with you.」。ここでは、日本人が思い浮かべがちな「contact」という単語は登場しません。

 日本語が一つの概念に一つの単語を当てはめるのに対し、英語は「身近な単語を自在に組み合わせたり組み替えたりして表現する」という流動性を持っています。これには法則性があるわけではないので、特性の違いに慣れるには、表現例をとにかく多く覚えるしかありません。のちほど、その例や具体策を説明します。

 そのうえで各自、たくさんの英語に触れていただければ万全です。論理を踏まえ、改善ポイントを意識しながら学べば効率も良く、道筋が見えるのでモチベーションも上がるでしょう。

 こうした学習は、日本語の知識と技量が確立された大人だからこそできることです。日本語との違いを手がかりに英語をひもとく戦略的アプローチ、ぜひ実践してみてください。

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著者紹介

藤澤慶已(ふじさわ・けい)

言語学博士/音楽博士/LEC会計大学院教授

米国テネシー州立大学にて言語学博士号、南ミシシッピー州立大学にて音楽博士号を取得。音声学・言語学の見地から日本語と英語を比較分析、「藤澤博士のスピーチセラピーメソッド(FSTM)」を開発する。2004 年よりLEC 会計大学院教授、11 年より関東学園大学客員教授。著書に、『オドロキモモノキ英語発音 子音がキマればうまくいく』(ジャパンタイムズ)など。

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