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「年収700万円くらいなら...」世間知らずな転職希望の大企業ミドル社員たち

2019年12月04日 公開
2023年09月15日 更新

前川孝雄(FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

リサーチ不足の「なんとかなるさ」は禁物

世間知らずな転職希望の大企業ミドル社員たち

《自分のキャリアは自分で創り出すもの─―。終身雇用と年功序列を担保してもらう代わりに、会社命令には逆らえず縛られてきた日本のサラリーマンにはそれが難しいことになってしまっていたと、400社以上で人材育成を手がけてきた〔株〕FeelWorks代表取締役・前川孝雄氏は指摘する。

組織に依存するのではなく、自分自身で自分のキャリアをコントロールできるようになれば、きっと働くことは今よりもずっと楽しくなるはず。しかし、そのためには、会社を「まだ」辞めてはいけないと言う。辞める前にやるべきこととは?》

※本稿は、前川孝雄著『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

 

思いのほか世の中の実情を知らない大企業のミドル

大企業のミドルからの相談に乗っていると、「自分の市場価値も、世の中の実態も驚くほどわかっていないな」と感じることがしばしばあります。

30年近く社会人としてのキャリアを重ねてきたベテランがなぜそのようなことになってしまうのかとも思いますが、大企業の恵まれた環境、その恵まれた環境に依存する内向きな思考が、自分や世の中を客観的に見る力を鈍らせてしまうようです。

一方、大企業でそれなりのポジションを得て、高い収入を得てきたことは、中高年サラリーマンにとって大きな自信となっています。自分にはそれだけの社会的価値があるというプライドが彼らを支えているのです。

その結果、生まれるのが根拠なき楽観主義です。

「大手で課長を務めていた自分なら中小企業の仕事など簡単に務まるはずだ」「転職先の年収? ぜいたくは言わないけど700万円くらいはほしい」......etc

新聞やインターネットなどで二次情報、三次情報を収集するだけでなく、会社を辞めて転職した元同僚などにじっくり話を聴くなどして一次情報に触れれば、自分の考えが見当外れであることはすぐにわかるはずなのですが、それすらしていない。このようなリサーチ不足の状態で「なんとかなるだろう」と転職・起業といったアクションを起こすのは危険です。まだ辞めてはいけません。

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大企業から中小企業への転職は、年収大幅ダウンを覚悟する >

著者紹介

前川孝雄(まえかわ・たかお)

〔株〕FeelWorks 代表取締役/青山学院大学兼任講師

1966 年、兵庫県明石市生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。〔株〕リクルートで『リクナビ』『就職ジャーナル』などの編集長を務めたのち、2008 年に〔株〕FeelWorks 設立。「上司力研修」「50 代からの働き方研修」などで400 社以上を支援。2017 年に〔株〕働きがい創造研究所設立。〔一社〕企業研究会研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業審査員なども兼職。
独立直後には、「700 通の挨拶状を送るも反応ゼロ」「仕事の依頼がなく近所の公園で途方に暮れる」といった挫折を味わう。そこから立ち直った経験から、近年はミドルの転職・独立・定年後のキャリアの悩み相談に乗る機会も多い。
著書は、『上司の9割は部下の成長に無関心―「人が育つ現場」を取り戻す処方箋』(PHPビジネス新書)、『「働きがいあふれる」 チームのつくり方』(ベスト新書)、『「仕事を続けられる人」と「仕事を失う人」の習慣』(明日香出版社)、『もう転職はさせない! 一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)など多数。

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