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コロナショックの今こそ働き方改革の実態が明らかに。行動実験が実証する「再現性のある時短術」

2020年04月09日 公開
2023年02月21日 更新

越川慎司(クロスリバー社長)

リモートワークがうまくいかない理由は「ホウレンソウ」の重視しすぎ!?

生産性を上げるための方法として、様々な時短術がある。特に会議やメールなどに関してムダが多いのは事実だが、間違った時短術でまったくムダとりができていない例も多い。本企画では、自ら「週休3日」で働くコンサルタントの越川慎司氏が、528社の働き方改革支援データから得た知見と、26万社を巻き込んだ行動実験から生み出した「再現性のある時短術」を紹介する。(取材・構成=杉山直隆)

 

働き方改革に成功した企業はたった12%

「働き方改革というけど、残業できなくなっただけで、何も良いことがないのだが……」

昨年4月に関連法が施行されてから、多くの会社が働き方改革に乗り出しています。しかし、現実には、冒頭のセリフのように感じている人は多いでしょう。弊社が528社に調査をしたところ、「働き方改革に成功している」と回答した企業はわずか12%。約9割は「うまくいっていない」のです。

なぜうまくいかないのか。それは「どうなれば働き方改革は成功か」という目的を正しく設定していないからです。

残業をゼロにする――いわゆる「時短」を実現すれば、「成功」と考えている会社は多くあります。しかし時短は目的ではなく手段です。時間を減らすだけでは会社は良くなりません。

にもかかわらず、時短を目的にすると、どうなるか。表面的には総労働時間は減っているものの、実際は36協定の対象外である管理職にしわ寄せがいくようになります。弊社の調査によると、529社の今年度の総労働時間は18%減っている一方、管理職の労働時間は21%増えていました。最近、東京・丸の内のカフェが夕方以降どこも満席で、過去最高の売上を記録しているのは、管理職が残業しているから。通勤ラッシュのピークが朝7時台に早まっているのも、朝早く出社する管理職が増えているからです。しかし、表面的に時短できたとしても、業績は上がらず、働いている人たちの給料も上がらない……。これでは働き方改革は成功したとはいえません。

 

会社と個人では定めている目的が違う

働き方改革を成功させるには、第一に「どうなったら成功といえるか」、目的をしっかりと定めることが欠かせません。

その際、ほとんどの企業で抜け落ちている観点は、「会社と個人では、働き方改革の目的が異なる」ということです。

会社から見れば、その目的は「会社を成長させ、存続させること」ですが、個人はそうではありません。「自分が幸せになること」です。もう少し分解すると、「短時間で豊かな生活ができる稼ぎを得ること」、そして「働きがいを持てる仕事をすること」の二つです。言ってみれば当たり前なのですが、意外と個人の目的が考慮されていないのです。

働き方改革の目的を立てるときは、会社と個人の目的を同時に達成できるよう、ベクトルを合わせることが大切です。その手段を考えたときに初めて、時短などの手段が出てきます。

時短をするなら、単に時間を減らすだけでなく、そうして捻出した時間を、目的を達成するための投資に充てることが重要です。会社でいえば新規ビジネスの開発、個人でいえばスキルアップです。そうして初めて、働き方改革が成功したといえるでしょう。

こうみると、働き方改革は経営戦略であり、人事戦略ではありません。人事や現場のマネジャーに丸投げするようなものではありませんが、マネジャー主導のもとに、行なうことも可能です。

チームのメンバー間で、「働き方改革を行なう目的をはっきりさせる」。そのうえで、目的を達成するための行動を考えて、試しにやってみて、効果があったかどうか振り返る。働き方改革に成功している12%の企業では、そうした「行動実験」を精力的に行なっています。ぜひ皆さんの職場でも取り組んでみてください。

 

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著者紹介

越川慎司(こしかわ・しんじ)

クロスリバー社長

株式会社クロスリバー代表取締役社長アグリゲーター。株式会社キャスター執行役員。国内外の通信会社に勤務し、ITベンチャーの起業を経て、2005年に米マイクロソフトに入社。業務執行役員としてOffice事業部を統括。17年に働き方改革の支援会社であるクロスリバーを設立。週休3日で日本企業の働き方改革を支援し、18年11月時点で合計528社の働き方改革を支援してきた。働きがいを高めるワークショップを展開し、受講者は1万6,000人超。著書に、『仕事の「ムダ」が必ずなくなる 超・時短術』(日経BP)など多数。

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