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ispace「2040年、月面に1000人が暮らす街を作る」



2020年07月07日 公開

【経営トップに聞く 第33回】袴田武史(ispace CEO)

袴田武史

 

宇宙開発は各国政府が威信をかけて競ってきた分野だが、近年、民間企業の存在感がどんどん増している。宇宙産業の市場規模は約44兆円(2018年)にも拡大し、様々な企業が進出。その中でも、2040年に1000人が暮らす街を月面に建設するという壮大なビジョン「ムーンバレー2040」を描いているのが、2010年設立のベンチャー企業・〔株〕ispaceだ。創業CEOの袴田武史氏に話を聞いた。

 

2021年の月面着陸、2023年の月面探査を目指す

――民間初の月面無人探査を競う「Google Lunar XPIZE」で、2015年に、御社が率いるチーム「HAKUTO」が中間賞を受賞し、大きな注目を集めました。結局、Google Lunar XPRIZEは、月に到達できたチームがないまま2018年に終了しましたが、やはり月面探査は相当に難しいチャレンジだったということでしょうか?

【袴田】難しいからこそ賞金が出るコンテストとして行なわれたのですが、不可能なものではありませんでした。技術は既にあったので、それらをきちんと積み上げれば実現できました。ただ、ランダー(月着陸船)はかなり複雑ですし、コストもかかります。勝者がいないままGoogle Lunar XPRIZEが終わったのは、資金の問題で期限に間に合わせられなかったことが要因だったと考えています。

参加したどのチームも、少なく見積もって50億~100億円の資金調達が必要だったはずで、最初からそれだけの金額を用意できていたチームはなかったと思います。2014~15年になって、ようやく必要な資金を得られるようになったのですが、そこからだと期限まで3~4年しかなく、期間が短すぎたのです。実際、参加チームの中で資金調達がうまくいっていたSpaceILというイスラエルのチームは、月面着陸には失敗したものの、期限後の2019年に、月に到達することに成功しています。

――2014~15年に資金調達ができたのは、なぜだったのでしょう?

【袴田】宇宙ビジネスへの関心が高まって、月ビジネスも投資対象になってきたのが2013~14年頃でした。

資金調達の方法はチームによって違っていて、SpaceILの場合は教育目的のNPOのチームでしたから、寄付によって資金を集めていたのですが、大きな金額を寄付してくれる人物が現れたんです。Moon Expressという米国のベンチャー企業のチームは、投資家たちが資金調達をしました。私たちについては、中間賞を獲得できたことが大きな後押しになりましたね。

――Google Lunar XPRIZEに参加しているときは、御社が手がけていたのは月面探査をするローバーだけで、ランダーと打ち上げロケットは他チームにものに相乗りする予定でした。現在はランダーも手がけていますが、その経緯は?

【袴田】我々はもともとWhite Label Spaceという欧州のチームと一緒に参加していて、そのチームがランダーを開発し、我々が東北大学の吉田和哉教授とともにローバーを開発していました。ところが、2012年末にWhite Label Spaceが活動を休止することになったのです。そこで、ランダーは他チームに相乗りすることにしました。

White Label Spaceが抜けて、我々だけで参加することになったとき、なぜGoogle Lunar XPRIZEに参加するのかを、メンバーと改めて考えました。そして、民間で宇宙ビジネスを展開することを決めました。事業領域は宇宙資源です。当時、メディアを賑わせていたのは小惑星資源でしたが、我々は月の水資源に目をつけました。

月には数十億トンの水資源があると言われています。それを資源メジャーなどとともに開発することを考えています。さらに、その資源を使って月に街を作ります。すると、様々な産業が月に進出しますから、その際に当社の輸送サービスを利用していただくビジネスも展開できます。

こうして事業構想をまとめていったのが2014~15年。この事業を本格的に成長させるためにはローバーだけでは不十分なので、ランダーも自社で開発することにして、2017年に100億円超の資金調達をし、本格的に開発を始めました。

現在は、ローバーの開発も、当社が独自に行なっています。今は資源探査をするローバーを開発していますが、将来的には、月面にプラントを製造したり、様々な産業を支える輸送をしたりするローバーも必要になりますから、そういったものへと進化させていきます。

――ランダーの開発は、御社にとって新たな挑戦だった?

【袴田】宇宙機という意味では、ランダーもローバーも基礎的な技術は多くが共通しています。ローバーは衛星にタイヤがついたものだと考えられますし、ランダーは衛星にエンジンがついたものだと考えられますから、類似性は多くあります。ただ、推進系などは、当時、我々が手がけていませんでしたから、新たにエンジニアを雇うなどして、開発能力を高めました。

――先ほど、2019年にSpaceILが月面着陸に失敗したというお話がありましたが、同年にはインド宇宙研究機関のランダーも月面着陸に失敗しています。月面着陸の技術はかなり高度なのではないでしょうか?

【袴田】月面着陸の環境を地球上で模して、何度も確認をしてから打ち上げるということができないので、非常に難しいんです。エンジンをコントロールする誘導制御の技術が重要なので、当社は実績のある推進系のコンポーネントを使い、アポロ計画のランダーの誘導制御のソフトウェアを作った米国のチャールズ・スターク・ドレイパー研究所と組んでいます。世界トップレベルの技術が築けていると考えています。

――現在進行中のプログラム「HAKUTO-R」では、2021年に初めての月面着陸をすることになっています。打ち上げロケットはスペースXのものを使う予定だとか。

【袴田】そうです。打ち上げの成功率はもちろん、重視したのは打ち上げの回数です。スペースXは、多い年で年間20回の打ち上げをしている実績がありますから。

――2021年というと、もうすぐですね。

【袴田】開発も一番重要な局面を迎えつつあります。

 

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