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元シャープの技術者が社長に。「何か」が違う美容家電で急成長

2021年09月07日 公開

【経営トップに聞く 第52回】高田栄和(KALOS BEAUTY TECHNOLOGY代表取締役)

KALOS BEAUTY TECHNOLOGY

高性能で使いやすい美容家電などを次々と開発して急成長している〔株〕KALOS BEAUTY TECHNOLOGY。売上ゼロだった同社を立て直したのが、シャープや大手美容機器メーカーなどを経て代表取締役に就任した高田栄和氏だ。どのようにして立て直したのか、話を聞いた。

高性能でかわいいヘアアイロンがヒット。半年で黒字化

――2018年10月期には売上高がゼロだったところから、2020年10月期には1億3800万円にまで伸ばしたということですね。

【高田】2019年5月に私が代表に就任する前の1年半は、売上がまったくゼロでした。

――代表に就任した経緯は?

【高田】前職は大手美容機器メーカーに勤めていて、そのときの取引先の方から声をかけられました。今、当社の役員をしていただいている方です。

 その企業では美容部門の統括をしていましたし、上場をするタイミングでもあったので、お話をいただいてから1年ほど経ってから、当社に移る決断をしました。

 私はもともとシャープ〔株〕で働いていて、その後、医薬品の製造装置メーカー、大手美容機器メーカーと、それぞれで様々なものづくりをさせていただきました。けれども、もっと自由に自分なりのものづくりがしたいと思い、株式の50%を買い取って、代表に就任したんです。

――売上がゼロだった時期は、営業停止状態だったのですか?

【高田】いえ。2017年11月に美容機器のメーカーとして創業したものの、作った美顔スチーマーがまったく売れなかったんです。私が見ても売り物にならないものでしたから、代表に就任したときに処分しました。

――代表に就任したときには、やることは決めていた?

【高田】声をかけていただいたときに、その声をかけていただいた方と一緒にやろうと言っていた製品がありました。ただ、そのときに扱っていたブランドと合わないので置いておいたんです。それを当社で製品化したのが、CANDYというヘアアイロンです。2019年7月に発売しました。

――CANDYの特徴は?

【高田】まず、かわいいキャンディの形をしていること。クッションプレートもついていて、温度は200度まで上がります。重さはわずか67gですが、性能は大きなヘアアイロンとほぼ同じ。電源はUSBなので携帯しやすく、いつでもどこでも使えます。

 初回2万本を製造すると、面白いと言っていただいて、ほぼすべての家電量販店に入荷していただきました。おかげさまで、2019年10月の期末までに約7万1000本売れました。

 関西コレクションで、CANDYを気に入っていただいた、YouTuberなどもしているモデルの佐藤ノアさんに、ブースでのトークショーをしていただくこともできました。

「お金の心配はしなくていいから」と言われていたのですが、代表になって通帳を見てみると、残高が2万2000円しかなくて驚きました(笑)。経費などを考えると2400万円くらいの赤字だったのですが、CANDYのおかげで、半年ほどで黒字化できました。

――残高2万2000円で、どうやってCANDYの開発や製造をしたのですか?

【高田】声をかけてくれた方が中国にも会社を持っていて、そちらで資金を建て替えてもらい、後払いしました。普通は先払いですから、大変ありがたかったです。

――販路は家電量販店だったということですが、どのようにして開拓したのでしょう?

【高田】当社は2020年2月まで〔株〕KINUJO BEAUTYという社名で、〔株〕KINUJOと一緒に事業をしていました。そこで、KINUJOに問屋を紹介していただいて製品を卸していました。ちなみに、現社名のKALOSは、ギリシャ語の口語で「美しい」という意味です。

 ただ、その問屋との関係は、今は切れています。子会社化の話をお断りして、取引きもやめたんです。

 今は、電響社グループに手を差し伸べていただき、取引きをさせていただいていて、同社を通じて、家電量販店や東急ハンズ、ロフトなどに製品を置かせていただいています。

 現状での売上は、量販店が6割、楽天、ヤフー、アマゾンでのECが2割、美容サロンが2割くらいです。

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