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文系ミドルの人生を一変させる「統計知識」

2022年04月05日 公開
2022年04月07日 更新

冨山和彦(経営共創基盤[IGPI]グループ会長/日本共創プラットフォーム[JPiX]代表取締役社長)

冨山和彦

「データ分析ができるようになれ」と言われても、専門人材は他にいるし、自分が一体何をすればいいのかわからない――そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは多い。特に社会人歴も長い文系ミドルは、何を目指し、何を身につければいいのだろうか。日本企業のDX戦略にも詳しいコンサルタントの冨山和彦氏にうかがった(取材・構成:坂田博史)。

※本稿は、『THE21』2022年5月号特集「文系ミドルだからできるデータ分析・活用術」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

データ活用が当たり前となり求められる人材が変わった

――データ活用の重要性がますます高まっています。その背景には何があるのでしょうか。

【冨山】私が現場にいた1990年代からデータ活用は行なわれていました。ただ、当時はデータが限られていた。今はIoTなどであらゆるものがインターネットにつながることで、ネットサービスだけでなく、様々なビジネスでデータ活用が可能となっています。

また、テクノロジーの発達により、安価に正確なデータを大量に収集することができるようになり、かつ分析ツールの性能も飛躍的に向上しました。AIなどによって自動で深い分析が可能となったわけですから、どのようなビジネスであっても、データ活用を行なうのが当然です。

――データ活用が当たり前になったことで、求められる人材にも変化が起きています。

【冨山】客観的なデータを活用することで、ビジネスはより科学的になっています。これまで感性やセンスに頼っていた部分が科学的になることで、理系的な頭の使い方が求められるようになったと言えるでしょう。かつては、解決手段=HOWのところで感性がものをいったのですが、ここがデータによって科学的になりました。

では、感性やセンスが必要なくなったのかと言えば、違います。「何を課題とするか」「何をゴールに設定するか」といったWHATの部分で、感性やセンスが重要になってきています。ビジネスの根幹や問題の本質など、「そもそも」を問うことができる人材の価値が上がっているのです。

 

いま圧倒的に不足している「バイリンガル人材」とは?

――理系的な頭の使い方が苦手な文系ミドルは、データ活用を行なうに当たって、どのような役割を担えばよいのでしょうか。

【冨山】理系的な頭の使い方が求められていますが、高度で先端的な統計学を使いこなす技量が多くの人に求められているわけではありません。

ビジネスの現場で求められているのは、新たに開発された分析ツールが導き出した分析結果をどう読み解くかです。分析結果は単なる数値に過ぎません。それらの数値をビジネスで活用できるように意味を持たせられるのは、人間だけです。

文系ミドルは、それぞれ自分たちのビジネスに精通しています。自分たちのビジネスを言語化することにおいては「ネイティブ」なわけです。ですから、それに加えてデータ分析結果を読み解けるだけの知識やスキルを、「第一外国語」レベルで身につければ、バイリンガルになることができます。このバイリンガル人材が、どこの企業でも圧倒的に不足しています。

――具体的にはどういうことでしょうか。

【冨山】統計では基本的には相関を見ます。例えば、石油価格の上がり下がりと、ある人のゴルフのスコアが偶然にも相関してしまうこともあり得ます。こうした相関はビジネス的には意味を成しません。相関をビジネス上のストーリーと結びつけられないと、トンチンカンな施策を打つことになってしまうのです。

分析結果をビジネスのストーリーに結びつけることは、分岐点が無限にあるために現状ではAIでも非常に難しく、人間が考えるほうが答えに早くたどり着けます。ここが文系ミドルの役割になります。ただし、統計数理を言語論理に書き換えることが役割なので、ファクトとロジックに弱い人は必要なくなるでしょう。

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