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「女子力男子」の消費力……女子化する男子の実態を徹底分析!



2015年03月10日 公開

原田曜平(博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー)

『Voice』2015年4月号より》

 

「ぬいぐるみ男子」「化粧ポーチ男子」……女子化する男子の実態

 

若い女性が保守化している

 昨年は、さまざまな場所やメディアで「マイルドヤンキー」が取り上げられました。キムタク(木村拓哉)主演のドラマ『HERO』で北川景子さん演じる麻木事務官が「私はマイルドヤンキー」と語る場面が放送されたり、「ユーキャン新語・流行語大賞」にも「マイルドヤンキー」がノミネートされました。

 著書『ヤンキー経済』(幻冬舎新書)が発売された昨年1月ごろから、同時並行で密かに研究を続けていた対象が「女子力男子」というものです。

 簡単に定義すると、「本来、女子(女性)が得意とされていた領域の力(女子力)が備わった男子(男性)」のことで、若い男性の「女子化」を指す「草食男子」や「イクメン(育児に積極的に協力する男子)」「弁当男子(弁当を自分で作って大学や会社に行く男子)」の系譜に連なるものです。細かい分類は著書『女子力男子』(宝島社)に譲りますが、私が調査をしたなかには、女子のようなかわいい仕草を人前でやってのける「ぶりっこ男子」や、減塩や無添加の食品や玄米などの健康食を好む「ヘルシー男子」なる男性も増えています。有名人でいえば、フィギュアスケート男子の羽生結弦選手は、ディズニーキャラクターの「くまのプーさん」が大のお気に入りで、練習中だけでなく本番中もプーさんの人形を肌身離さず持ち歩いているそうです。アイドルグループ嵐の二宮和也さんも「女の子より肌が綺麗」「幼さが残る笑顔が女子力高すぎ」とファンのあいだで話題になっています。

「女子力男子」に関心が向いたのは、「最近、女子側があまり面白くない」という変化を感じたことがきっかけでした。たしかに15年ほど前は女性が消費のトレンドを牽引しており、情報の発信者と受信者がともに女性の感覚に頼っていた時代でした。実際、携帯電話の使用目的やシチュエーションを女性からリサーチし、製品やサービスに反映すると、決まってユーザーからの反響が良かったのです。

 ところがここ数年、女性が発信するトレンド情報が出尽くした感が否めず、目新しさを失いつつあります。その背景にあるのは、働き方の変化です。一生、企業で働くことを嘱望する女性がいる一方で、若年女性とくに「ゆとり世代」の専業主婦志向が顕著に増えています。1986年に施行された男女雇用機会均等法を経て、女性の労働率は高くなったものの、非正規雇用率は男性に比べて高く、男女間の賃金格差がいまだに大きいことも影響しています。専業主婦願望を抱く保守的な女子が増えたことで、キャリア志向と消費意欲の高かったバブル世代~団塊ジュニア世代と比較すると、女性から新しいトレンドが生まれにくくなったといえるのではないでしょうか。

 もちろん、いまの若い女性が保守化したからといって若い男性が快活さを取り戻したとはいえませんが、男性の側に活発な変化が見られ、興味深い現象が生まれているのは事実です。近年の「流行語大賞」を見ても、2009年以降、先ほどの弁当男子(2009年)やイクメン(2010年)、日傘男子(2013年)など若い男性を象徴する言葉が多く選ばれています。

 私がリーダーを務める博報堂ブランドデザイン若者研究所には約200人の高校生から若手社会人までが加わって、月に一度、若い子のあいだで流行っているものを発表し合います。ある月に行なわれた発表会では、なんと同時に3人の女子から「化粧ポーチを持ち歩く男子がいる」と発表されたのです。

 しかも、発表者以外の反応を聞くと、どうやらこの「化粧ポーチ男子」は少なからずいる。男子が女子化している現象をさらに深掘りしてヒアリングしたところ、程度の違いはあれ「中学、高校のクラスでだいたい7~8割は女子力男子」という回答が複数、寄せられました。女子化した男子の割合が自分の肌感覚よりも圧倒的に多いことに、驚きを禁じえませんでした。

 

経済力が求められなくなった男子

 女子力男子が増えた理由は、大きく分けて3つあります。1つは、「男は男らしく、女は女らしくあれ」というジェンダー(性差)を重んじる社会的抑圧が年々減っていることです。20年ほど前は、男性の喫煙率が7割ほどで「タバコを吸ってない男はカッコ悪い」というレッテルが貼られていました。しかし現在、男性の喫煙率は3割台に低下しています。

 個人的な話ですが、幼少期の私は、車や電車など男の子の趣味には関心が向かず、従妹から譲り受けた『キャンディ・キャンディ』を好んで読むような少年でした。もちろん、引け目を感じて周りの同級生にはとてもいえません。ある日、学校で偶然クラスの女の子に少女漫画を読んでいたのが見つかり、からかわれたことがいまでもトラウマになっています。いまでこそ、少女漫画はテレビドラマや映画の原作になり、男子も当たり前のように読んでいますが、当時は風当たりが強かったのです。

 女子力男子は現代に突として生まれたのではなく、どの時代にも一定数が潜在的に存在します。ジェンダーの違いが重要視されなくなり、選択の自由が許容される世の中になったことで、これまで抑圧されていた女子力男子が表出し始めたのです。

 2つ目の理由として、ソーシャルメディアの普及が挙げられます。興味深いことに、女子力男子が増えている時期とソーシャルメディアが普及したここ5年の時期はおおよそ合致します。インターネットが普及する前、男性はデート中に恋人から化粧品やスイーツなど女性の流行を教えてもらうか、『an・an』や『Hanako』といった女性誌しか情報源がありませんでした。

 ところがいまやフェイスブックやインスタグラム(写真を加工してソーシャルメディアで共有するアプリ)を見れば、「北欧発の雑貨屋に行ってきました」「話題のパンケーキのお店に並んでるよ」といった女子に関する情報が大量に得られます。女性にモテる、モテないにかかわらず、男性が女性の情報を無抵抗に受容できる時代になったのです。

 さらに、ソーシャルメディアの世界は何かを議論し合う男性型のコミュニケーションではなく、共感を促す女性型のコミュニケーションの場です。社会的な抑圧が軽減したうえに、ソーシャルメディアを中心にした女子情報が氾濫すれば、趣味や嗜好まで女子化する男子が増えるのは自明の理です。

 3つ目は、1つ目の理由とも関連しますが、生活レベルが一定の段階まで上がり、社会が成熟したことで女子力男子が増えた、ということです。一般的に、貧しい時代や高度成長期には、国民が経済成長という目標に向けて突き進むので、男性型の競争エネルギーが社会の活力として求められる。ところが、経済や社会制度が成熟したステージに達すると精神的な豊かさや生活の質を重視するようになり、「コミュニケーションを大事にする」「お互いの価値を認めて助け合う」といった調和を重視する女性型の社会に向かいます。一般的に、女性のほうが男性に比べボキャブラリーが豊富でコミュニケーション力が高く、写真などを効果的に用いる表現力に長けています。日本でいえば、バブルが崩壊したあとの90年代が変化の境目でした。経済が成熟した調和型の社会において、女性は男性に経済力を求めなくなります。仕事はしても家事ができない男性より、自分の話を黙って聞いてくれ、同じ漫画やキャラクターを好み、料理や洗濯をする男性が評価されるようになったのです。

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