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「やってはいけない」と言われてもやり続ける、中国の「お国柄」

2020年03月05日 公開
2023年04月17日 更新

高口康太(ジャーナリスト),西谷格(ノンフィクションライター)

見世物的テクノロジーは淘汰される

西谷格 高口康太アリババがつくった近未来型ホテルのバーに設置されている自動カクテルマシン

【高口】 日本では、デジタルやAI(人工知能)について、「シンギュラリティが起きれば人類の危機に」「人間の雇用が奪われる」といった、将来の不安が先に出てきます。

一方、中国は「レストランの行列をなくしたい」「好きな場所で自転車に乗りたい」「家にいながら病院の診察を受けたい」といった、いますぐ解決できる現実的な課題に向き合っている。きわめて実用主義的です。

【西谷】 日本で新しいシステムを導入しようとすると、「こんなにデメリットがある」「いまのままでもいいじゃないか」など、「できない理由」が探されがちです。

社会が成熟している証拠ともいえますが、その一方で進化に対するブレーキが異常と思えるほど強い。

その点、中国にはブレーキなんて存在しません。つねにアクセル全開です(笑)。現地を取材しても、「スマホとネットを使って世の中を便利にするぞ!」という熱量は純粋にすごいと感じました。

【高口】 もちろん実用主義だけではなく、「未来っぽい何か」をつくってみたという代物もあります。一瞬話題にはなるものの、実用性がないので広まらずに消えていくという……。

『ルポ デジタルチャイナ体験記』でも紹介されているアリババホテル(「FlyZoo Hotel」)は典型ではないですか?

【西谷】 顔認証がキー代わりになるアイデアは、斬新で面白かった。その半面、ロボットアームのカクテルマシーンは正直、期待外れでしたね。

【高口】 人間がつくったほうが絶対に速い(笑)。上海の飲食店にも同じ機械がありましたが、完全に見せ物です。

【西谷】 「無人コンビニ」も、どちらかというと見世物的な要素が強く、無人化する必要性・必然性は感じられませんでした。

【高口】 「無人」という未来感ある言葉は、一瞬、心がかき立てられます。ただ無理に無人にするよりも、機械が強いところは機械に任せ、それ以外は人間が担うほうが効率的です。

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