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「マイナス思考」の人ほどビジネスに向いている理由

金児昭(経済・金融・経営評論家/信越化学工業顧問)

2012年05月28日 公開 2022年12月26日 更新

小さなことに悩むのは、無駄ではない

小さいことにも悩む、これはマイナス思考の典型です。「あのとき、あの道を通らなければよかった」「何で、あんなことを言ってしまったんだろう」といった小さなことを思い悩むのは、時間の無駄と思われるかもしれません。

しかし、そうした逡巡こそ、次への望ましいステップにつながります。細かいことを気に病んであれこれ心配するのは、仕事をする上では必要なことです。

小さなこととは、とるに足らないことだけではありません。これまでに、意識していなかったことも含まれます。

私は日本の会社で38年勤めてきて、自分が日本で働いていることについて、特に疑問を持ったりしたことは、ほとんどありませんでした。なんとなく、どこの国で仕事をして生活していても、病気にならなければ、世界中そんなに変わりはないのではないかと、思っていました。

 つまりこれまで「国」は小さくて、はっきり意識することも、とりたてて考えることもないものでした。

今日の状況は、日本で生まれて日本人として育ったからといって、必ずしも、日本で生活することがあたりまえとはいえません。そこで、海外で生活の糧を得て、生活しなければならないとなると、「国」の問題は重要になってきます。

日本であたりまえのように思っている環境が、他の国では、まったくあたりまえではないということもあります。たとえば、日本では、夜でも出歩くことがあたりまえですが、そんなことをしたら危険だという国もあります。一方でその国は、地震については心配しなくても大丈夫な国かもしれません。

ちょっと横道にそれますが、日本では今、総理大臣が毎年のように替わるのは、嘆かわしいことだと言われる向きがあります。政権が変わり、総理大臣が猫の目のように変わることがグローバル社会において、恥ずかしいといった声も聞かれます。

けれども考えようによっては、それは民主政治がうまく根づいて機能している証拠とも言えます。毎年総理大臣が替われば、独裁政権になる心配はありません。20年、30年と続く独裁政権下では、人々の暮らしが安心できるものであるとは到底言えないのです。

日本が民主主義であるということはこれまであたりまえすぎて、気にもとめなかったことです。しかし、これまで意識してこなかったというだけで、心配する必要がないということではないのです。

 

変化が激しくなると、小さなことが重要になる

ヨーロッパの経済危機が起きてから、人々は世界経済について心配しはじめました。それまでは、世界経済は人々にとって、考えなくてもいいほどの小さいことでした。それは経済学者が考えることだと、みんなが思っていました。

しかし、今このような事態になって、しかもどんな立派な学者にも解決策がわかりません。専門家や評論家は、分析や解説はしますし、このままいくと世界が大不況に陥るぞと言って、脅します。

でも、どうしたらいいかを唱える人は誰もいません。ここにきて、経済学なんてものが本当は役に立たないものだとようやくわかってきたのです。

こうした時代にあって、自分の身を守ってくれるのは、自分だけです。「もし世界経済がもっと悪くなったら、どうしたらいいか」と、あれこれと考え抜いておくことは、決して無駄ではありません。

これまで考えてこなかったこと、忘れていたことは、自分にとって小さなことです。そういう小さなことに、用心深く構えて、気をもんだりするのは、必要な姿勢だと思います。

小さなことに意識を向けて、その価値や問題点を再認識してみるよいチャンスです。

 

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