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コロナ以降「利益を重視する企業」ほど経営危機に陥りやすくなった理由

斉藤徹(株式会社hint代表/ビジネス・ブレークスルー大学教授)

2023年03月08日 公開 2024年12月16日 更新

『だから僕たちは、組織を変えていける』(クロスメディア・パブリッシング)のベストセラーで今注目の斉藤徹氏は、事業家として行きすぎた資本主義の課題を目の当たりにし、ソーシャルシフト以後の新しい経営のあり方や組織づくりを追究し続けてきた。コロナ・ショックでさらに加速する変革期に、これから求められる理念経営や働きがいについて語る。(取材・構成:時政和輝)

※本稿は『[実践]理念経営Labo』(2022 SUMMER 7-9、Vol.2)「幸せ視点で考える経営――『自走する組織』に変わるために」を一部編集したものです。

 

ソーシャルシフトの真っ只中で

私たちは今、新たなパラダイムシフトに直面し、かつてない変革の真っ只中にあります。産業革命以降、大量生産・大量消費の工業社会が隆盛を極め、1990年代から2000年初頭にかけて、いわゆる「IT革命」によって情報社会へと発展しました。そして今、迎えているのが「ソーシャルシフト」。SNSなどソーシャルメディアによってもたらされた社会変革です。

ソーシャルシフトが進むにつれて、ビジネスや会社組織のあり方はもちろんのこと、私たち一人ひとりの働き方や人生プランまでもが、これまでとはまったく違ったものに変わっていくでしょう。そして当然ながら、私たちにもマインドチェンジが必要となります。私はその際にキーワードとなるのが、「幸せ視点」だと考えています。

そう思うようになったわけは、私の苦い経営体験にあります。大学卒業後、コンピュータ業界で技術者として仕事をしていた私は、IT技術の進歩とともに世の中が指数関数的なスピードで変わっていくことを肌で感じました。そこで30代前半で独立し、ソフトウェア開発の会社を2度起業しました。しかし、その中で4度も倒産の危機に見舞われたのです。

特に4度目は2008年に起きたリーマン・ショックの影響をまともに受け、契約寸前だった大型案件が消滅。1億5000万円の債務超過を抱えることになり、50人いた社員も7人までに激減しました。

 

倒産危機に陥り「お金視点の経営」を見直す

なぜ、何度も倒産危機に陥ったのか。問題の根底には、急速な事業拡大を求めた無理な資金調達がありました。お金を借りたり調達したりすると、必ず一定期間に一定量のお金を返さなくてはいけません。すると、経営判断もお金に縛られたものになっていきます。"これをやりたい"という思いや理念があっても、お金中心の考え方にならざるをえず、次第に思いや理念から逸れていく。皮肉なことに、お金を追求すると、かえってお金に苦しめられるのです。

当時、私は47歳でした。人生も後半にさしかかっています。はたして、どうしたら残りの人生を幸せに生きられるのだろうかと、改めて自分に問い直しました。

「みんなが幸せになってほしい。そのために、私は生まれ変わりたいし、会社も変えたい」。それが私の偽らざる思いでした。これまでの「お金視点の経営」をきっぱり止めて、「幸せ視点の経営」を実践することを決意したのです。

それからは、顧客の立場になってコンサルティングをするのはもちろんのこと、顧客のためになるなら自社製品にこだわらず他社製品を採用したりと、徹底的に顧客のことを第一に考えました。短期的に利益を上げるために顧客とつき合うのではなく、長期的な信頼関係を築いていこうと、方針を180度変更したわけです。

社員たちにもいろいろと苦労をかけましたが、私の思いを信じて一緒によく頑張ってくれました。そして2年後、ついに多額の借金を7人で返済することができたのです。

お客様の幸せをどこまでも追求していく。これがビジネスの原点だと改めて痛感しました。そして何より大きな収穫は、そのような考えで活動するうちに社員たちにも幸せな表情が浮かぶようになり、みんな充実感を持って仕事に取り組んでくれるようになったことでした。

こうした経験によって、追求していくべきは「幸せ視点の経営」だと確信した私は、連続起業家として活動するかたわら、大学やオンラインスクールでソーシャルシフトに向けた経営学やビジネスのあり方を探究し、教え広めてきました。

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「共感」「信頼」がキーワード

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