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1日5分ゆっくり走る...“60歳から現れるうつ症状”に効果的な生活習慣

秋田巌(メンタルクリニック オータム院長)

2023年03月16日 公開 2024年02月02日 更新

 

効果的な日光浴のやり方

朝からスロージョギングやインターバル速歩ができればいいですが、無理はしなくてよいので、朝日を浴びながらの短時間の散歩はぜひ実行してみてください。

真夏や真冬は厳しいかもしれませんが、できるだけ肌を露出して日光に当たることで、体内ではセロトニンの分泌、そしてビタミンDの合成が行なわれます。

60歳以降の人は特に、胸の上あたりにある「胸腺」を日光に当てることをおすすめします。胸腺は免疫力に関わるT細胞などを作る部位ですが、加齢に伴って脂肪化してしまうことで、機能が衰えてしまいます。

しかし、日光を当てることで活性化し、機能がよみがえり、免疫力アップにつながるのです。

15分でも結構ですので、胸元が大きめに開いた白っぽい服(黒い服は光を吸収してしまいます)で日光浴、あるいは日差しのなかの散歩をしてみてください。

本当のことをいうと、真っ裸でお天道様の恵みを浴びるのがもっとも効果的です。もちろん屋外では違法ですからできませんけれども、海外にはヌーディストビーチなるものがありますが、あれは健康法としてとても理にかなっているものです。

外に出られない時は、窓越しでもいいので、日光浴を試みてください。一日中室内で過ごすのなら、昼間は窓際にいるようにしましょう。

もう一つ、日光浴のコツとしては、太陽の光の恵みを目から取り入れるということです。

当然ながら目を開けたまま太陽を見てはいけません。目を閉じてお天道様の方向に数分間でよいので顔を向けることで、目からも太陽のエネルギーを取り入れることができるのです。

光刺激が網膜から入ることによって、セロトニン合成が始まることは明らかになっていますが、太陽光は脳のエネルギーにもなっており、他にもお天道様の恩恵は確実にあると思います。

顔に日差しを浴びるなど、特に女性は日焼けを気にして抵抗があるかもしれません。しかし、近年は紫外線対策のしすぎで、ビタミンD不足に陥っているというデータもあります。何らかの皮膚病や紫外線を避けなければならない病気でない限り、あまり気にしなくてもよいのではないでしょうか。 

森林公園などの芝生の上でゴロゴロと、うつぶせになったり仰向けになったりしてまんべんなく体を日に当てることは、天然かつ最上の光療法だといえるでしょう。

 

止めたいと思っている生活習慣

おすすめの生活習慣について述べましたが、一方で止めたほうがいい生活習慣もあるでしょう。それは何かというと「自分が止めたいと思っている生活習慣」です。

例えば、タバコを止めたいと思っているけれど止められない。そのストレスがよくありません。そういう場合はがんばって止めることが大事です。

とはいえ、もし「気持ちよくタバコを吸っているので、そこまで止めたいとは思っていない」ということであれば、無理して止めることはないと考えています。

お酒についても同様です。適度な量を気持ちよく、休肝日も設けて飲んでいるのであれば、無理して止める必要はないのではないでしょうか。

当然ながら、COPD(慢性閉塞性肺疾患)やアルコール依存症の場合は別問題で、もちろん止めたほうがよいですし、難しい場合は何らかのサポートを得てでも止めるべきです。

ご自分で体調をコントロールできている限りにおいては、一概に止めたほうがいいとは思いません。ご自分の体の声をよく聞いて、判断してみてください。

 

自分の体の声を聞くということ 

うつになりやすい人というのは、そうでない人よりも繊細な人です。

ですから、何でもないようなことに思えますが、運動や日光、水、空気などの当たり前の環境を整えて、下支えをしていくことは、とても重要なことなのです。

また、繊細だからこそ、「自分の体の声を聞く」という力をつけていってほしいと思います。どのような治療を選択するにせよ、ご自分の心身の状態をよく観察できることは何よりも大事だからです。

「体の声を聞く」とは、自分の心身の状態を観察するとか、自分で自分の調子をつかむといった感じです。

例えば、数字だけにとらわれないこともその一つです。

血圧やコレステロール値など、基準値そのものが当てにならないということもありますし、BUNやフェリチンも数字だけがすべてではありません。

当院でもこれらを測定して治療方針を決めていますが、フェリチンが少ししか上がらなかったとしても、症状はすっかり消失したというケースもあり、数字だけがすべてではないと考えています。 

医学的な検査もどんどん進化しています。

画像診断技術のMRIが出てきた時は、その精緻さに驚いたものでしたが、現在はPETなど、より進んだ技術が出現しています。

しかし、これらは現状で最先端であっても、100年後、あるいは1000年後には「当時はこんな未熟な技術だった」でしかないでしょう。

「エビデンスを示せ」と鬼の首を取ったようにいわれることも、現時点での医学や科学的根拠でしかないわけですから、未来の新発見でどのように覆るかもわかりません。

つまりは、どんなに精密な機械で検査したり、血液検査の評価に照らし合わせたりしても、自分の体のことがすべて把握できるわけではないのです。

ですから、ご自分の感覚や勘を磨くことを気に留めていただきたい。体の声を聞く、これは自然のリズムに沿って暮らしていた昔の日本人なら得意であったと思います。

しかし、何でも数字で判断しようとする科学盲信の時代になって、苦手になってしまいました。その能力を再び取り戻さなくてはいけないと思っています。

iPS細胞の研究で知られる山中伸弥先生の言葉の通り、「われわれは、人体の神秘の1%をも理解していない」のですから。

 

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