ルーティンが衰えの原因? 50歳からの「前頭葉を活発化させる」生き方
2022年12月11日 公開
日々ルーティンワークを繰り返していると、前頭葉はどんどん衰えていきます。老後の人生を充実させるには、50歳から新たなチャレンジに取り組み、前頭葉をトレーニングすることが必要です。和田秀樹さんが解説します。
※本稿は、和田秀樹著『50歳からの「脳のトリセツ」 定年後が楽しくなる!老いない習慣』(PHPビジネス新書)から一部を抜粋し、編集したものです。
経験したことのないことに挑戦しよう
前頭葉は、経験したことのないことに向き合うときに働きます。
ルーティンワークや予想通りの出来事は、前頭葉をスルーして側頭葉や頭頂葉で情報処理されますが、未経験なこと、予想外のことは前頭葉で処理されます。前頭葉を鍛えるには、新しい経験を人生に多く取り込むのが一番なのです。
今50歳前後になっている方は、日本経済の過渡期に社会人生活をスタートさせています。新入社員となったタイミングは、バブル期から就職氷河期の初期。
つまり、経済成長の残照が消え去る直前の時期です。言い換えると、今の50歳前後は、ルーティン通りに頑張ることが出世に結びついた最後の世代だということです。
バブル崩壊後も、多くの日本企業は「これまでしてきたことを繰り返せばいい」という考えにとらわれ続けました。そうした気風の会社に入った方には、「前と同じように」「先輩と同じように」「上司の言う通りに」という思考が刷り込まれたことでしょう。
そして20代の後半くらいの時期に、今度は逆にアメリカ型に変えないといけないという強迫観念のもとにコンサルの言いなりになって、これまでのよかった点を考えることなく、改革に従わないといけなくなったのです。
これでは前頭葉は鍛えられません。もしあなたがそうしたレールに乗って来たとしたら、一度立ち止まって、考えてみてください。その思考のままでいることは、あなた自身のため、会社のためになるでしょうか。
明らかに、答えはNOでしょう。
今こそ、自分で考え、これまでと違うことに挑戦するべきときです。それがあなたの前頭葉を鍛えることになり、会社に貢献することにもなります。
50歳からはマインドセットを変えよう
50歳前後の方々は、新社会人になった30年前と同じく、今も過渡期にいます。それより上の世代は、「前と同じように」「偉い人の言う通りに」することで出世できた世代です。そうして順調に出世した人々は今、政界や学界や企業の上層で、既得権益にしがみついています。
50歳前後は、その流れを変えられる世代です。さらに言えば、変えなければ大変なことになります。人口のボリュームゾーンをなしている50歳前後が、そろって前頭葉を衰えさせていくとなると、日本の未来が危うくなると言っても過言ではありません。
国の将来のみならず、個々人の人生の充実度も損なわれます。前頭葉が衰えても幸福度は損なわれませんが、度を超した「楽」は「退屈」になります。
日本人の寿命は昔より大幅に延び、定年後の人生が20年、30年と続くことも珍しくなくなりました。その30年が「退屈」に塗りつぶされるとしたら、かなり苦痛な後半生です。老化が進んで認知症に突入すれば、さらに楽しむことが困難になるかもしれません。
そんな老年期を迎えたくないなら、今がチャンスです。50歳前後のうちに、生き方を変えましょう。つまり、前頭葉を働かせる人生に切り替えるのです。