獣医師にとって困った飼い主とは
獣医師に限らず大勢の人を相手にする仕事の場合、困るのはほかの人(や動物)たちに迷惑をかける言動です。
動物を愛するがゆえかもしれませんが、「特別扱いを求めてくる人」がいます。例えば混雑した待合室で順番を早めてほしいといろいろな理由を訴えてくる人、個人的な事情で時間外に診てほしいというようなときです。緊急の場合以外はその病院のルールに沿って協力していただきたいところです。
そのような場合、ほかの動物たちの診察や処置中であっても、スタッフは手を止めて対応しなければなりません。自分の家の子がいちばん大切という気持ちはよくわかるのですが、みんな同じ気持ちで順番やルールを守っています。
猫の負担が大きいドクターショッピング
2つ目は「ドクターショッピング」でしょうか。診断に納得できなかったり、治療内容にこだわりすぎて、いくつもの病院を渡り歩いている方です。
診てもらっていた先生の意見を基本にして、別の第2の視点で意見をもらい、今後の治療方針を検討するセカンドオピニオンとちがい、ドクターショッピングは、獣医師や診断結果への一方的な不信感が先立ち、転院を繰り返して自分の理想像に合った先生を探し求める行為です。
転院先でも同じような診断になる場合が多いのですが、納得できずまた別の病院へ移ることで治療が中途半端なまま次の獣医師にバトンタッチされます。
過去の病歴の情報を正確に得られず以前の状態がよくわからないことも多いので、最初から検査を行うことも多く、動物たちの負担は計り知れません。
飼い主と獣医師は同じ目的をもつ協力者
そのほかに困った経験として思いつくのは、
・ 獣医師の話(説明)をまったく聞いてくれない
・ 説明通りに治療をせずに勝手にやめてしまう
・ 感情的に怒りだす人
などでしょうか。
ただ実際は、獣医師が注視するのは動物たちなので、飼い主さんがどういう人かという視点は少ないように思います。
飼い主さんに思うこと・言いたいことというより望むことは、言葉を話せない動物たちの日々の状態や変化を、代弁者として獣医師に伝えてほしいということ。大事な動物を幸せにすることができるのはいつも近くにいる飼い主さんしかいません。
獣医師は飼い主さんからの情報が頼りです。飼い主さんと獣医師は「動物のために」という共通の目的をもつ協力者であるという認識のもとで治療にのぞむことがいちばん望ましいですね。