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生き方

“僻みっぽい人”の奥底にある、親にわがままを認められなかった記憶

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2023年07月19日 公開 2023年07月26日 更新

他人への嫉妬心や怒り、または自分への失望感に囚われて苦しんでいる人がいます。誰もが幸せになることを望みながらも、前進することに困難を抱えているのです。そんな人たちが一歩前に進むには、何が必要なのでしょうか。

心理学者の加藤諦三さんが、「先哲の言葉」が持つ意味をひもときながら、「心を成長させること」の大切さを語ります。

※本稿は加藤諦三著『ブレない心のつくり方』(PHP文庫)より一部抜粋・編集したものです。

 

素直になれない原因は「欲求不満の積み重ね」

どうしても素直になれない人がいる。本人も意識して素直になろうと思っていても、なかなか素直になれない。素直に人のいうことを聞くのは想像以上に大変なことである。なぜなら感情と意識とは、脳の別の箇所から生まれてくるからである。

「そしてそれを逃れることは意識から逃れるよりもずっと難しい(註1)」

素直になれないのは無意識にある今までの欲求不満の積み重ねが原因である。それは退行欲求への固着を表現している。人が成長することは至難なことである。

マズローは「何が、人が成長することを妨害するのか?」と問う(註2)。「人にとって先に進むことがなぜそれほどまでに難しく辛いのか?」と問う(註3)。

人は成長する以外に生き延びる道はないのに、人はそう簡単に成長出来ない。成長出来なくて、斜に構えたり、僻んだり、妬んだり、人に絡んだり、怒りをまき散らしたり、「私は凄い」と傲慢になったり、恨みがましく落ち込んだり、復讐心に囚われたり、無気力になったり、最後はどうにも出来なくなって「死にたい」と願ったりして苦しんで生きている。

成長出来れば全て解決するのだが、それがなかなか成長出来ない。成長が困難でなければ、誰もわざわざ嫉妬に苦しんだり、自己不適格感に悩んだり、自分の人生に積極的関心を失ったりしない。

成長なくして幸せなし。これが先哲の教えである。

 

努力して心を成長させることが幸せへの道

しかし人は成長を拒否して、幸せを求める。自分のしてきたことを棚に上げて、要求だけはする人がいる。そしてその要求が通らないと相手を酷い人だと恨む。横綱になりたくても、横綱になる努力をしない。

要するに幸せになりたいけれど、辛いことはいやということである。甘やかされながら幸せになりたいということである。

しかし「それは無理だ」ということを先哲はいっている。ことに恵まれない環境で成長した人は、生まれた時から疲れているから、成長を拒否しがちである。恵まれた環境で生まれた人は生きるエネルギーを親からもらえるが、恵まれない環境で成長した人は、生きるエネルギーをもらえない。

でも幸せになるためには成長しなければならない。マズローは、次のようにいう。

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私たちは満たされない欠乏欲求がもつ固着や退行の力についてもっと十分に知らなければならない。安全や安定の魅力についてもっと知らなければならない。苦悩、恐怖、喪失、脅威に対する防衛と保護の機能についてもっと十分に知らねばならない。成長し前へ進むために勇気が必要だということをもっと知らなければならない。(註4)
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要は、成長欲求に従うよりも退行欲求に従った方が楽ということである。子どもが何かをした時に親は誇大に誉めるが、大人になっても、そのように自分を誉めてくれるだろうと期待していた。ところがその誉め言葉がなかった。それで深く傷つく。

小さな子は、みんなが自分のことをいつも気に掛けていないと怒る。小さな子どもは、自分のことが常に優先順位一位でなければ気が済まない。それが子どもの自己中心性である。

子どもは自分にとって一番の関心は、皆にとっても一番の関心でなければ気が済まない。そうでないと不当なことに思える。子どもにとってはそれが自然。しかし大人になったらこうはいかない。そして心理的に成長出来なかった大人はいつも傷つく。

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自分を愛してくれる人を排除しない

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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