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生き方

「他人に認められなければ」という焦燥感から離れる“たった一つの方法”

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2023年07月13日 公開 2023年07月26日 更新

 

「他人に認められなければ...」と悩む人が、不安から救われるには

今の不安は、これまでの生き方のツケである。自分を裏切り続けて生きてきたツケである。

男の「スーパーマン願望」は「お父さん! 認めて」という叫びである。不安で自己不在だから、とにかく人に認められたい。人に認めてもらう以外に自我を確認しようがない。つまり無駄な努力以外に自我の確認をしようがない。

美人であることを誇示している人たちは、最も劣等感に悩んでいる人たちである。周りの人からは「嫌な人」と思われている。でも劣等感を持つと周りが見えない。

人に認められようとすることは退行欲求である。深刻な劣等感のある人は、人に認められること以外に努力を向けることは苦しいことである。なぜならそれは、退行欲求を退けて、成長欲求に従うことだからである。

しかしこの時に体験する苦しさ以外に、人を救う道はない。

悩みの原因の説明をすると、悩んでいる人はよく「ではどうすれば良いのですか?」と質問する。

しかし、「ではどうしたら良いか?」という前に「自分は今、なぜこうなのか?」ということを考えるのが先決である。「他人に認められる」を、少しずつで良いから「他人ではなく、神様に認められる」という考え方に変えていくことである。

神様といっても宗教のことをいっているのではない。自分の心の中の神のことである。自分の「心の砦」である。自分の心の中にある核に頼ることである。不安な人は、不安を和らげる方法は、成功することだと思うであろうが、しかし現実には成功しても不安は和らがない。

だから自分の心の中の神様に認められることで、不安を和らげることを考えるしかない。自分の「心の砦」を築くことに力を入れるしかない。そしてその方向に態度を変えてみると、ある時「ふと」、安らぎを感じる。

人から認められることではなくても、自分の自我を自分が確認することが出来る。

先に引用した、「われわれは、たえず"成功"を求めて努力すべく駆りたてられている。これは自分の自我を確認し、不安を和らげる大事な方法である」という言葉が完全に当てはまる人は、心の安らぎを感じる体験をしていない。心の安らかさを味わっていない。

心の安らかさを体験していない人に対して、「成功を求めて努力するな」といっても、無理である。それは敗北としか解釈しようがない。

しかし自我の確認という心の安らかさを、ほんの少しでも味わえば、考え方は変わる。「成功とは全く別に、自我の確認という心の安らかさがあるのかもしれない」と感じる。確信できなくて良い。「もしかすると?」という程度で良い。懐疑を持つだけで良い。

「たえず"成功"を求めて努力すべく駆りたてられている」人は、成功以外に心の安らぎはないと根っから思い込んでいる。

そういう思いの中で、ふと、「神様に認められる」ということに目を向けることは、その疑いのない確信に風穴を開ける可能性がある。「あれ?」と感じることがあるかもしれない。

だからこの自分の心の中の神様は、人間に甘い神様で良い。

優しくて適当な神様で良い。こんなに努力しているのに誰も認めてくれない。悔しい。そういう時に夜空を見上げて、誰も見てくれていなくてもきっと神様は見ていてくれる。そう信じられれば、「心の砦」が出来る。それが「自己の内なる力」になる。

千里の道を我は行く、その覚悟を作ってゆく。「自己の内なる力」は自家発電である。誰も辛い気持ちを理解してくれなくても、あの夜空にいる神様は理解してくれている、そう信じて一人で立ち上がる。

【註1】Rollo May, The Meaning of Anxiety, W. W. Norton & Company, 1977,『不安の人間学』小野泰博訳、誠信書房、1963年7月25日、137頁
【註2】前掲書、137頁
【註3】前掲書、139頁

【著者紹介】加藤諦三(かとう・たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

 

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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