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生産性は上がるのか? コロナ禍後、曖昧な理由で“出社を求める企業”の特徴

松本順市(ENTOENTO代表)

2023年06月30日 公開 2023年12月12日 更新

 

生産性の高い仕事のやり方を特定する

企業において生産性の高さを評価するための体制が整っていないことは、大きな問題と言えます。この問題をどう解決したらよいでしょうか。まずはスタッフ職の生産性指標を設定から始めることです。

例えばスタッフ職の業務を、処理した伝票数を時間で割る「1時間あたりの処理伝票数」、入力したデータ件数を時間で割る「1時間あたりの入力データ件数」、請求書の発行枚数を時間で割る「1時間あたりの請求書発行枚数」など、実際にやっている仕事を指標に落とし込むことができます。

これによって、それぞれの社員の生産性の違いがはっきりと分かってきます。それは意欲の問題以上に仕事のやり方の違いと言えるでしょう。

次に、生産性の高い仕事のやり方を特定しなければなりません。それを特定したら、全社員に共有します。自分の慣れ親しんだ方法を曲げたくない社員もいるかもしれませんが、全社員で"生産性を高める"という目標に向かって取り組む以上、生産性の高いやり方を真似する必要性を教えなければなりません。

大事なことは、テレワーク勤務と出社勤務のそれぞれのメリット、そして結果としてどちらの方が生産性が高いのか、企業として社員に明らかにすることです。

テレワーク勤務の生産性が高いとわかれば、大いに推奨するべきでしょう。出社勤務の生産性が高ければ、出社してもらうことになるでしょう。

生産性指標は全ての社員が理解できる指標です。その指標を活用しながら全ての社員が生産性の高い仕事のやり方に取り組まなければなりません。

解決すべきことは、我が社には生産性の高い仕事のやり方と生産性の低い仕事のやり方が混在していることです。この中から生産性の高いやり方を特定し全社員に共有をしたら、社内にあるノウハウだけで組織全体の生産性を今すぐ上げることができます。

残念ながら現状は多くの会社が機会損失をしているのです。この生産性を上げるやり方は、新しいことを学ぶ必要はありません。すぐやれることをすぐやることがとても重要だと考えます。

 

生産性を評価の対象とする前に

ただし、現状で生産性を上げるための仕事のやり方が特定されていなければ、生産性をすぐに評価の対象として処遇(昇給・賞与)に反映させることはできません。これから新しく生産性を評価するのであれば、少なくとも半年から1年間は仮評価にして、社員が新たな仕事のやり方に挑戦する期間を設ける必要があります。

この間は、生産性を上げるための仕事のやり方は評価するが、処遇には反映させないという約束が重要です。それによって、社員は次から次へと新しいことに挑戦するでしょう。失敗してもマイナス評価がされないと約束されているからです。

まず、今やらなければならないことは生産性指標を明らかにすること、そしてデキる社員の仕事の進め方を特定して全社員で共有することです。これによって組織全体の1時間あたりの労働生産性は間違いなく高まります。

スタッフ職一人一人に浸透すれば、会社全体の生産性を押し上げ、結果として会社に利益が残り、全ての社員の賃金を上げられるようになります。ここが大変重要であり、多くの企業で取り組む必要性があるでしょう。

 

【松本順市(まつもと・じゅんいち)】
株式会社ENTOENTO(エントエント)代表。1956年生まれ。 中央大学大学院中退後、株式会社魚力に入社し、業界初のサービス残業ゼロ、完全週休2日制を実現。 93年に独立し、中堅・中小企業を中心に人事制度改革の指導・支援を展開。 2021年3月末までに1301社の人事制度を構築した。 著書に『社員が成長し業績が向上する人事制度』(日本経営合理化協会)など。

 

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