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88歳、団地ひとり暮らし...「レシピにならない簡単調理」が豊かな食生活のコツ

多良美智子(シニアYouTuber)

2023年06月26日 公開 2024年12月16日 更新

孫が撮影する「Earthおばあちゃんねる」で登録者数15万人の人気シニアYouTuber・多良美智子さん。米寿でありながら溌溂と元気な美智子さんの健康の秘訣は、「日々の食事」にあるといいます。

美智子さんが料理をする際のモットーは「簡単でおいしい」こと。調理師免許も持つ美智子さんが、日々無理なく続けられる「超簡単料理」のコツをご紹介します。<写真:馬場わかな>

※本稿は、多良美智子著『88歳ひとり暮らしの元気をつくる台所』(すばる舎)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

行き着いたのは「簡単でおいしい」こと

昭和9年に長崎で、8人きょうだいの7番目に生まれました。10歳の頃に被爆して終戦を迎えました。長兄は戦死し、母は終戦の翌年にガンで亡くなりました。長兄以外はみな女で、シングルファーザーになった父が姉妹7人を育ててくれました。

高校卒業後は、大家族から離れて自活をしてみたかったので、大阪に出て働き、ひとり暮らしを経験しました。その後、長崎に戻って再就職。その職場で、前妻を亡くして10歳の娘がいる、9歳年上の男性と出会い、27歳で結婚。男の子2人に恵まれました。

夫が勤めていた会社が倒産して転職のために、長崎から神奈川に引っ越しをし、当時新築だった50平米ほどの団地に入居。以来56年間、88歳の今も住み続けています。子どもたちはとうに独立し、夫は8年前に亡くなりました。

私のひとり暮らしは、食事をつくったり、洗濯や掃除をしたり、買い物に行ったりとごく普通の毎日です。楽しみは家での読書や針仕事、地元の高齢者コミュニティや市民センターで週1〜2回、習い事や趣味の会に参加すること。年相応の不調はありますが、おおむね元気でマイペースに過ごしています。

2020年、次男の息子である孫(当時は中学生)とYouTube「Earth おばあちゃんねる」を始めました。最初の動画をアップしたのは8月9日、長崎原爆の日でした。

はじめは、コロナ禍で会えない親族に手紙を出すような気持ちでしたが、思いがけずたくさんの方々に見ていただいています。おかげさまで、登録者数が15万人を超えました。それがきっかけで昨年、本も出版させてもらいました。

次男は数年前からシングルファーザーとして、ひとり息子である孫を育てています。YouTubeを始めたのには、孫の得意なことを応援したいという気持ちもありました。

慣れないふたり暮らしが大変な時期、私が神奈川から千葉の家に通い、食事をつくっていました。今は、遠出が難しい年齢になったので、月に2回ほど週末に次男親子がわが家に来てくれています。私のつくった料理を一緒に食べ、それを動画に撮って、YouTubeにアップすることが多いです。

生家の両親も姉たちもみんな、食べること、料理をすることが好きでした。だから、私も自然にそうなりました。料理歴は高校生の頃から。それから70年、ずっと料理をしてきました。65歳のときには調理師学校に通い、免許をとりました。

いろいろな料理をつくってきましたが、行き着いたのは「簡単でおいしい」こと。シンプルが一番です。本稿では、そんな私が普段つくっている料理、いえ料理とも言えない「料理以前の超簡単料理」をご紹介します。

 

味付けは「食べるときに」、「薬味でメリハリ」

調理を手早く、ラクにするために、味付けは「食卓でする」ことも多いです。

たとえば、鶏もも肉を鍋に入れて、ほおっておくだけのゆで鶏は、とくに味付けはしません。粗熱がとれるくらい冷めたら、薄く切って器に盛りつけ、酢醤油でいただきます。

ぽん酢醤油でもいいのですが、醤油に酢を足すだけの酢醤油がお気に入り。酢が大好きなので、ちょっと多めに入れて、好きな味に調整できます。

子どもの頃は、庭の橙の木から実をとってきて、それを絞って醤油に加え、ぽん酢醤油をつくっていました。

この酢醤油は、何にでも合う万能たれです。鶏皮をゆでて細切りにしたもの、エリンギをさいて魚焼きグリルで焼いたものなど、味付けなしで調理したものがおいしくなります。晩酌の肴の湯豆腐は昆布出汁で薄く味つけして、食べるときには酢醤油です。

ちょっと意外な使い方は、すりおろした山いもにかけること。ご飯にかけると、何杯でも食べられます。子どもたちも大好きで、安上がりなので家計がピンチのときによく登場しました。

私は、酢醤油に柚子胡椒を添えます。九州の名産ですが、今はどこでも手に入るようになりました。柚子胡椒は私の食事に欠かせません。酢醤油に合わせるだけでなく、うどんに入れたりもします。シンプルな料理にアクセントを添えてくれる、まさしく万能の調味料です。

ちくわは切っただけでお皿に盛り、わさび醤油でいただきます。豆腐はこれも、器に盛るだけの冷奴が夏の定番です。小ねぎ、しょうが、みょうが、大葉などの薬味、カツオ節をたっぷりのせます。

薬味も「食卓での味付け」のひとつですね。柚子胡椒と同様、シンプルな料理にメリハリを加えてくれます。

小ねぎの小口切りとしょうがのすりおろしは、冷凍庫に常備しています。小ねぎは買ってきたら、すぐに全部小口切りに。「時間のあるときに」と後回しにすると、絶対やりません(笑)。冷蔵庫でしなびてしまう前に一気に処理し、保存容器に入れて冷凍庫へ。

以前は冷凍ねぎが固まってしまい、使うときに苦労していました。その映像がYouTubeで流れたら、見てくれた方から「キッチンペーパーの上にねぎを置くと固まりませんよ」と教えてもらいました。小ねぎの上にキッチンペーパーをのせ、フタをし、ひっくり返して冷凍保存します。

料理に青みがあるとおいしそうに見えるので、色々なものに小ねぎをのせています。

しょうがも小ねぎと同様、買ってきたらすぐに全部すりおろします。一気にやってしまえば、それほど面倒ではないものです。そして、保存袋に平らになるように入れ、冷凍庫へ。必要な分だけパキッと折って使えるので、便利です。

しょうがはチューブもありますが、やっぱり自分ですりおろしたほうが、断然香りがいい。何でも簡単にしたい私ですが、ここは少し手間をかけます。

でも、すりおろすところだけがんばったら、あとはラク。冷奴、厚揚げを焼いたもの、アジのお刺身に冷凍のまま添えると、すぐに自然解凍されます。一度にたくさん使うものではありませんから、しばらくもちます。

 

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