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日本の飼い犬の54%がシニア...人間より加速する「ペットの高齢化」の実情

羽鳥友里恵(愛玩動物飼養管理士/ペット防災危機管理士)

2023年08月21日 公開 2023年10月19日 更新

 

ペットの高齢化がもたらす新しいビジネスチャンス

人間とペットの高齢化に伴い、お互いが家族として一緒に生きやすくするサービスへのニーズは高まっています。具体的には以下のような、保険や施設、グッズ販売などが始まっています。

・ペット保険
ペットには健康保険制度がないため、医療費は全額自己負担しなければなりません。骨折による手術代は平均20〜30万円程度、他の手術でも一般的には10万円が相場と言われています。重くなりがちな医療費負担を抑えるために、ペット保険の必要性が徐々に浸透してくるでしょう。

・ペット介護ケア施設
介護が必要になった犬猫を飼い主のかわりにお世話してくれる、いわゆる老人ホームの犬猫版も、家族として大切にしたい愛犬愛猫と生きる選択の1つになっています。

特に飼い主自身も高齢者となり、介護ケアが自身でできなくなってしまった家庭で、ペットの介護施設を利用する人が増えています。昨今動物愛護の観点から、70歳以上はペットを家族に迎えられない、迎えるべきではない、といった意見もあり、一部こういったセンターに愛犬を預けることは「飼い主として無責任」という発言も目にすることがあります。

しかし、人間も動物も誰かの手を借りるということは、無責任ではなく、それもまた飼い主としての責任の取り方と言えるでしょう。

・ペット介護ケアグッズ
ケアグッズこそ、新たな"ペット市場開拓"といっても過言ではありません。寝たきりを防止するための介護用クッションや、歩行補助器、ペット用車椅子、住まい環境における足腰への負担を補助するスロープやステップなど、様々なグッズが充実し始めています。

特にペット用車椅子は、人間用と異なり、犬猫のサイズに合わせて高さや、長さの調整が求められます。しかし、ペット用車椅子の設計を手掛けるノウハウが少ないことから、数年前まで、適正な高さに調整ができない=前足に負担がかかってしまう車椅子ばかりでした。

ここ数年でペットの家族意識の向上や、高齢化に伴う技術の発展が愛犬、愛猫と健康で長生きできる未来を創ることになりますね。

その他にも、ペット健康サポート食品やサプリメント、ペットの葬祭、メモリアルセンターなどのサービス関連がのきなみ顕著に経済的な数字の増加に繋がっています。

総じて、ペットも家族という意識が高まっている日本社会では、"ペットが高齢化"することで、新たな需要が生まれ、対して新しい供給が始まり、その市場にまつわる技術も発展する。つまり、経済の発展、技術の発展が、人間と動物が共存できる未来を創ると考えられます。

しかし、冒頭でも述べたように、単にペットが高齢化しているだけではありません。ペットが長生きをすれば、面倒をみる人間もまた、高齢化していきます。人間の福祉、動物の福祉という2つの観点はお互いに影響をし合っていることも加味して考えていくことが必要です。

 

ペットの存在が人間の精神面に与える影響

ペットは人々に幸せをもたらしてくれる存在であり、そしてまた飼い主の存在もペットに幸せをもたらします。いわゆるパートナーと言える関係にあるからこそ、愛犬、愛猫が病気になってしまったり、亡くなってしまうことで、飼い主は精神的な影響を受けてしまいます。

ペットロスでうつになり、仕事が続けられなくなってしまう、仕事をしていても、気になって生産性が落ちる。最悪の場合は、身体的な疾病になってしまうケースもあります。

日本企業では忌引き休暇の対象に「ペット」が含まれていないことがほとんどです。社会が何も対策しなければ、人間が抱えているうつ病などの精神疾患者急増などの福祉問題を悪化させます。

それは企業の成長や経済の成長の鈍化へとつながる可能性が高いのです。社会はその事実と向き合い、様々な視点で考えて行く必要があるでしょう。

そういった人間の福祉と動物の福祉に向き合い、取り組みをスタートしている事例もご紹介します。

 

【取り組み事例1】
職員向け福利厚生プランにペット飼育補助サポートを導入

2023年4月、東京都港区では区役所で働く職員向け厚生会に、会員本人が飼育するペットに要した費用を補助するプランを追加しました。(年間23,000円上限)補助の対象となる費用は、ペットの医療費やワクチン費用、ペットホテル代、保険料などです。また、小屋やトイレ、首輪などのペット用品の購入費も対象とされています。

 

【取り組み事例2】
日本初! 企業の役職にペット最高動物責任者を新設

私が携わっている株式会社SARABiO温泉微生物研究所では、CAO(Chief Animal-Walfare Officer=最高動物福祉責任者)という役職を新設し、私が日本で初めて就任しました。

CAOとは、ペットも家族の一員であると企業が認め、ペットとペットを飼う従業員も、そうでない従業員も働きやすい環境を整える役割を担う責任者です。

日本の社会では、15歳未満の子供の人数よりも、犬猫の飼育頭数の方が多いですが、まだまだペットが"家族"で居られる社会環境は多くありません。もちろん、飼っていない人のことも配慮することも必要不可欠です。

今回取り上げたペットの高齢化について、日本社会が真剣に向き合い、社会環境を適応させていくことで、少しずつ、人間(飼い主も飼い主でない人も)とペットのウェルビーイングが実現され、日本の経済や抱えている社会問題の解決の糸口となり得ると考えています。

 

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