まだまだ若いと思っているうちに、いつの間にか55歳...。定年が迫る年齢になり、シニアからの転職について悩む人は多いでしょう。役職定年をしてから新聞配達員や、ビル警備員として活躍する人や、退職後も会社員時代のプライドを大切にする人など...会社人生が終わった後の多様な生き方を、大塚寿氏が紹介します。
※本稿は大塚寿著『今からでも間に合う!会社人生「55歳の壁」突破策』(かや書房)を一部抜粋・編集したものです。
「プライドなんてどうでもいい人たち」の共通点
これは、ある出版社のオーナー経営者に聞いた話ですが、80代の現役脚本家が「2時間ドラマの脚本を書いてみましたが、使えそうでしょうか?」と孫世代であろうテレビ局のプロデューサーに売り込みに行くのだそうです。
しかも、その脚本家は有名な脚本賞受賞者ですから、業界ではそれなりに名前の通っている人物なのです。
プロデューサーから「半分くらい書き直してもらえれば、何とかなるんじゃないですか」とフィードバックされ、素直に喜んでいるくらいですから、腰が低いのかプライドがないのかと知人は不思議がっていました。「そもそも80歳を過ぎて、テレビ局に自ら、売り込みに行くか......」とも。
また、会社員系でも超一流大学の看板学部出身で、これまた超一流企業の部長として活躍していたにもかかわらず、役職定年、定年、再雇用終了後にビルの警備員や再雇用契約を途中で打ち切って、時給1200円でメーカーの入力作業に従事している人もいます。
さらには、健康のために新聞配達をしている人までいるのです。「職業に貴賤なし」とは言いますが、かつての同級生や同期からは「プライドないの?」と言われているそうです。
ガードマンの方は大のギャンブル好きで、年金で生活しつつ、昼間は競馬、競輪、パチンコなどのすべてのギャンブルをやりたいので、夜のビル警備員の仕事がちょうどいいようです。
こうした「プライドなんてどうでもいい人」たちに共通するのは、「合目的的」というか、目的の達成が第一義のために、プライドのことなんて大したことに思えないのではないでしょうか。
中には大したことに思えないなんてことはなく、多少は気にするけれど、目的達成のためならやむを得ない人もいるかもしれませんが。
孤独を楽しめれば「プライドが大切」でも構わない
一方、定年退職後、無職になったのち、「元〇〇商事××部長」といった名刺をつくったり、個人の名刺の裏に「〇〇大学法学部卒」と刷ったりする人がいますが、これらは「プライドが大切」な人ではないでしょうか。
確かに、他人から見れば「痛い!」行為に映り、ネットや書籍で突っ込まれる定番ではありますが、周りに冷笑されようが、陰口を叩かれようが、それで本人のプライドが守られて、健全な精神でいられるなら、お安いツールだと考えることもできます。誰にも迷惑をかけてもいませんし。
まあ、プライドを大切にすることをどう行動に表すかは人それぞれですが、「天狗にならない」かぎり、あるいは露骨にマウントをとらないかぎりは、他人がどう思おうが、目的があるなら、これも「自分勝手」でいいのではないでしょうか。
プライドが邪魔をして、周りの人が近寄ってこなくなっても、その孤独を楽しめれば、それはそれで周りに迎合しなくてもいいではないですか。孤独が苦痛なら、またその時に、そんな自分でも気にしない人と人間関係を築いていけばいいということで。
最後に、「元〇〇商事××部長」といった肩書や、裏に「〇〇大学法学部卒」と刷る名刺より、ずっとスマートな方法をひとつ紹介しておきます。
どうせ名刺にそういうことを書くなら、名刺の裏を丸々プロフィール紹介欄にしてしまって、相手に「何をやってきた人なのか」が分かるようにしてしまうのです。
ここに出身校や出身企業の役職だけでなく、代表的な仕事や、もっと言えば仕事上の失敗談などのネガティブ情報を盛り込んでおけば、相手の顰蹙を買うことなくプライドも満たせるようになるだけでなく、何よりあなたの人となりが相手に伝わるのではないでしょうか。