食べるものには気を使っているのに、何となく体がだるい...。その原因には「胃腸の疲れ」があるかもしれません。胃腸に負担をかける悪習慣について、鍼灸師の中根一さんが解説します。
※本記事は中根一著『寝てもとれない疲れをとる本』(PHP文庫)の内容を一部抜粋したものです。
私たちの体は、食べたものでつくられている
「医食同源」や「You are what you eat.(あなたは、あなたの食べたものでできている)」という言葉を聞いたことがありますか?
洋の東西を問わず、食がその人の体や健康に大きく関わるという認識は、いつの頃からかあるようです。
考えてみればそれは当たり前のことで、私たちの体の組織、活動するときのエネルギーのほとんどは、口に入れたものからつくられています。つまり、「食」を見直すことは、溜まった疲れを解消し、さらには疲れにくい体をつくるための近道というわけです。
「食べるもの」よりも「その食べ方」に目を向ける
食を通して健康を考えるとき、私たちはつい「何を食べるか(食品・食材)」に目を向けがちです。たとえば、「○○を食べると健康にいい」というテレビ番組が放送されるたびに、スーパーの食品売り場からその食材が消える、といった話がたびたびニュースになっています。
しかし、「何を食べるか」は、「今のライフスタイルの中で、どんなものが食べられるのか?」「これまで何を食べてきたのか?」といった、様々な制約を受けています。自分の思い通りにコントロールできるものではないのです。
ですから、すぐにできる疲労対策として、「今、胃腸がどんな状態か?」を出発点に、そこから、「どのように調理したものがいいのか?」「どのように食べればいいのか?」を考えていきたいと思います。
体の中に入った食べ物は、消化というプロセスを経て、筋肉や臓器などを元気に働かせるエネルギーとして利用されます。そのためには、まず消化機能がしっかり働かなくてはなりません。
ところが、様々なストレスによって心身が疲れていると、自律神経が緊張に働いてしまうので消化・吸収機能が低下してしまいます。
食べ物の消化・吸収が滞ると、その先にある数多の代謝サイクルも滞ることになり、代謝の悪い体、つまり「疲れやすい体」になってしまうのです。
よく吟味された食材を使い、栄養も滋養もたっぷりの健康的な食事をしているのに、なぜだか不健康そうな人を見かけませんか? たとえば、オーガニック食材を食べているのに肌あれしている人、栄養バランスに気を配っているのに血色が悪く風邪を引きやすい、というような人たちです。
じつはそんな不調の背後には、食材には気を遣っているけれど、自分自身の胃腸の状態にまでは気が回っていなかったという実情があるのです。