なぜ「ながら食い」が、明日の疲れの原因になるのか
次に、「ながら食い」について考えてみましょう。
消化器系の働きをコントロールしているのは副交感神経ですが、これはリラックスしているときでないと、うまく働きません。
一方、視覚を使って情報を集めたり、頭を使って理解しようとしたりするときに働くのは交感神経。この2つの自律神経は、シーソーのように、一方の働きが高まればもう一方は低くなる、というバランスを保っています。
ですから、食べながら頭を働かせると、交感神経の働きが高まってしまうので、消化器系の働きが弱まってしまいます。
理想的なのは、食事中は食べることに集中、そしてできれば「食休め(食後30分ほどの休憩)」をとることです。本や漫画、テレビやスマホといった視覚情報はシャットアウトして、副交感神経を働かせてあげましょう。これによって、胃腸がうまく消化・吸収できるようにするのです。
「ただ食べているとハイペースでどんどん食べてしまうので、本を読みながらゆっくり食べるようにしている」などという人もいらっしゃるようですが、残念ながらよい習慣とはいえませんね。
胃腸にとってはやさしくない習慣です。胃腸の疲れは、全身の疲れにつながると心得て、いつでも胃腸に気持ちよく働いてもらえるような食べ方を心がけたいものです。
「味わって、楽しく食べる」がやっぱり一番
「早食い」「ながら食い」をやめることができたら、あとは「気持ちよく食べる」だけ。食事を楽しむこと、ひと口ひと口味わって「おいしいな」「うれしいな」と感じることが大切です。仕事のことや人間関係に頭を抱えながら食事をすると、
何を食べたか思い出せないくらいに味気ないものになります。
誰と食べるか、どこで食べるかなども含めて、食べる時間をゆっくり楽しむことが、食事の「フィールグッド」です。目の前の食事をゆっくり楽しく味わってくださいね。
ですから、その日の胃腸の状態に合わせて1食を抜いてみたり、軽めの3食にしたりと、食事を自分のペースに合わせてみるのがオススメ。
遅めの朝食(ブランチ)と早めの夕食で1日2食にして、食事と食事の間をしっかりと確保するのもいいですね。翌朝はいつもより体が軽やかで、自然と空腹を感じるはず。それが、胃腸が十分休まり、リセットされたサインです。
私は無類の甘党だということを患者さんがご存じなので、差し入れでよくケーキをいただきます。
生もので日持ちしないし、棄ててしまうのも申し訳ない......と、自分に甘い言い訳をして、1日に3個くらいは平気でケーキを食べてしまいます。でも、その後の食事をコントロールすることで、胃腸の負担を軽くしているのです。
たとえば、夜は、シイタケやみつばをたっぷり入れた卵雑炊を茶碗に1膳だけにしてみたり、鶏のささ身をトッピングしたサラダだけにしています。これによって栄養のバランスを考えながら、胃腸にかかる負担を軽くすることにしているのです。
【中根一(なかね・はじめ)】
Google Japan前名誉会長・村上憲郎氏、「孫正義氏の右腕」と名高い元SoftBank Group株式会社CEOプロジェクト室長(現・SBエナジー株式会社代表取締役社長)・三輪茂基氏、元世界銀行本部人事カウンセラー・中野裕弓氏、政治家や有名俳優、日本を代表するジャズミュージシャンなど、数多くのトップエグゼクティブやトップクリエイターの「お抱え鍼灸師」。京都・四条烏丸「鍼灸Meridian烏丸」院長。鍼灸学術団体の中で、格式・規模ともに最大級である「経絡治療学会」の歴代最年少理事に就任した、日本の東洋医学の第一人者。自身も最前線で診療に当たる傍ら、鍼灸学校などにおいて後進の育成にも積極的。「生き方を変える力を持つ」東洋医学の可能性についての講演は、全国から厚い支持を得ている。http://hajime-nakane.com/